ゲームの世界で天下統一を目指す俺

ハタケシロ

第二十五戦

今、俺の目の前にいるのは現実の世界で何度も見た顔、
咲だった。

見た目はかなり変わっていた。
髪には簪やら何やらがついていて、俊敏性な着物を着ていて
意外とよく似あっていた。

そして手には弓と短刀。
咲は短刀を懐にしまい、弓も構えず口を開いた。

「久しぶりだね」

俺も刀を鞘に納め、咲に向き直り答える。

「おう・・・久しぶり」

驚きかなのかうまく口が回らない。

と。ここで敵兵が咲に警告を発していた。

「姫様危険です!この者は`千人切り,です!姫様はお下がりになって下さい!ここは我々が!」

まあ確かに、敵から見たら俺は危険なんだろう。
しかも俺と咲が親しげに話してるんだ。
内心穏やかではないと想像つく。

俺は、俺に向けられているであろう戦意を複数察知し、
この場を離脱しようと考えた。

ここの拠点が陥落寸前だったということもあり、
俺の味方、伊達軍は兵が少ない。
それに比べ、敵はどんどん増えている。
それに実力は分からないが、今は敵の幹部である
「美蝶姫」こと咲がこの場にはいる。
さすがにと言えば俺が強そうに聞こえるが
今は分が悪い。
ここの拠点の離脱ではなく、俺はこの場を離れたかった。
少し敵との距離を測りたい。

実行しようと足に力を入れたところで、
咲が味方兵に言う。

「今のはどういう意味?私が負けるってこと?」

その表情はいささか怒っていた。
敵兵も委縮している。

「いえそんなことは・・・」

「だったらそれこそここは、いえ、迅は私に任して!貴方たちは残りの伊達兵を!」

『はっ!』

咲の命令を聞き、複数の敵兵が散らばった。
そして俺に振り向く咲。

「怖さが増したな」

俺は嘲笑気味に咲に言った。
別に他意はない。

「うるさいはね。じゃ邪魔な兵たちは居なくなったし」

「戦るのか?」

「そんなわけないでしょ。」

そういうと咲は俺に近づき、
俺の胸に顔を埋めるような形で抱き付いてきた。

「・・・ずっと心配してた・・・」

俺に抱き付いてるせいか少しくぐもった声が耳に届く。

「俺もだ。」

さっきまで聞こえていた、喧噪な声が何故か今は聞こえなかった。
今、俺たちの周りに兵はいない。
味方兵はもちろんだが、敵は咲の命令をしっかりと従順していた。
そのせいか、咲の決して大きくない声がよく聞こえる。

「私ね・・・怖かったんだよ?気が付いたらわけの分からない場所にいて・・・。ゲームの世界だとか言われて」

俺は無言で咲の言葉を聞き続ける。

「でもね・・・`千人切り,の噂が流れて、ちょっとしてから迅だって分かってうれしかった。迅の居場所が分かって。それまでは迅に会えるかどうか不安だったから」

「そうか・・・」

「私、迅とは戦いたくない!だから私と一緒の・・・舞剣に入って!」

俺は予想とは違うことをいわれて困惑した。
舞剣に入れ・・か。

この言葉に対する回答を俺はしっかりと持っている。
俺は両手を使い、咲の身体を話言う。

「俺は入らない。」

「どうして?」

「じゃ逆に聞くが、咲は前田に入るか?」

「それは・・・」

「入れないだろ?俺もお前もどういう形であれ両家にそれぞれ拾われた身だ。そしてお前も俺と同じように恩義を持ってるはずだ。だからお前は自分が前田に入るとは言わず、俺を誘ったんだろ?」

そして俺は鞘に納めてあった刀を抜き、咲に剣先を向ける。
それは明確な訣別の証明。

「さっ戦ろうぜ?どうせここはゲームだ。俺達は死なない。だからとことんやれる。現実じゃお前に勝ったことないけど、ここだったらお前に勝てる。」

咲は俯いている。
がゆっくりと言葉を紡ぎだす。

「ゲームだったら恩義とか関係ないじゃん。」

「普通はな。でも実際今俺たちがいるのはこっちの世界だ。だから俺もお前も普通ならゲーム如きで感じるはずのない恩義を感じている。そして俺が恩義を感じている人、慶次さんの目標は天下統一だ。くしくもそれは現実に戻るための俺の条件と一致している。だから俺は誠心誠意を持って慶次さんに尽くし、天下を統一する。」

そして俺は深く構える。
咲も顔をゆっくりと上げ、俺を見据えた。
そして弓を構え、矢をかける。

「迅」

唐突に弓を構えた状態の咲が話しかける。

「なんだ?」

「これはお願いじゃなくて命令。投降して」

「何言ってんだお前?」

俺は咲の言ってることが分からなかった。
投降?つまり降参しろってことか?

