ゲームの世界で天下統一を目指す俺
第二十八戦
伊達秋田領防衛成功、岩手失敗から数日が経った。
未だに伊達政宗の意識は回復してない。軍医によれば傷は塞がりつつあるようだけど、当分戦には参戦しては行けないそうだ。
この数日のうちに、秋田も舞剣に取られた。まっ当然といえば当然だろう。伊達の『総大将』である伊達政宗は意識が回復してなければ回復したところで参戦もできない。せめて意識さえあれば指揮を執ることは出来ただろうけど。それにもともと秋田は伊達領だから前田である俺達が代わりに防衛することは出来ない。前みたいに救援という形や同盟を組んでいれば出来るんだけど。
当然舞剣は本拠地であるここ、宮城にも攻めてくるだろう。秋田では戦意喪失していた伊達に幹部を一人も送り込まないで圧勝している。だから戦力は十分に残ってある。いつ攻め込まれてもおかしくはない状況だ。
逆に俺達は、いや「前田」は動けない。伊達政宗本人に援護を頼まれない限り。それに頼まれた所で、前田の戦力はたいしてあてにできないだろう。慶次さんが重症を負ったという情報はすでに各地に広まっており、前田領の周辺諸国では前田に攻め込もうとする動きがあるらしい。本拠地には兼続さんが、その他より警戒しなくてはならないところにはそれぞれ幹部が目を光らせている。今はそれと、まだ若干残っている俺の´千人切り、の異名でどうにか均衡を保っているらしいけどいつ崩れるかは分からない。武田が一番に攻めてきてもおかしくはない。そんな状態ではこっちに戦力を前田は回せない。
今伊達にいる前田の兵士は二千人弱。それに俺とサクラ、そして片腕を失っている慶次さん。
たとえ慶次さんなら片腕を失っていようと、俺なんかより強いだろうけど、舞剣の幹部達と戦うとなると危険だろう。
せめて誰か幹部が一人加わってくれれば……。
「何難しい顔してんのよ」
「サクラ……」
「あんたが考えてもしょうがないでしょ。これはあくまで、伊達の問題。私達には関係のない事なのよ?」
「関係なくはないだろ」
「ええ。確かに。伊達がここを取られれば、伊達家は滅亡。そして舞剣が私達に隣接することになる。そうなると長い間保たれていた北の安泰が崩れるわね。」
「いやっそうじゃないだろっ!!」
サクラの言っていることは本論だ。なにも間違っちゃいない。でもさ……でもっ!なんかそれは違うだろ?
「分かってるわよ……私だって。」
そう言うサクラの声は少し涙ぐんでいた。
「じゃあどうするの!?『総大将』は深手を負っていて、百パーセントでは戦えない!かと言って私達だけではどうにも出来ないじゃないっ!それに前田のこともある!……私達は……何も出来ないのよ……」
ああ。サクラも分かってるんだ。俺達じゃ何も出来ないって。
「……だな……」
そしてそれは俺も分かってる。
☆ 
舞剣城
「そろそろ伊達に止めを刺しましょうか」
「いよいよ出陣するのですか?」
「ええ。「美蝶姫」である貴女。それに全幹部を連れていきます」
「全幹部ですか!?」
「はい。弱ってるとはいえ、伊達は名家。用心に越したことはありません。それにあわよくば前田慶次もと考えていますから」
「前田……」
「何か前田にあるんですか?」
「い、いえ。それで出陣はいつ頃に?」
「そうですね。準備が整い次第すぐと言ったところですかね。夜襲でも何でも構いません。でなければ九州を制覇しつつある所に遅れをとりますからね」
「はい。分かりました」
大心様を見送ったあと、私はしばらくその場を離れないでいた。思い返すのは秋田で戦った前田兵の一人。
「……迅」
口から溢れるのはこっちの世界でもあまり変わっていなかった私の大切な人の名前。今は敵だけど、いつかは一緒に戦いたい。そしてこの世界を統一したい。
私は密かな夢を胸に戦の準備をすすめた。
「でも迅はつよいからなぁ〜」
この言葉をいった瞬間、今はもういや切られてからはやいうちに完治した、切り落とされた足が疼く感じがした。
☆
俺は慶次さんに呼ばれ、慶次さんがいる部屋に向かった。俺も慶次さんと話したいと思っていたところだったのでちょうどよかった。中では慶次さんが体を窓際に向け、顔は空を眺めていた。
「なあ迅」
「どうかしたんですか?慶次さん」
「さっき数分だけ政宗の意識が戻ったよ」
「本当ですか!?」
「あぁ」
伊達政宗の意識がちょっとでもあれ戻ったっていうのは吉報だ。それなのに慶次さんの目は虚ろだ。
「俺はどうしたらいい?」
「え?何をですか?」
「政宗が言ったんだよ……」
そう言うと慶次さんは一瞬言葉を途切れさせ、そして口を開いた。
「妾を殺せってな……」
