覇王サタンの聖誕祭〜鉄道王への道〜
第39話「鳩浦 茶麦VS.サリエル」
「呪いは解かねえ」
サリエルはごりごりと頰を掻きながら臨戦の構えをとった。
(やばい……こんなタイミングで遭うなんて……!)
「あの2人も生きて返さねえ……」
僕の背後、サリエルの視線の先には気絶した藍世と、血を流し横たわる茶麦の姿がある。
サリエルのこちらに向けた手から青白い光がちらちらと発生する。
「死ね」
鋭く発行した右手から放たれた光は、激しい痛みを伴って僕の腕に焦げ跡を遺した。
僕の身体はその勢いに耐えられず、十数Mほども先まで飛ばされた。
身体中にバリバリと電流が走るのがよく分かる。
このサリエルの能力は、『雷撃』……か!
僕が次の行動に移るよりも、いくらも早い時点で、サリエルは次の攻撃を放った。
その攻撃が僕に届くまでには瞬きをするほどの暇も与えられず、防御することもままならない。
「ぐぁあ゛ああ!!」
次に目を開いた時にはもうサリエルは、僕の目の前にいて、
「がっ!!」
雷を纏ったサリエルの右手が僕の鳩尾に埋まったと理解したのは、僕が盛大に胃の中の物を全てぶち撒けた瞬間だった。
そんな余裕はない事は感じていながらも、すぐそばに転がった茶麦と藍世に吐物がかからないように気をつけた。
なにはともあれ、これで、
「範囲内だ……」
「ア??」
すぐ目の前で拳を振り上げていたサリエルの動きが一瞬止まる。
「僕の『治癒』の、範囲内だ・って言ったんだよ、サリエル」
すぐ近くに倒れていた茶麦に『治癒』を使用し、茶麦という依り代を得た僕の複製は、ゆっくりと立ち上がる。
「フーー……」
「いいだろう、アスモデウス」
小さく息を吸ったサリエルは一気にオーラを爆発させる。
「はあ゛あ゛ああ!!」
太陽が雲に覆われ、光の届きにくいこの街で、雷を纏ったサリエルの身体は非常に目立っていた。
「よォメガネ……顔色が良くねえぞ……?唇も薄くて気分が悪いのがよく分かるぜ?」
「なに言ってる。気分は全く悪くない。むしろ、アスモデウスの依り代となった今の俺の力に非常にわくわくしている」
サリエルの轟々とした荒ぶるオーラに対し、茶麦の放つオーラは静かに燃えている。
それでいて、サリエルのオーラと比べて、力量に大きな違いは見られない。
そして、常に臨戦態勢のサリエルに対し、茶麦は目を薄く開きふらふらとしている。
「無防備だな?オイ」
「ああ」
「余裕じゃねえかメガネ」
サリエルは眉間に皺を寄せ、勢いよく茶麦の肩を掴んだ。
そして、もう片手で茶麦の顔面を殴りつけ、同時に雷撃を放った。
しかし、その電撃は、茶麦にこたえず、茶麦はサリエルの腕を掴むと、サリエルの顔面を殴りつける。
「!!?」
予想外の反撃に対応が遅れたサリエルは、バランスを崩し次の攻撃の防御が遅れる。
左麦の左手がサリエルの腹部に触れたその瞬間、大きな音を立て、サリエルはその身体をビルに叩きつける。
その衝撃に、ビルもガラガラと崩れていく。
サリエルのいた場所から、崩れ始めたビルまでの50Mほどには、アスファルトが痛々しく削れていた。
「メガネ……野郎…!!」
(しかし……なんだ?!奴のあのパワーは!?あれがアスモデウスのパワーだというのか……だが、依り代を得たとはいえ、先程の生身のアスモデウスと比べて強すぎる……!一体……??)
「まあ、考えるのは得意だ……」
(戦いを続けつつ、奴の強さを暴いてやる……!)
サリエルの踏み込んだあたりの地面が隆起し、崩れ落ちたビルの残骸は後方に弾け飛ぶ。
雷鳴と共に動き出したサリエルは、一瞬にして茶麦の目前へと迫る。
対して茶麦、サリエルの姿を確認すると同時に左手を振り上げる。
両者の拳がお互いの顔面に触れたのはほぼ同時。骨と骨のぶつかる鈍い音が響く。
しかし、サリエルの拳は空を切り、その勢いにバランスを崩す。
「!!?!?」
(こいつ……!?俺のパンチを抜けやがった……?!どうなってやがるんだよ本当にこいつはよ……??
