ゲームの世界で天下統一を目指す俺

ハタケシロ

第四十一戦

同時刻、舞剣城。

『行かせるなー!』

『ここで食い止めろっ!』

舞剣城に舞剣兵の切羽詰った声が響きわたる。
不意の強襲に場内は混乱していた。

「何事です!」

場内の混乱と雰囲気の違いに気付いた舞剣大心が療養中の体を無理矢理起こし、近くを通りかかった兵に聞く。

「大心さん!寝ていてください!お体に触ります!」

「そんなことを言っている場合ではないでしょう!何が起きてるんですか!」

舞剣大心の体を心配した兵だが、舞剣大心の一喝に萎縮する。体が万全にないにしろ、舞剣大心は『総大将』としての威厳は健在だ。

「あっはい。場内に敵が侵入いたしまして、今は忠勝さんと義弘さんが対処に当たっておられています!」

「敵ですか……。先の戦での傷が癒えてないという時に……。しかし、近隣諸国が襲うには……旗印は?」

「旗印は「天下道」との報告が!」

「天下道ですか!?しかし、天下道は今は中国四国地方を攻めているはず……妙ですね」

青森に本拠地を構えている舞剣に対して、天下道は真反対の福岡に本拠地を構えている。地名から見ても分かる通りお互いの領地の距離の差はだいぶある。それに、天下道が攻めて来るには途中途中の各大名が治めている国を攻略しなければなら無い。しかし、今、どの国も健在している。

舞剣大心はこれらのことを考え冷静に分析し整理した。

(各大名が治めている国を攻略せずに私達に攻めてくる方法。……夜韻に紛れて少数精鋭を送りましたかね……。しかし、天下道の幹部クラスは西でバラけてるとはいえ西からは出ていない。……やはり妙ですね)

「『総大将』!」

舞剣大心が兵の言葉を聞き、深く考え、集中しているところに、その集中を途切らせる声が舞剣大心の耳に入った。

「義弘状況はどうですか?」

声をかけた主、それは舞剣幹部島津義弘だった。
普通の1一般兵士ならば考え事をしている自軍のトップに声をかけるのを躊躇いや、声をかけすらできない状況で島津義弘は躊躇う事無く声をかける。さすが幹部と言ったところだ。……ただたんに舞剣大心が考え事をしていないと思っただけかもしれないが。

「状況はこちらの圧倒的有利です。妙なんですよね雑魚しかいません。幹部クラスが誰一人としていない……」

「狙いはここじゃない……?義弘、引き続き頼みます。それと気は緩めないでください」

「もちろんです!」

「あと「美蝶姫」のところには何人たりとも入らせてはなりませんよ!」

「承知!」



舞剣城から少し離れた小川を進む影二つ。
その影たちは言い争い……もとい一人がもう一人に物申していた。

「信長様!困ります勝手な行動をなされては!」

「といいつつ、お前だって付いてきてるじゃないか?光秀」

「それは、私が信長様の側近がゆえ、もしものことがあったらと思い……!」

「はいはい分かってるよ」

「全く、貴方という人は。この勝手な独断専行……千代様にバレたら大変ですよ?」

「独断専行は独断専行だけど、今回は戦をしに来たわけじゃない。人を尋ねる為に来た。少し喧騒が遠くから聞こえるが気のせいだろ」

「はぁ……。ほぼ100%バレますね」

明智光秀の溜息はほんとうに困ったということを表していた。明智光秀はただ付いてきただけなので今回の目的を知らない。方法も。
少し喧騒が聞こえるということは戦をしているのだとは悟った。

「戦をしたらバラすようなものじゃないですか!」

コメカミを抑えたいた手を離し、ついに耐えきれなくなった明智光秀は信長に言葉を発した。

しかし、信長は冷静にむしろ軽快に言葉を返す。

「それはどうかな?今回はほんとに少ない兵しか連れてきてないからね。戦も過去に類を見ないくらい小規模だよ。一応、`城攻め、なのにさ。ははっ」

「笑い事じゃないですよ!」

「そんなに心配するなって光秀。俺がすんなりとバレるようなことする筈がないだろ?」

「まぁ……そうですね」

「なにその疑ってる目!俺は悲しいよ!家臣にここまで信頼されてないなんて!」

「信頼してます!してますから!」

嘘泣きしている信長をあやす明智光秀。信長は見た目怖いところもあるが中身は子供みたいだと今のを気に再認識する。

「まっほんとに心配はしないでよ。ちゃんと福岡の本拠地にも影武者を用意しといたからさ」

「さようですか……で、今回はほんとうに人を尋ねるためだけに?」

「そう。でもね、相手……舞剣のトップさんとうちのトップには気づかれたく無いんだよね」

「なるほど。だから千代様が戦に趣きだった頃を見計らいまた、小規模な戦闘をお越して注意をそちらに向けたと」

「そういうこと。さすが頭が回るね」

「でもなんで千代様には気づかれたくないのですか?」

「……いろいろとね」

明智光秀はこれ以上は聞かない。どんな考えがあるのかは分からないがきっと信長が考えていることは良いことなのだと信じているから。それ故に深入りはしない。

「おっと見えてきたよ」

信長が指を指す方向に明智光秀が顔を向けると、一つの民家があった。どこにでもある普通の民家が。

「民家なんかに用があるのですか?」

「用があるのはなかにいる人だけどね」

「それは分かりますが……一般人にご用が?」

「まぁ一般人と言えば一般人かな。矢面には立ってないし」

明智光秀は興味を持っていた。信長に興味を持たせる人物がこんな普通の民家に住んでいる人物なんて。

「じゃ入ろうか」

「は、はい」

信長はいたって普通に、明智光秀は若干緊張しながら民家の戸を開く。

「おや?お客なんて珍しいね」

中にいた人物は信長達には目を向けずに背中を向け作業を続けながら話す。
明智光秀がその態度と信長に無礼な行為に一言言おうとした時、信長は片手を上げてそれを制す。

「初めまして俺は信長。隣にいるのが光秀だ」

「へー。天下道の所の幹部とその右腕が僕になんのようだい?」

信長は笑を含みながら、自信満々にいう。

「俺と世界を作らないか?元就」


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