ブレイブ!

桃楓

3

ユリアは階段を飛ぶように駆け上がった。
とりあえず、3階ということは間違えないので3階を目指した。
3階はどうやら特殊科目の教室らしい。実験室や、防魔室とルームプレートに書いてあった。
「どこに飛んで行ったのかなぁ?」独り言のようにつぶやいた。
 とりあえず、人の気配のある教室!と思いつき、探すことにした。
1番手前にある、防魔室にはいると、そこにはユリアと同じ年位の男が窓の外を眺めていた。身長は、テル位だなぁと考えながら、男に近づいた。ヘッドフォンをしているからか、ユリアが近づいても,全く気づいてない。
ふと、男の手を見ると、編入試験と書かれた紙を握っていた。
やった!なんとかなった!
「あのっ,その紙!…」
 …寝てる?すぐ真横に立って、顔を覗いてみた。全く気づかない。男の黒い髪が窓から吹く風でなびいている。生誕な顔立ち。
どうしよう…。ヘッドフォンはずそっかな?
そっと手を伸ばした瞬間、男の目が開き、ユリアの手を握った。その強さに、ユリアは思わず声をはりあげた。
 「ご、ごめんなさい!お昼寝の邪魔しちゃって!っ驚きましたよねっ」強く握られた手がほどかれた。ユリアの手は赤く手形が付いている。
  男の目は真っ赤だった。赤みがかかったというより、真紅。…この色は、悪魔族特有の色だ。目が赤ければ、赤い程悪魔の血が強い…ハズ。そして、悪魔族は昔その美貌で人間を惑わせた。だから、顔立ちが整っている。確か。
 赤い目は少し寂しげで、どこか悲しそうだった。何で、そんな辛そうなのかな?そんな事を考えながら、男の顔をじっとみた。すると、男は怪訝そうに顔を背けた。
(やばい!ガン見してしまった)
「すみません!綺麗な目だったから、ついみとれちゃって!あ、違うんです、その、何言ってんだろ…。あのっ、私、編入試験うけにきて、それで」ユリアは、あたふたしながら頭をかいた。
 男は、ふっと笑った。
笑った顔がすごく優しかった。
「あぁ、これ?さっき窓から入って来た。」
男は、編入試験の紙を渡した。
「ありがとうございます!これで、テルに怒られない。あ、テルってお兄ちゃんです。双子の!」
 優しい目…優しい声…。そう思うとドキドキと、鼓動が早くなった。男の顔を見ると、照れてしまう。
(やばい…顔熱い。)ユリアは、視線を足元に落とし、手でパタパタと顔をあおいだ。
「…この目が怖いか?」
視線を落としたユリアに問いかけた。
「全然!始めて見た時から、優しそうな人って…。てか、本当何言ってんだろ。でも、…」ユリアは男の目をしっかり見ていった。
「全然怖くない。優しい目だよ」
男は驚いた顔を見せた。
「っあ〜ヤバイ!テル探さないと、編入試験に間に合わないっ!今何時ですかっ?」
「9時45分。」
試験は10時からである。試験会場も分からないし、テルもいない。遅刻何かしたら大変だ。
「ありがとうございました!じゃあ、私もう行きます‼︎」
「ちょっと待て。あんた、会場分かるのか?」男が聞いた。
新しい学校だし、テルもいない。地図を見てもさっぱりだ。
男はため息を付いたが、なぜか嬉しそうだ。
「案内してやるよ。どうせ今日は今から何もはないし。」
「本当にっ?ありがとう。あ、私ユリア。ユリア・フォレスト。あなたは?」
「俺はレイ・ミシナ。あんたの兄貴は1人でも大丈夫だろ。最悪、俺が試験官に説明する。急ぐぞ。」
「ありがとうございます!」ユリアとレイは試験会場である、実践室を目指して走り出した。

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