覇王サタンの聖誕祭〜鉄道王への道〜

鉄道王

第10話「VS.メタトロン」

「じゃ、いくよー。3分」 

そうメタトロンが告げた途端、すさまじい速さで俺の目の前に迫ってくる。
その刹那、全神経が耳に集中したのかと思う程の破壊音が俺の耳に伝わる。
世界が反転し、眩んだかと思うと、次に目に入ったのはメタトロン。

(ちょっ...なにこいつ、つええ!やばい涙出てるかも。)

「僕もねぇ...遊びでこの子を連れに来たわけじゃあない。本気でやるよ。けど君、ガードしても構わないんだよ?なんなら反撃してもいい」

(こんな奴の攻撃をガードなんかできるわけがない。速すぎる!
ましてや反撃だなんて…)

腹部に強い衝撃。
「うぉっ…ぐ…」

(やべ...吐く...)

「このやろ...」
必死こいてパンチを出すがメタトロンは軽くいなして攻撃にうつる。

「あと何分くらいかな?まだ1分経ってないかな?ははははは。」
流石サタンがはっきりと強いというほどの相手、さすがに強い。こんな奴の攻撃に3分だなんて耐えられる気がしない。

(やばい、意識が...)

「君がッ」
バンッ
「死ぬまで」
ボガ!
「殴るのをやめないッ!」グオオッ
ドッガアアアン

(この野郎...天使のくせして人間様の漫画を読むんじゃねえ!)

にしても本当やばい。このままだと無事死亡ということもありえる。

「そろそろ1分は経ってないかな?終わろうか」

メタトロンはあまりに張り合いのない攻防に飽きたのかもう終わらせようと攻撃の構えをとる。
恐らく今までの攻撃で最強であろう一撃が繰り出されようとしたとき、メタトロンの身体が宙を舞った。

「?誰かな」
「見てられないわ。瀬川さん、助けます」

そこにいたのはマモン…というよりはこの雰囲気は…

「モモコさん!!」
「私もここまであなたの味方をしてしまった以上、もう学園には戻れません。戦いましょう。2人なら勝てるはずです」

「ふーん...ま、仲間がいてはいけないなんてルールは作っていなかったし、いいだろ。残り時間で君を殺せばいいだけだ。」
「力を貸しなさい、マモン!」

モモコさんの手元にモモコさんの背丈程もある大きな鎚が出現する。

「虫けらどもがイキってるみたいだけどね、僕は天使!人間ごときにやられる存在ではないんだよ」
「どうでしょうね...」

『瀬川さん、聞こえますか』

(!?なんだ?テレパシー?)

『今、マモンとサタンを通じてあなたの脳に言葉を飛ばしています。作戦があります』

(なるほど作戦か。聞かれるとまずいもんね。)
『それで、その作戦っていうのは...』

(俺にもできた。やったー)

『はい、それは...』

「行っていいかい?制限時間がある以上あまり君らの都合に合わせてはいられないんだ」
!メタトロンが痺れを切らしたか…

(時間はあとどれくらいある!?)

「あと1分だ」
サタンが教えてくれた。
(1分か...この作戦で1分も逃げ続けられるか?)

「くたばりなァ!!」
メタトロンが渾身の一撃を放つ。
しかし、メタトロンの拳が俺に届く直前にモモコさんの鎚がメタトロン目掛けて振り下ろされる。が、
「駄目だねェ、そんな攻撃じゃあ...」
モモコさんは押し飛ばされる。

「さあ!女!君はどれくらい耐えられるかな!?」

メタトロンはモモコさんを追う。
しかしモモコさんもピースフル学園で生徒会をやっていた人材、戦いには慣れている。

モモコさんに放たれたパンチはモモコさんの顔面を捕らえるが、メタトロンはそれ以上動かない。

「!?なんだ?右腕が...?固定でもされたかのようだ」
メタトロンの腕が腐ってゆくかのように黒ずんでゆく。

「呪術が使えるのか、この女...」
ブルブルと怒りに体を震わせながらメタトロンは言う。

「ええ、呪術はマモンに頼らなくとも私自身の得意分野です。そしてもう1つ。気づいていましたか?マモンの『強欲』の能力によりあなたの意識を奪っていたことに」
「なに...?」

俺が心臓を刺していることにようやく気づいた様子のメタトロンは驚きが隠せないようだった。

「なんだ!?どうやってお前僕の背後に!!」
「モモコさんが教えてくれただろ。マモンだよ。マモンはその強欲により他人の意識すらも自らに集めることができるんだよ」
「そうか...君たちは...」

「3分だ」
サタンが時間を告げる
「なるほどね...たかだか人間ごときにここまでしてやられるとは僕のプライドはボロボロだよ。完敗だよ。その子はくれてやる」

よかったー暴れ出したらどうしようかと思ったんだ。

「でも、次は殺す」
…!
メタトロンの眼には明確な殺意が宿っていた。
「じゃあね。また会おう」

そう言うとメタトロンは光の中に体を引きずりながら消えて行った。
心臓刺したんだから死んでくれればいいのに。
なにはともあれ、危機は去った。これでレヴィの依り代も手に入ったな。

ふう、今日はもう疲れた。
思えば今日は朝から聖誕祭でぼこされたかと思えば命を狙われて逃げる羽目となり、こんな危険な目にあって...
この1ヶ月が夢であればどんなにいいだろうか...
そんなことを考えながら俺は馬車へと戻り、泥のように眠りについた。

コメント

コメントを書く

「ファンタジー」の人気作品

書籍化作品