覇王サタンの聖誕祭〜鉄道王への道〜

鉄道王

第18話「うん、おいしい!」

「いてて……!」

ラグエルと戦った後、俺が目を覚ましたのは次の日だった。

「あれっ、ここどこだ…?まさか…」

エブリデイ病院に来た時のようにまた死んだのかと思ったが、どうやら違うようだ。

「火傷は大丈夫?山崎」
「フン…あの爆発も、なかなかのものだったからな…私の漆黒ジェットブラック黒炎ダークフレイムとも劣らないほどだな…」

出会ってからそう何日もは経っていないが、既に見慣れた2人がいた。

つーか漆黒の黒炎てなんだよ。
と、まあそんなことはどうでもいいのだが…

「あれ、ベルゼブブは?」
「あぁ、ベルゼブブは馬車で作業をしているわ」
「作業?」
「ええ、私や、レヴィは持っているどベルゼブブは武器を持っていないの」

そんなものがあったとは知らなかったが…なかなか胸熱だな。

「それで、ここってどこなんだ?」
「ここは、Gダム村の中の民家。あなたが気絶していたところを助けてもらったのよ」
「へー…そうなの。俺ってどのくらい気を失ってたの?」
「大体丸一日くらいね」
「そんなに!?」

自分では2〜3時間くらいかと思っていたが、思いの外長い時間眠っていたようだ。

「とりあえず、目を覚ましたのならここの家の方に挨拶してきたらどう?これからしばらくお世話になるのだしね」
「ん?しばらく?」

俺はすぐにでもこの場を去るつもりでいたのだが。俺たちがここにいるとラグエルもいつか来てしまうだろうしね。
あぁ、もちろんここの家の人にお礼は言うつもりだったよ。

「何日も居続けるつもりなのか?」
「ええ。ベルゼブブが…というか私たち悪魔が武器を完成させるのには時間がかかるのでね。短くても1週間は必要になるわ」
「へえー…」

(まあ鍛冶屋のことなんて全然知らないし、普通そのくらいなのかもな)

「さて、じゃあ挨拶をしてこようかな」

* * *

そう言って、部屋を出たはいいが、どこがどの部屋か全くわからなかった。

「あの…もう大丈夫なんですか?」
「あっ?あ、はい!」

後ろから声をかけてきたのは俺と同じかそれより少し幼いくらいの少女だった。
希空と同い年かもしれない。

「よかった。村の近くの道ですごい大きな音がしたと思ったら、あなたが倒れていたので…」
「ああ、助かりました。ありがとうございます。それで、すごく言いにくいんですけど…」

先にマモンが言っておいたのか、少女はすぐに察してくれたようで

「もしかして、しばらくこの家にいるって話ですか?もちろんいいですよ!私、姉さんと2人暮らしなので楽しくなります!」

俺が頼む前に快諾してくれた。
良い子だ…希空の友達にしてあげても良い。

「じゃあ、麻美さんと、玲香さんには教えましたが、小麦さんにもお風呂やトイレの場所、教えておきますね!」
「え?まみ?れいか?こむぎ?」

突然知らない名前が出てきて困る。誰?

「え?お名前、間違ってましたか?一緒にいたお二人はそう言ってましたけど…」
「あ、あぁ!麻美と玲香ね!ごめんごめん合ってるよ、小麦で!よろしく!」

俺がそう言うと、その子は少しも不審がらずに、笑顔で返してくれた。

「はい!私は蘭子って言います。よろしくお願いしますね!」

そっかあ偽名か。水面がここを訪ねてきたらやばいからね。
にしても俺の名前が小麦って…パン屋意識してんじゃねーよ!

(まあこの世界にあるわけないし、たまたまだろうけどね)

「じゃあ私、ご飯を作るので小麦さんはお部屋に戻っていてください!」
「あぁ、うんありがとう」

何か手伝ってあげたかったが、俺はパンを焼くくらいしかできることがない(山崎だけに)ので仕方なく部屋に戻った。

* * *

「いや、蘭子ちゃんすごく良い子だね」
「ええ、彼女は良いお嫁さんになれるでしょう」
「クックックッ、奴を我の眷属として旅に同行させるというのも1つの手ぞ…」

部屋に戻った俺は、マモンとレヴィと楽しくお話していた。
ベルゼブブはまだ武器製作が終わっていないのでここには来ない。

「でもベルゼブブ、一度も来てないのな。蘭子ちゃんもベルゼブブのことは知らなかったみたいだし」
「ええ。まあベルゼブブの武器製作が終わったタイミングで出て行くわけだし、いう必要もないでしょう?」
「ま、そうだね」