未だに伊達政宗の意識は回復してない。軍医によれば傷は塞がりつつあるようだけど、当分戦には参戦しては行けないそうだ。
この数日のうちに、秋田も舞剣に取られた。まっ当然といえば当然だろう。伊達の『総大将』である伊達政宗は意識が回復してなければ回復したところで参戦もできない。せめて意識さえあれば指揮を執ることは出来ただろうけど。それにもともと秋田は伊達領だから前田である俺達が代わりに防衛することは出来ない。前みたいに救援という形や同盟を組んでいれば出来るんだけど。
当然舞剣は本拠地であるここ、宮城にも攻めてくるだろう。秋田では戦意喪失していた伊達に幹部を一人も送り込まないで圧勝している。だから戦力は十分に残ってある。いつ攻め込まれてもおかしくはない状況だ。
逆に俺達は、いや「前田」は動けない。伊達政宗本人に援護を頼まれない限り。それに頼まれた所で、前田の戦力はたいしてあてにできないだろう。慶次さんが重症を負ったという情報はすでに各地に広まっており、前田領の周辺諸国では前田に攻め込もうとする動きがあるらしい。本拠地には兼続さんが、その他より警戒しなくてはならないところにはそれぞれ幹部が目を光らせている。今はそれと、まだ若干残っている俺の´千人切り、の異名でどうにか均衡を保っているらしいけどいつ崩れるかは分からない。武田が一番に攻めてきてもおかしくはない。そんな状態ではこっちに戦力を前田は回せない。
今伊達にいる前田の兵士は二千人弱。それに俺とサクラ、そして片腕を失っている慶次さん。
たとえ慶次さんなら片腕を失っていようと、俺なんかより強いだろうけど、舞剣の幹部達と戦うとなると危険だろう。
せめて誰か幹部が一人加わってくれれば……。
「何難しい顔してんのよ」
「サクラ……」
「あんたが考えてもしょうがないでしょ。これはあくまで、伊達の問題。私達には関係のない事なのよ?」
「関係なくはないだろ」
「ええ。確かに。伊達がここを取られれば、伊達家は滅亡。そして舞剣が私達に隣接することになる。そうなると長い間保たれていた北の安泰が崩れるわね。」
「いやっそうじゃないだろっ!!」
サクラの言っていることは本論だ。なにも間違っちゃいない。でもさ……でもっ!なんかそれは違うだろ?
「分かってるわよ……私だって。」
そう言うサクラの声は少し涙ぐんでいた。
「じゃあどうするの!?『総大将』は深手を負っていて、百パーセントでは戦えない!かと言って私達だけではどうにも出来ないじゃないっ!それに前田のこともある!……私達は……何も出来ないのよ……」
ああ。サクラも分かってるんだ。俺達じゃ何も出来ないって。
「……だな……」
そしてそれは俺も分かってる。
☆ 
舞剣城
「そろそろ伊達に止めを刺しましょうか」
「いよいよ出陣するのですか?」
「ええ。「美蝶姫」である貴女。それに全幹部を連れていきます」
「全幹部ですか!?」
「はい。弱ってるとはいえ、伊達は名家。用心に越したことはありません。それにあわよくば前田慶次もと考えていますから」
「前田……」
「何か前田にあるんですか?」
「い、いえ。それで出陣はいつ頃に?」
「そうですね。準備が整い次第すぐと言ったところですかね。夜襲でも何でも構いません。でなければ九州を制覇しつつある所に遅れをとりますからね」
「はい。分かりました」
大心様を見送ったあと、私はしばらくその場を離れないでいた。思い返すのは秋田で戦った前田兵の一人。
「……迅」
口から溢れるのはこっちの世界でもあまり変わっていなかった私の大切な人の名前。今は敵だけど、いつかは一緒に戦いたい。そしてこの世界を統一したい。
私は密かな夢を胸に戦の準備をすすめた。
「でも迅はつよいからなぁ〜」
この言葉をいった瞬間、今はもういや切られてからはやいうちに完治した、切り落とされた足が疼く感じがした。
☆
俺は慶次さんに呼ばれ、慶次さんがいる部屋に向かった。俺も慶次さんと話したいと思っていたところだったのでちょうどよかった。中では慶次さんが体を窓際に向け、顔は空を眺めていた。
「なあ迅」
「どうかしたんですか?慶次さん」
「さっき数分だけ政宗の意識が戻ったよ」
「本当ですか!?」
「あぁ」
伊達政宗の意識がちょっとでもあれ戻ったっていうのは吉報だ。それなのに慶次さんの目は虚ろだ。
「俺はどうしたらいい?」
「え?何をですか?」
「政宗が言ったんだよ……」
そう言うと慶次さんは一瞬言葉を途切れさせ、そして口を開いた。
「妾を殺せってな……」
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