FANTASY WAR ONLINE
第五三話
俺はギルドに併設されている酒場の席の一つに座り手に持っているギルドの利用規約を読み進める。
ハンターギルドらしく、依頼というものは討伐系しかないらしい。採取系や護衛系の依頼は他のギルドの管轄になるそうだ。これは、行政的ないろいろがあったんだろうな。よくあるよね、こういう分離。
他にもランクの話だったり、ギルドのメンバーが利用できることなどが書かれていた。素材はギルドに登録していないと買い取りしてくれないらしい。だから、魔族ならほとんど全員が持っているらしく、身分証代わりにギルドカードを使用できるそうだ。それほど普及しているのだろうな。
「スバル、待った?」
と、かおるが俺の方へと駆け寄ってきた。そして、俺の隣の席へと勢いよく座る。この椅子は木製の木の丸太を適当な大きさに切っただけかのような椅子なので、そんなに勢いよく座ると尻を傷めないのかね。
「いや、待ってないよ」
ギルド登録は一人ずつ行っていたので、俺が最初、次にかおるの順番だった。
「でも、こうやってパンフレットで規約を配るなんて、魔族って結構識字率高いんだね」
「ああ、そうだな。そういえばそうだ」
かおるが何気なく感心していたが、思えばそうだな。町の外観の様子などは明らかに中世欧州諸国の街並みというものを意識しているだろうが、他の文化に関してはその時代感にとらわれていない。
「なんて書いてあるの?」
かおるは俺の腕に手を絡ませてきながら、俺の呼んでいるパンフレットをのぞき込むようにしてくる。俺は読みやすいように少しかおるの方へとずらす。
どうせならと、俺は最初のページから読み返す。
「ちっ」
どこかかから舌打ちの音が聞こえる。もしかしたら小鳥のさえずりかも。
「おいやめろって」
「いいだろうがよ」
俺の後ろの席で不機嫌な男がおそらくジョッキを机に打ち付ける。どんと大きな音が俺の耳に入ってくる。
「後ろの人機嫌悪いね」
かおるは耳打ちするようにして俺の耳に顔を近づける。
「依頼でも失敗したんだろ」
依頼の失敗が連続してくると、ランクの降格があるということがパンフレットに書かれている。おそらく、結構連続で失敗してしまって、そのストレスでやけ酒をしているというところだろうか。相当酒臭いからな。
先に向こうが座っていたんなら、俺はここに近寄らなかったが、後から向こうが座ってきたもんだからな。移動して他の席に座るというのが失礼な気がしたもんでね。
「しかし、ウッドの奴遅いな」
俺は素材買い取りの列を見る。
あれ、ウッドは並んでいないな。ならどこに行ったんだろう。雲隠れでもしたかな。それか神隠し。ありえそうだなあ。
「あー、お待たせ」
そう言いながら俺たち二人に近寄ってきたのはライフだった。ライフは少し用事があるということで離れていたのだが、用事が終わったのだろうか。
ライフはかおるとは逆方向の俺の隣に座る。両手に華だな。
「ちっ」
「……しね」
「…………ころす」
呪詛が振りまかれているようだ。この世界にも呪術ってのはあるのかね。想いの力を媒介とする術。試しに藁人形でも後で作ってみようかね。
ライフの体が震えている。寒いのかな?
俺はストレージに入っている、タオルを取り出す。このタオルは祖母ちゃんが作ってくれたもので、基本的に汗を拭くときなどに使っている。今回取り出したのは新品のタオルなので俺の汗臭い臭いがついていることはない。安心だ。
「ほいこれ」
俺はそれをライフの膝掛け代わりに使う。ライフの下半身の装備はホットパンツとばかりに短いので、男から見たら非常に寒そうである。
「え?」
ライフはきょとんとした顔で俺を見ている。
「体震えてたからな。寒いんだろ」
「ああ……そうじゃないけど、まあいいか。ありがとう」
「どういたしまして」
俺はパンフレットに目を移す。
「おい、貴様!」
後ろのとこが突然叫びだす。周囲の視線は男の方へと向かう。
で、肝心の男は俺のほうを向いている。俺が何かしたかね。姿勢よくパンフレットに目を通していただけだよな。うん。
「なんだ?」
ここで弱腰はダメだな。俺は睨み付けるようにして男の方を見る。
「ちょ、ちょっとやめろって。なあ!」
連れのおそらく魔法使いは男の腕を引っ張って座らせようとしているが、男の方は聞く耳を持たないようだ。
男の装備は革だな。それで急所には金属が使われている。典型的な前衛タイプ。筋肉のつき方から見て力で圧倒するようなタイプだから、速度で翻弄すれば大丈夫だろうな。
男は抑えきれないとばかりに口を開いた。
「貴様、そんなに女を侍らせて、最近女に振られた俺に対する当てつけか!」
…………。
……………………知らないよ。
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