「あっそういえばお前ら、偽名だけどさ、俺だけ違いすぎねえ?」
「私たちは、名前の頭文字が同じになるように偽名をつけたのよ」
「いや、俺は全然違うんだけど」
「ふ、まあ貴様の偽名など私たちが頭をひねって出すまでもない。その時浮かんだ単語を私が言ったのだ」

平然と俺が傷つくようなことを言うレヴィ。

「まあ別にいいけどさあ。自分でも偽名なんて大して考えないし」

ベルゼブブが偽名を使うときはどんな名前になるのか気になるな。「べ」から始まる名前って珍しそうだし。

「そういえばお前ら、俺が見つけられたとき、外にでてたのか?」

考えればどのタイミングで出てきたのか不明だ。
蘭子ちゃんが来る前から出ていたのなら2人に任されそうだし、俺がこの家に来てからなら「誰!?」ってなるだろうし。

「それはな、蘭子が貴様を運んでいるときに、タイミングを見計らって近くに倒れたのだ。クックックッ」
「ええ!そんなことしたの!?」
「案ずるな。気づかれてはいまい」
「蘭子ちゃんは、私たち3人を村まで連れて行ってくれたわよ」
「いや、ひでーな!!鬼かよ!」
「冗談よ。私がすぐに起きてレヴィを担いで行ったわよ」
「はっはっはっ」
「はっはっはて、お前ただ運んでもらっただけかよ」

そんな話をしながら夕食までの時間を過ごした。

* * *

「うん、おいしい!」
「本当ですか?やったあ頑張ってステーキを焼いた甲斐がありました!」
「蘭子さんは本当、良い女ね」
「クックックッ。我が供物としては上々の出来だな」
「悪魔には供物って言わないだろ」
「玲香さんってかっこいいですね!」

キャッキャッキャッキャッキャッキャとはしゃぎながら食事をした。(はしゃぎすぎだろ)
こんなに賑やかな食事は久しぶりかもしれないと思った。
最近は希空が反抗期だったから…

「いやー美味かった。こんなに楽しい食事は久々だった」
「はい、私もです!これから毎日食事が楽しみです!」

そこでふとベルゼブブのことが気になった。

(そういえば、ベルゼブブは何か食べるものあるのかな…)

「あ、ごめんちょっと席外すね」
「どうかしたの?」
「いや…ちょっと馬車の鍵貸してくれるか?」
「あぁ、馬車に行くのね。私もついていくわ」

* * *

「ベルゼブブはどこの部屋にいるんだ?」
「ベルゼブブに会うのは今はやめた方がいいと思うわよ」
「…?なんで?」

マモンは武器を出すと、それを見せながら話し始めた。

「この武器、何でできているかわかる?」
「んー、木とか鉄?」

マモンは無言で首を横に振った。

「私たち悪魔の武器。その材料は天使の骨、それに悪魔の骨と肉なの」
「……はっ?」
「おそらく今ベルゼブブは、自分の足でも落として武器を作っているでしょうね」
「悪魔の武器ってそんなものでできてるのか!?」
「ええ。私も、作るときには苦労したわ」
「でも、天使の骨って…そんなの持ってないだろ」
「天使の骨は病院で戦ったという天使から回収したらしいわよ」

(あの2人か…!)

「今のベルゼブブをあなたが見たら、助けたくなるでしょうね。でも何もできることはないわ。食事は私が手伝うから、あなたは何もしないでいいわよ」

ベルゼブブが武器を作るのには、天使と悪魔の体が必要になる。
人間の俺にできることは何もない。
俺はただ、ベルゼブブの無事をいのるだけだった。

* * *

「遅かったな!やっ…小麦よ!」
「ああ、悪い悪い」

あぶねぇ。
言いそうになってんじゃねーよ。

「マモンは?」
「すぐ来るんじゃないのか?」
「そうか」
「あ、もうこんな時間ですね、お布団ひいてきます!」

蘭子は時計を見ると俺たちが使っていた部屋に行った。

「はー…もう寝るのか蘭子は」

そう言うとレヴィは、何か思い出した様子でこちらを見た。

「そういえば貴様…貴様はどこの部屋で寝るのだ?」
「…あっ、そういえばそうだな。馬車で寝ればいいかな…でもベルゼブブがいるしな…」

考えていると、マモンが戻って来た。

「あ、マモン。寝る時の部屋って…」
「寝る時の部屋?」
「ああ、男は俺だけなんだし、別の場所で寝た方がいいだろ?馬車とかさ」
「蘭子さんにはどこで寝たと言うの?」
「あー、それはなー…」
「別に、一緒の部屋で寝れば良いと思うけど?」

意外にも俺たちの中で一番気にしていなかったマモンに、俺とレヴィは2人声を出して驚いた。

結局、部屋は二部屋用意された。

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