アスモデウスの能力、か?だとすると何だ?『透過』……とか、か)
「無駄」
「!!」
サリエルが体制を持ち直すそれよりも早く、茶麦の蹴りがサリエルの顔面をとらえる。
(……あら……??そういや、アスモデウス…は?)
先程、倒壊したビルよりも少し先にあるビルに突っ込んだサリエルは、その視界の奥で、不審に走る車を発見する。
「あ、あの車……」
サリエルが、車に目を向けていたのも一瞬、すぐに標的を茶麦へと戻した。
壁際に茶麦を追い詰め、パンチを繰り出すが、左手は壁を砕く。
「アスモデウスはどこに行ったんだよ、メガネエ!!」
「さーねぇ、どこだと思う?」
言葉では気の抜けた様子であっても、茶麦の右腕はサリエルの顎を容赦なく砕く。
「よぉ……アスモデウスはどこなのかさァ……てめぇーの、正体ィイ!!」
またもサリエルの拳は茶麦の背後の壁を突く。
しかし、今度の攻撃は茶麦を狙ってのミスではない。壁を狙った攻撃である。
「やめろよ、惚れるだろ…?サリエル」
「すっとぼけやがって……分かってんだぜ…?」
「何が、だ?」
サリエルは歪んだ壁を両手で掴み、力を加える。
「俺の直接攻撃は効かなくてもよ……これは、効くだろ!」
「!!」
サリエルは壁を砕き、コンクリートの巨大な塊を、茶麦に放つ。
茶麦は、咄嗟に右拳を出して壁を壊すが、サリエルの目的は壁を武器にする事にはなかった。
サリエルの目的は茶麦の目を盗むこと。茶麦の視界が壁に阻まれているその間に、サリエルは茶麦の背後のビルに立った。
「死ね」
サリエルは、足下の壁を破壊、破片を掴み、それを武器とした。
(分かったぜ。テメーーの弱点!!
てめぇは!俺の直接攻撃は全くこたえねえ!だが!!間接的な攻撃となると、別だ)
サリエルの投石で、茶麦が血を流す。
(この野郎が……確かに俺は間接攻撃を防げん……しかもこの細かい礫での攻撃!全てを躱せるわけではない…
だがまあ、そこに気付かれるのもまだ想定内……)
茶麦は力強く地を蹴り、ビルから距離を取る。
「見せてやるよサリエル、俺の実力をな……!」
サリエルはごりごりと頰を掻きながら臨戦の構えをとった。
(やばい……こんなタイミングで遭うなんて……!)
「あの2人も生きて返さねえ……」
僕の背後、サリエルの視線の先には気絶した藍世と、血を流し横たわる茶麦の姿がある。
サリエルのこちらに向けた手から青白い光がちらちらと発生する。
「死ね」
鋭く発行した右手から放たれた光は、激しい痛みを伴って僕の腕に焦げ跡を遺した。
僕の身体はその勢いに耐えられず、十数Mほども先まで飛ばされた。
身体中にバリバリと電流が走るのがよく分かる。
このサリエルの能力は、『雷撃』……か!
僕が次の行動に移るよりも、いくらも早い時点で、サリエルは次の攻撃を放った。
その攻撃が僕に届くまでには瞬きをするほどの暇も与えられず、防御することもままならない。
「ぐぁあ゛ああ!!」
次に目を開いた時にはもうサリエルは、僕の目の前にいて、
「がっ!!」
雷を纏ったサリエルの右手が僕の鳩尾に埋まったと理解したのは、僕が盛大に胃の中の物を全てぶち撒けた瞬間だった。
そんな余裕はない事は感じていながらも、すぐそばに転がった茶麦と藍世に吐物がかからないように気をつけた。
なにはともあれ、これで、
「範囲内だ……」
「ア??」
すぐ目の前で拳を振り上げていたサリエルの動きが一瞬止まる。
「僕の『治癒』の、範囲内だ・って言ったんだよ、サリエル」
すぐ近くに倒れていた茶麦に『治癒』を使用し、茶麦という依り代を得た僕の複製は、ゆっくりと立ち上がる。
「フーー……」
「いいだろう、アスモデウス」
小さく息を吸ったサリエルは一気にオーラを爆発させる。
「はあ゛あ゛ああ!!」
太陽が雲に覆われ、光の届きにくいこの街で、雷を纏ったサリエルの身体は非常に目立っていた。
「よォメガネ……顔色が良くねえぞ……?唇も薄くて気分が悪いのがよく分かるぜ?」
「なに言ってる。気分は全く悪くない。むしろ、アスモデウスの依り代となった今の俺の力に非常にわくわくしている」
