覇王サタンの聖誕祭〜鉄道王への道〜
第36話「菊池 藍世」
「ちょっと、何してるの、君」
僕がそう言うと、少女は不機嫌そうにこちらを睨みつけた。
「ア?」
僕が藍世と出会ったのは、去年の夏頃。夜のコンビニでたばこを吸っていた藍世を見かけたことがきっかけだった。
「何?あんた」
「君、たばこ吸っていい歳じゃないでしょ。吸っちゃだめだよ」
僕は、藍世の口からたばこを取り上げ、近くにあった吸い殻入れにまだ半分ほども残っていたたばこを捨てた。
「触んないでよ変態」
「ていうか君、明日も学校あるだろ。寝ないで大丈夫なの?」
僕がそう言うと藍世は黙って立ち上がった。
「帰るの?もうたばこなんか吸うなよ。それと、こんな時間に外を出歩くのも……」
「学校なんて行ってないよ」
彼女は、早足に歩きながらそう言った。
「え?」
僕は聞き返したが、すでに藍世には僕の声など届いていない様子だった。
少し遠くに見える彼女の横顔は、どこか悲しげに見えた。
僕はそれを放っておけなくて、思わず藍世を呼び止めた。
「何?」
「何か学校に行けない理由があるのか?」
「そんなん関係ないじゃん、あんたに」
「僕は教師だから、君みたいな子は見過ごせないんだよ」
「うざ……」
そういいながらも、藍世は早足だった歩みを止めた。
僕らは店の明かりが届く所に腰を下ろした。
「どこの学校?」
「どこでもいいじゃんストーカー」
「よくないよ、どこの学校か分からなかったら、君の悩みを解決できないから」
「ど〜でもいいけどさ……お腹空いた」
「お腹空いた?じゃあ何か食べる?」
「買ってきてよ」
「わかったよ」
僕は立ち上がると、サンドイッチを2つ買って来た。
「何それ夜にサンドイッチ?」
「夜は低カロリーなものを食べるんだ」
「ふーん」
藍世は、買って来たサンドイッチを口に運びながら携帯を触り始めた。
「食事中に携帯触るのはよくないと思うけど?」
「わかったわかった……」
携帯をしまうと、藍世は黙って再びサンドイッチを食べ始めた。
「それで、君名前はなんていうの?」
「名前?名前は、菊池 藍世」
「藍世ね、僕はアスモデウス。まあ呼び捨てでもいいよ」
「え、なんて……?名前長くない?」
藍世は、さっきに比べるとだいぶ柔らかい表情をしていた。すぐに名前も教えてくれたし、少しずつ心を開いてくれているのかな……
「それで、藍世。藍世は何で学校に行ってないの?」
「別にー、行きたいって思わないからね」
「学校で何か辛いことでもあるの?」
「別にないよ。でも、学校に行くより遊んでる方が楽しいから行かないだけ」
そっか……学校に行きたいと思えないね……それなら、学校を楽しめるようにしてあげればいいんだろうけど。
「それで、藍世の学校って、どこの学校?」
「ストレスフル学園。ストレスフル学園の中等部」
「ストレスフル学園!?」
僕は、耳を疑った。偶然にも、藍世の通っている学校というのは、僕の勤務しているストレスフル学園だったのだ。と言っても、僕は高等部の教師なんだけども。
「藍世がストレスフル学園の生徒だったなんてね。実は、僕はストレスフル学園で教えてるんだよ」
「ふーん……」
ああ、興味なさそう。
「そろそろ帰ろうか?もう0時を過ぎたよ」
「帰れば?」
「藍世も帰らないと。明日も学校はあるからさ」
藍世は、そうだね、と言うと近くに停まっていたバイクに跨った。
「ちょちょ!そのバイク誰の!?」
藍世は、黙ってヘルメットを被ると、そのまま走り去って行った。
「菊池 藍世か……そうとう問題児だな……」
* * *
次の日、僕は中等部の教室をまわってみた。
菊池 藍世の名前はすぐに見つかった。しかし話を聞く限り、それは僕の知る菊池 藍世とは同じ人物には思えなかった。
「菊池さんですか?すごい良い子ですよ。成績も素晴らしいです」
「学校には毎日来てますよ。友達も多いみたいですし」
