ゲームの世界で天下統一を目指す俺

ハタケシロ

第二十六戦

時は少し遡る。

岩手

舞剣対伊達、前田

伊達本陣

矛と槍が何度もぶつかり、弾きあう音があたりに響く。
前田慶次と『戦国最強』である本田忠勝は初手から一回も手を抜くことはなく、本気でぶつかっていた。

どちらも特殊攻撃、または特殊攻撃を纏った攻撃をあれ以来してはいなかった。
それは両者自身の本来の力だけで戦うということ。
まさに正々堂々とした戦いだ。

伊達政宗はそんな両者の戦いを見て、身震いしていた。
無論、怖いからではない。
自分もあんな風に戦ってみたいと思ったのだ。
つくづく自分も戦人なんだなと思わされてもいた。

それにしても
と伊達政宗は思っていた。
どうして前田慶次がいるだけでこんなにも安心できるのかと。

前田慶次が援護に来るまでは不安と焦りがあった。
伊達の長としての義務感もあって正直怖かった。
だが前田慶次が来てからはそんなことは思わなかった。

それがなぜなのかは伊達政宗本人にも分からない。
だが今はそれでいい。
思い出すのは初めて前田慶次という男にあった日。
あの時も敵なのに何故か前田慶次は安心できる人だと
伊達政宗は思った。

伊達政宗は目を閉じ、昔を懐かしんだ後
再び目を開ける。

今は片方しかない目。
その一つの瞳で伊達政宗は前田慶次を見つめていた。
絶対に勝つと信じて。

「慶次・・・」



もう何度目か分からないつばりあいを経て
前田慶次は本田忠勝に質問していた。

「こんなにも力を持ってるって言うのに、何でおめぇは家臣で甘んじてるんだあ?」

少し疲労が見え始めていた本田忠勝が答える。

「簡単なことだ。今の主が俺よりも強いからな」

「戦ったことあんのか?」

「ない。だが分かる。あの人は俺より強い」

「『戦国最強』にここまで言わせるとは、相当なもんだな舞剣の大将さんも」

間合いをとり、お互いに呼吸を整える。

だがこの時点で、疲労の差は歴然としていた。
どちらも息はまだ荒くない。
だが精神的に本田忠勝が疲労していた。
その影響か顔に余裕がない。

本田忠勝は喜びと同時に焦っていた。
自分と対等に戦える相手を見つけた喜びと
いくら戦っても勝機の見えない焦り。

それを見てか前田慶次が叫ぶ。

「そろそろ決着をつけようか。『戦国最強』!」

「やれるのなら・・な」

お互いが一気に間合いを詰める。
互いに次の攻撃が本日の最大攻撃だと分かる。

そしてぶつかるお互いの攻撃。

決着は着いた。



伊達政宗は喜びと歓喜に満ち溢れていた。

視線の見つめる先には前田慶次。
そしてその横に横たわる本田忠勝。
そう。前田慶次が勝利したのだ。

「慶次~!!」

すかさず伊達政宗は前田慶次のもとへと向かう。
そして背中に思いっきりダイブした。

「うおっと。嬢ちゃん危ないから隅に居ろって言ったろ?」

前田慶次はダイブし抱き付いて来た伊達政宗に約束したことを言う。
だがその顔は微笑んでいて怒ってなどいなかった。

それを見てか伊達政宗も顔が綻ぶ。

「良いじゃろ!良いじゃろ!良くやったぞ!慶次~!!」

「分かったから降りな嬢ちゃん。まだ戦は終わってねぇ」

慶次の言葉を聞き、まだ戦中だったことを
思い出した伊達政宗は素早く慶次の背中から降りる。

「そ、そうじゃの!まだ戦は終わってはおらん。ま、まずは体制を立て直すかの」

伊達政宗の言葉を聞き、少し苦笑いした前田慶次はすかさず指示を出す。

「嬢ちゃん。『戦国最強』は捕縛しときなよ。俺は前線に出て拠点を何個か奪還してくる。」

「了解じゃ!任せろ慶次!」

「おう。頼んだぜ」

前田慶次が自分から離れ歩き出したと同時に
伊達政宗は兵に命じて本田忠勝を捕縛せよと命令した。

だがその瞬間。
伊達政宗の身体が宙に浮いた。
伊達政宗自身、自分がなぜ宙に浮いたのか分からないでいた。
そして身体は重力に従って落下し始める。

どさっと言う鈍い音に気づき、
前田慶次は伊達政宗のいる方を向いた。
そこには血をあたりに撒き散らしながら
横たわる伊達政宗の姿があった。

「政宗!」

すかさず伊達政宗の元に向かい
小さな体を抱き寄せる。

見たところ傷は浅かったが出血がひどい。
早く手当をしなければ間に合わない状態だ。

そんな中、嫌に落ち着いた声が前田慶次の耳に届いた。

「まだ息はあるようですね。止めを刺しますか。」

前田慶次は一瞬で悟る。
この声の主が伊達政宗をやった者だと。

「お前か?政宗を攻撃したのは」

その声は聞き耳を立てなければ聞こえないほどの
声量だった。
だが相手にはしっかりと聞こえたようだった。

「おやっ。まさかこんなところにこんな大物がいたとは。お初にお目にかかります前田慶次。私は舞剣軍
『総大将』の大心と申します。」

「そんなのはどうでもいい・・質問に答えろ」

大心は倒れている本田忠勝を見てすべてを理解したうえで答えた。

「はい」




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