「じき本体が岩手を制するわ。そうすれば少なからず援軍がこっちにも来る・・。迅たちに勝ち目はなくなる」

「慶次さんが負けるわけねぇだろ!」

俺はこの言葉を最後に咲と戦闘を開始した。

水平に飛び間を一気に詰めようとした。
咲に矢を放つ時間を与えないために。

だが飛んだ瞬間に咲から矢が放たれた。
それも通常の矢じゃない。
花びらを纏っていた。

先に何枚かの花びらが俺の身体を掠めていく。
次に本体、花びらを纏った矢が俺の心臓めがけて飛んできた。

俺は刀を垂直に持ち、矢を迎え撃つ。
刀は見事に矢の先から尾までを綺麗に真っ二つにした。
だが花びらは防げてない。
腕、腹と掠めていき、右頬からは血が垂れる。
真っ二つにした瞬間に俺は地面に着地し、声を漏らす。

「特殊攻撃・・・か」

独り言のように呟いた俺の言葉を
咲が拾い答えた。

「そうよ。それと早撃ちっていえばいいのかな?弓だけど。これが私の強さ。」

「なるほど、だから不意打ち気味の俺の攻撃より先に矢を飛ばせたのか。それも特殊攻撃付きで」

まじ凄いな咲。
いくらゲーム補正かかってるからって早撃ちの技術と特殊攻撃をそれに併用させるなんて
普通ならできないぞ。
しかも花びら自身に攻撃力もある。

「どうする?やっぱり投降する?」

「んなわけねーだろ特殊を使えるのはお前だけじゃねぇ」

俺は刀を左わき腹付近に構え、力をためる。
そして一気に放つ!

「木枯らし」

左に構えていた刀を一気に水平に振りぬく。
そしてどこからともなく風が発生し渦を巻きながら
咲めがけて攻撃する。

だが咲は冷静に高く飛び、
木枯らしの発生した、地面に向けて矢を放った。

放たれた矢は地面に大きな、クレーターのような跡を残していた。
そして俺の木枯らしは跡形もなく消えていた。

おいおいまじかよ。
地面に穴開けた爆風で木枯らしを打ち消しやがった。
俺の木枯らしは威力はあるがスピードが遅い。
そのため咲に威力のある矢を放つ時間をあげちまった。
だが威力のある攻撃、特殊攻撃は必ず多かれ少なかれ使用者の体力を奪う。
そのため、咲の顔は疲弊していた。

「木枯らし・・と・いうよりは・・・嵐ね・・・さすが・・・」

「そいつを打ち消すやつに言われてもな」

俺は疲れているのがばれないようにしゃべった。
俺は再度木枯らしを打とうとするが構える前に辞めた。
課題は連発できないのとスピード、それと威力調整か・・・多いな。

俺は刀を握り直し、咲に斬りかかる。
咲も疲弊しているが短刀で受けてきた。

俺は最小の動作で攻撃するのに対し咲はまるで舞うように俺の攻撃を受け流した。
だが動きは徐々に鈍くなっている。
だがそれよりも俺の体力が持たない。
最小の動作ではあるがやっぱり木枯らしの影響が残っている。
だけど俺が負けるわけにはいかない。
何より咲に勝ちたい。

意識を俺は無くした



気づくと俺は横になっていた。

「迅、気づいた?」

「サクラか、俺はどうした?」

「「美蝶姫」と相討ちになって倒れたのよ。」

相討ち?
俺は戦える体力を残してなかったのに?

そうか・・・また・・・やったのか

「「美蝶姫」は敵の『総大将』だったらしくて、敵は撤退したわ。迅のおかげよ」

「そうか・・なら良かった」

「でもね、岩手の伊達が敗戦したわ」

「・・・え?」







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