「菊池さんの悪い話とか聞いたことないよね〜」
「うん、みんなに優しいし」
中等部の教師、生徒数名に話を聞いたところ、皆同じような答えを返してきた。
「それで、菊池 藍世は何組の生徒?」
僕は、藍世のクラスを訪れてみると、そこには、明るく、楽しそうに振る舞う菊池 藍世がいた。
「え……あい……?菊池さん?」
僕が何と呼べばいいのか分からないままその名を呼ぶと、彼女は静かにこちらを向いた。
「先生?どうかしたんですか?」
こちらに目を向けたその表情は穏やかで、昨晩の荒んだ表情をした少女とは、到底同じ人物には思えなかった。
てか本当に藍世?もしかして双子とかなのかな……それはありえるな〜
「菊池さん、ちょっと来てもらえる?」
「わかりました」
とりあえず、僕は藍世を連れて人気のない場所へ移った。
「それで、昨日のことだけどさ」
周りに誰もいなくなって、僕が話し始めても、藍世の態度は変わる様子はない。
「昨日の夜、コンビニにいたのは、君だよね。ちゃんと学校に来てるんじゃないか」
「昨日の夜ですか?昨日の夜は私、家にいましたけど」
藍世はそういうが、そんなはずはなかった。僕が藍世と会ったのは昨日が初めてで、僕が昨日会ったのは目の前にいるこの少女にほかならない……ように見える。
「もしかして、菊池さんって双子のお姉さんか、妹さんがいるの?」
「いえ、いませんけど」
じゃあどういうこと……そう聞こうとしたところで、チャイムが鳴り響いた。
「ああ、ごめん菊池さん、僕と話していて遅れたって言ってくれるかな。僕からも言っておくから。次の教科何?」
「数学です。それじゃ」
* * *
どうなっているのか全く分からないままで、その日の夜も僕はコンビニを訪れた。
昨日と同じ場所に、彼女はいた。
「今日も来たのかよ……」
藍世は、煙を吐いて言った。
僕がそう言うと、少女は不機嫌そうにこちらを睨みつけた。
「ア?」
僕が藍世と出会ったのは、去年の夏頃。夜のコンビニでたばこを吸っていた藍世を見かけたことがきっかけだった。
「何?あんた」
「君、たばこ吸っていい歳じゃないでしょ。吸っちゃだめだよ」
僕は、藍世の口からたばこを取り上げ、近くにあった吸い殻入れにまだ半分ほども残っていたたばこを捨てた。
「触んないでよ変態」
「ていうか君、明日も学校あるだろ。寝ないで大丈夫なの?」
僕がそう言うと藍世は黙って立ち上がった。
「帰るの?もうたばこなんか吸うなよ。それと、こんな時間に外を出歩くのも……」
「学校なんて行ってないよ」
彼女は、早足に歩きながらそう言った。
「え?」
僕は聞き返したが、すでに藍世には僕の声など届いていない様子だった。
少し遠くに見える彼女の横顔は、どこか悲しげに見えた。
僕はそれを放っておけなくて、思わず藍世を呼び止めた。
「何?」
「何か学校に行けない理由があるのか?」
「そんなん関係ないじゃん、あんたに」
「僕は教師だから、君みたいな子は見過ごせないんだよ」
「うざ……」
そういいながらも、藍世は早足だった歩みを止めた。
僕らは店の明かりが届く所に腰を下ろした。
「どこの学校?」
「どこでもいいじゃんストーカー」
「よくないよ、どこの学校か分からなかったら、君の悩みを解決できないから」
「ど〜でもいいけどさ……お腹空いた」
「お腹空いた?じゃあ何か食べる?」
「買ってきてよ」
「わかったよ」
僕は立ち上がると、サンドイッチを2つ買って来た。
「何それ夜にサンドイッチ?」
「夜は低カロリーなものを食べるんだ」
「ふーん」
藍世は、買って来たサンドイッチを口に運びながら携帯を触り始めた。
「食事中に携帯触るのはよくないと思うけど?」
「わかったわかった……」
携帯をしまうと、藍世は黙って再びサンドイッチを食べ始めた。
「それで、君名前はなんていうの?」
「名前?名前は、菊池 藍世」
