メアリとスーサン

極大級マイソン

第1話「鬼子の金」

 それはある日の出来事だった。
 あるところに、天才パツキン美少女中学生"メアリ"と、冴えないおっさん探偵"スーサンが居た。
 2人が道端を歩いていると、道の真ん中に黄金色の10円玉が落ちていた。

「やりましたよメアリ、10円玉を見つけました。この10円玉で、私が一体何をすると思いますか?」
「……いい歳した大人が、10円拾ったくらいで喜んじゃってさ。御託はいいからさっさと交番に届けなよ」
「いえいえそうはいきません。せっかく見つけたのですからこの出会いを無駄にしないよう、もっと有効活用するのが然るべきです。そんなわけでメアリ、この10円玉をどう使うのが一番面白いか一緒に考えましょう」
「やなこった。そんなもん考えるだけ時間の無駄。思考停止してそこの駄菓子屋でサイダーでも買ってきてよ」

 メアリは、クイッとちょうど近くに見えた駄菓子屋を親指で指差した。
 しかし残念、サイダーの値段は130円。10円ではとても買えない。

「でも私はチャレンジャーなのでやります。さあ行きますよメアリ!」
「ええ!? 冗談で言ったのにまさか本気でやるの!?」

 そうして2人は無謀にも駄菓子屋でサイダーを買うことになった。
 10円でッ!!

「あの〜すいませ〜ん。ちょっとお願いがあるのですが、この10円でサイダーを売って頂けないでしょうか、2本」
「ちゃっかり自分の分も要求してるし。というか幾ら何でも売ってくれるわけが……」
 メアリがそう言いかけた直後だった。途端に駄菓子屋のおばちゃんの目が突如輝きを放った。
「こ、これは……"鬼子の金"じゃあないか!? お、お前さん方、この金を一体何処で?」
「え、何処でも何もそこで拾っムグゥ!?」

 メアリが答える前に、スーサンが彼女の口を塞いだ。

「いやいや実はこれ、話が一族に代々伝わる家宝なんですがね? ひょっとして貴方ご存知なのですか?」

 そしてスーサンは、そんな嘘八百を並べのけた。
 何も知らないおばちゃんは訝しむように腕を組んだ。

「そのお宝、昔聞いたことがあるわい。"鬼子の金"は呪いの宝、持つ者には必ず死が訪れるという災厄の秘宝……」
「ほう」
「古い言い伝えじゃ。あんた、何処の家のもんか知らんが、それを持ち歩くのはやめておくんじゃな。……最下層の囲い、眼鏡をかけた少年には気をつけな」

 そう意味深なことを言って、おばちゃんは冷蔵庫からサイダーを2つ取り出した。

「ほら、面白いものを見せてくれた礼だよ。持ってきな」

 そうしておばちゃんは店の奥の方へと去っていった。メアリとスーサンは近くのベンチに腰をかけ、頂いたサイダーの口を開きちびちびと飲み始めた。
 スーサンは言った。

「今のおばさんの話、どう思います?」
「なんか危なげなこと言ってたね。鬼子の金、だっけ? よく分かんないけどヤバそうなモノ拾ったね。まっ、常識的に考えて呪いなんてあるわけ無いんだけど」

 メアリはそう言ってのけ、サイダーの王冠を大事そうに手に取った。

「眼鏡をかけた少年……、まあ眼鏡なら私もかけてますが」
「どう見ても少年には見えねえっつうのおっさん。少年ってのはもっとこう、癒されるというか、そういう無垢で清らかな存在のことを指すんだ! あんたみたいなおっさんでは絶対無い、断じてない!!」
「……何だか強い執念がありますね」
「いやだってあたし、ショタコンだし」
「聞きたく無いですね、その情報。……しかし、面白い話を聞きましたね。災厄の秘宝! まさか道端をぶらぶら歩いていただけでこんな幸運に巡り会えるとは、これが"犬も歩けば棒に当たる"というヤツですか!」
「スーサン、それ意味だいぶ違う。……"棚から牡丹餅"、かな」

 とにかく面白いものを見つけたら、行動したくなるのがこの男スーサンである。
 早速彼は自分のツテを使って鬼子の金についての情報を掻き集める気のようだ。
 ちょうど、その手のことに関して詳しい専門家を彼は知っていた。

「ねえねえ、そんな秘宝とか夢みたいなモノ存在するわけ無いじゃん。あんなのおばちゃんが思いつきで言った嘘っぱちだよきっと。そもそも道端に落ちていた10円が秘宝って、妖怪が墓場で運動会してるってくらい荒唐無稽だっつーの」

 メアリは常識人としてそんな当たり前のようなことを言ってきた。しかし、スーサンはそんな常識的意見には一切耳を貸さない。
 何故かって? それがロマンだからさ!!

「というわけで電話を掛けますね。あーもしもし、私です私。元気にしてましたか?」

 メアリの話など気にも止めず、スーサンは携帯で何処かに連絡を取り始めた。そんな態度がムカついたのか、メアリはすかさずスーサンのサイダーを引ったくってがぶ飲みした。
 メアリがサイダーをがぶ飲みする中、スーサンは着々と秘宝についての情報を入手していた。

「ふんふんなるほど。あーまた浮気ですか。まあ止めはしませんがあんまり家族を泣かせない方がいいですよ?」
(……何の話してるんだ?)

 と、いつの間にか全く関係無いような話が繰り広げられていた。スーサンの王冠もコレクションしながら、メアリはスーサンと誰かの会話を黙って聞いている。

「ええ!? "オメガ衛星砲"、遂に完成したんですか? 日本人が長らく願っていた大望がとうとう。……はい、これならあの大国とも渡り合えますね!」
(……マジで何の話してるんだ?)
「ふむふむ、ああそれで核ミサイルを? 所持しちゃった感じですか? はいはい……え? 鬼子の金? ああそんな話してましたね。それで場所は、……最果ての……アンダーランド、……………………はい、大体分かりました。それでは失礼します」

 スーサンは電話を切った。長電話に疲れたのか、ふぅっと溜息をつく。

「随分長い電話だったね、関係無い話もしてたようだけど……」
「はい。つい、話し込んでしまいました。お待たせしてしまいましたか?」
「別に待ってないし……。それで、鬼子の金についての情報は手に入ったの?」
「はい確かに。国のトップから仕入れた情報なんで間違い無いです」
「総理大臣と話してたの!?」
「あちらも忙しいようで、大変な時に電話を掛けてしまいました」
「そりゃ危なっかしいこと話してたからね核ミサイルとか。……国のトップが浮気って大丈夫なのこの国?」
「大丈夫ですよ、"あちら"の世界では日常茶飯事だそうですし」
「聞きたく無い、そんな情報」

 とにかく、鬼子の金についての情報は手に入った。後はこの情報をどう活用するかなのだが……。

「もちろん行きますよ。鬼子の金、その隠された秘密を探るため!」

 一方メアリは冷めていた。

「だから秘宝とかあるわけ無いって常識的に考えて。大体急に思い立った日に行けるような場所なの?」
「問題ありません。何故なら秘宝の在り処はこの日本で最も田舎の國です。私は日本圏内であれば何処にでも行けるパスポートを持っていますからね」
「ハイハイそれは凄いね。それよりも、日本で最も田舎の國って……」
「ええ、目的地は絞り込めました。人口総数は60万を下回り、日本人にもその全貌をつかんでない未開の地……」

 スーサンは大空を仰ぎ見た。……この日本には、未だ見ぬ世界が山ほど存在する。

「最果てのアンダーランド"鳥取"。日本で最も、何処にあるのか分からない県トップ2に君臨する幻の地です」

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