サリエルの轟々とした荒ぶるオーラに対し、茶麦の放つオーラは静かに燃えている。
それでいて、サリエルのオーラと比べて、力量に大きな違いは見られない。
そして、常に臨戦態勢のサリエルに対し、茶麦は目を薄く開きふらふらとしている。
「無防備だな?オイ」
「ああ」
「余裕じゃねえかメガネ」
サリエルは眉間に皺を寄せ、勢いよく茶麦の肩を掴んだ。
そして、もう片手で茶麦の顔面を殴りつけ、同時に雷撃を放った。
しかし、その電撃は、茶麦にこたえず、茶麦はサリエルの腕を掴むと、サリエルの顔面を殴りつける。
「!!?」
予想外の反撃に対応が遅れたサリエルは、バランスを崩し次の攻撃の防御が遅れる。
左麦の左手がサリエルの腹部に触れたその瞬間、大きな音を立て、サリエルはその身体をビルに叩きつける。
その衝撃に、ビルもガラガラと崩れていく。
サリエルのいた場所から、崩れ始めたビルまでの50Mほどには、アスファルトが痛々しく削れていた。
「メガネ……野郎…!!」
(しかし……なんだ?!奴のあのパワーは!?あれがアスモデウスのパワーだというのか……だが、依り代を得たとはいえ、先程の生身のアスモデウスと比べて強すぎる……!一体……??)
「まあ、考えるのは得意だ……」
(戦いを続けつつ、奴の強さを暴いてやる……!)
サリエルの踏み込んだあたりの地面が隆起し、崩れ落ちたビルの残骸は後方に弾け飛ぶ。
雷鳴と共に動き出したサリエルは、一瞬にして茶麦の目前へと迫る。
対して茶麦、サリエルの姿を確認すると同時に左手を振り上げる。
両者の拳がお互いの顔面に触れたのはほぼ同時。骨と骨のぶつかる鈍い音が響く。
しかし、サリエルの拳は空を切り、その勢いにバランスを崩す。
「!!?!?」
(こいつ……!?俺のパンチを抜けやがった……?!どうなってやがるんだよ本当にこいつはよ……??
アスモデウスの能力、か?だとすると何だ?『透過』……とか、か)
「無駄」
「!!」
サリエルが体制を持ち直すそれよりも早く、茶麦の蹴りがサリエルの顔面をとらえる。
(……あら……??そういや、アスモデウス…は?)
先程、倒壊したビルよりも少し先にあるビルに突っ込んだサリエルは、その視界の奥で、不審に走る車を発見する。
「あ、あの車……」
サリエルが、車に目を向けていたのも一瞬、すぐに標的を茶麦へと戻した。
壁際に茶麦を追い詰め、パンチを繰り出すが、左手は壁を砕く。
「アスモデウスはどこに行ったんだよ、メガネエ!!」
「さーねぇ、どこだと思う?」
言葉では気の抜けた様子であっても、茶麦の右腕はサリエルの顎を容赦なく砕く。
「よぉ……アスモデウスはどこなのかさァ……てめぇーの、正体ィイ!!」
またもサリエルの拳は茶麦の背後の壁を突く。
しかし、今度の攻撃は茶麦を狙ってのミスではない。壁を狙った攻撃である。
「やめろよ、惚れるだろ…?サリエル」
「すっとぼけやがって……分かってんだぜ…?」
「何が、だ?」
サリエルは歪んだ壁を両手で掴み、力を加える。
「俺の直接攻撃は効かなくてもよ……これは、効くだろ!」
「!!」
サリエルは壁を砕き、コンクリートの巨大な塊を、茶麦に放つ。
茶麦は、咄嗟に右拳を出して壁を壊すが、サリエルの目的は壁を武器にする事にはなかった。
サリエルの目的は茶麦の目を盗むこと。茶麦の視界が壁に阻まれているその間に、サリエルは茶麦の背後のビルに立った。
「死ね」
サリエルは、足下の壁を破壊、破片を掴み、それを武器とした。
(分かったぜ。テメーーの弱点!!
てめぇは!俺の直接攻撃は全くこたえねえ!だが!!間接的な攻撃となると、別だ)
サリエルの投石で、茶麦が血を流す。
(この野郎が……確かに俺は間接攻撃を防げん……しかもこの細かい礫での攻撃!全てを躱せるわけではない…
だがまあ、そこに気付かれるのもまだ想定内……)
茶麦は力強く地を蹴り、ビルから距離を取る。
「見せてやるよサリエル、俺の実力をな……!」
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