「藍世ね、僕はアスモデウス。まあ呼び捨てでもいいよ」
「え、なんて……?名前長くない?」
藍世は、さっきに比べるとだいぶ柔らかい表情をしていた。すぐに名前も教えてくれたし、少しずつ心を開いてくれているのかな……
「それで、藍世。藍世は何で学校に行ってないの?」
「別にー、行きたいって思わないからね」
「学校で何か辛いことでもあるの?」
「別にないよ。でも、学校に行くより遊んでる方が楽しいから行かないだけ」
そっか……学校に行きたいと思えないね……それなら、学校を楽しめるようにしてあげればいいんだろうけど。
「それで、藍世の学校って、どこの学校?」
「ストレスフル学園。ストレスフル学園の中等部」
「ストレスフル学園!?」
僕は、耳を疑った。偶然にも、藍世の通っている学校というのは、僕の勤務しているストレスフル学園だったのだ。と言っても、僕は高等部の教師なんだけども。
「藍世がストレスフル学園の生徒だったなんてね。実は、僕はストレスフル学園で教えてるんだよ」
「ふーん……」
ああ、興味なさそう。
「そろそろ帰ろうか?もう0時を過ぎたよ」
「帰れば?」
「藍世も帰らないと。明日も学校はあるからさ」
藍世は、そうだね、と言うと近くに停まっていたバイクに跨った。
「ちょちょ!そのバイク誰の!?」
藍世は、黙ってヘルメットを被ると、そのまま走り去って行った。
「菊池 藍世か……そうとう問題児だな……」
* * *
次の日、僕は中等部の教室をまわってみた。
菊池 藍世の名前はすぐに見つかった。しかし話を聞く限り、それは僕の知る菊池 藍世とは同じ人物には思えなかった。
「菊池さんですか?すごい良い子ですよ。成績も素晴らしいです」
「学校には毎日来てますよ。友達も多いみたいですし」
「菊池さんの悪い話とか聞いたことないよね〜」
「うん、みんなに優しいし」
中等部の教師、生徒数名に話を聞いたところ、皆同じような答えを返してきた。
「それで、菊池 藍世は何組の生徒?」
僕は、藍世のクラスを訪れてみると、そこには、明るく、楽しそうに振る舞う菊池 藍世がいた。
「え……あい……?菊池さん?」
僕が何と呼べばいいのか分からないままその名を呼ぶと、彼女は静かにこちらを向いた。
「先生?どうかしたんですか?」
こちらに目を向けたその表情は穏やかで、昨晩の荒んだ表情をした少女とは、到底同じ人物には思えなかった。
てか本当に藍世?もしかして双子とかなのかな……それはありえるな〜
「菊池さん、ちょっと来てもらえる?」
「わかりました」
とりあえず、僕は藍世を連れて人気のない場所へ移った。
「それで、昨日のことだけどさ」
周りに誰もいなくなって、僕が話し始めても、藍世の態度は変わる様子はない。
「昨日の夜、コンビニにいたのは、君だよね。ちゃんと学校に来てるんじゃないか」
「昨日の夜ですか?昨日の夜は私、家にいましたけど」
藍世はそういうが、そんなはずはなかった。僕が藍世と会ったのは昨日が初めてで、僕が昨日会ったのは目の前にいるこの少女にほかならない……ように見える。
「もしかして、菊池さんって双子のお姉さんか、妹さんがいるの?」
「いえ、いませんけど」
じゃあどういうこと……そう聞こうとしたところで、チャイムが鳴り響いた。
「ああ、ごめん菊池さん、僕と話していて遅れたって言ってくれるかな。僕からも言っておくから。次の教科何?」
「数学です。それじゃ」
* * *
どうなっているのか全く分からないままで、その日の夜も僕はコンビニを訪れた。
昨日と同じ場所に、彼女はいた。
「今日も来たのかよ……」
藍世は、煙を吐いて言った。
「ファンタジー」の人気作品
書籍化作品
-
-
17
-
-
59
-
-
111
-
-
157
-
-
11128
-
-
75
-
-
337
-
-
6
-
-
55
コメント