FANTASY WAR ONLINE
第二三話
「ハアッ!」
今はかおると組手をしている。
かおるは俺と組手が出来ていないということで魔力の鍛錬をいつも以上の集中力でこないして、みなみ母さんの次に【魔力操作】を習得できた。鬼人って、物理寄りだから、魔力の適応力は低いはずなんだけどなあ。俺が言えたことじゃないが。
「ハッ!」
かおるは息が漏れるからまだわかりやすいほうである。今も顎に掌底が飛んできている。それを俺は平手で捌き、足払いをかける。それを足を浮かせて避けると、その浮かせた足で蹴りを打ってくる。が、俺は体当たりをしてかおるのバランスを崩させる。その崩れたところで手首をつかみ投げに持ち込む。
だが、かおるは舞う。舞うように戦う。だから、ふわりと華麗に着地する。投げられたと感じさせず、また俺も投げたと実感できない。その美しさと共にかおるは滑り込むようにして俺の顎に拳を突き上げるようにして打ち込む。
かおるの種族は鬼人である。鬼人の種族スキルは【剛力】だ。このスキルは与えるダメージを50%アップさせる。これは、今の訓練ですら適応されるのだから、当たれば死ぬ。当然だ。今の俺は初期装備。防御力なんてない。そもそも、顎を守る防具なんて動きにくくなるだけでつけようとは思わないが。
「シャッ!」
と、かおるの拳が俺の頬をかすめる。それだけで、俺の脳みそが揺さぶられるような衝撃が来る。……まじか。
「ハアッ!」
気合を込め直す意味で、俺は叫びながら首筋に手刀を打ち込む。と、かおるは半身で避けるが、その肘でみぞおちを狙う。が、手を添えられて力を霧散させられる。鬼人という、剛の力により万物を粉砕する種族なのに、柔の力によって力を操るなんてずるくないですかね。えぐいんですけど。かおるの長所に鬼人の長所が合わさって最強に見える。
かおるは足を絡ませて体重をかけてくる。そのまま倒れるようにしながら、かおるは俺の腹に膝を乗せる。倒れる衝撃と膝蹴りの衝撃でサンドイッチされたら、さすがにつらい。だが、俺も同じようにかおるの体に膝を入れる。
衝撃。俺たち二人して歪んだ笑顔を見せる。ああ、やっぱりかおるは俺の妻にふさわしいんだなと、思ってしまう。他人様に見せられない光景である。
《只今までの行動により【徒手武術】がレベルアップしました》
《只今までの行動により【受け】がレベルアップしました》
《只今までの行動により【回避】がレベルアップしました》
《只今までの行動により【見切り】がレベルアップしました》
《只今までの行動により【魔力感知】がレベルアップしました》
《只今までの行動により【魔力操作】がレベルアップしました》
またレベルが上がったな。順調である。まあ、そんな余裕が今の俺にあるわけではないのだけれども。
「グフッ」
かおるからそんな声が漏れる。
「くく……」
ちょっと辛いな、これ。
「あー……」
「あ、ごめんねスバル」
かおるはすぐに俺の上からどく。だがね、そういう問題じゃないんだよね。
先ほどいったように、鬼人のスキルは与ダメージを増加させる効果がある。で、俺はその鬼人であるかおるからの攻撃をもらっている。その衝撃が俺の骨のいくつかをダメにしている。
俺は、気をみなぎらせることにより、痛覚の緩和を行っているため、何ともないように見せてはいるが、正直動いてはいけない。だから動けない。
「いかれてるの」
師匠は近寄りつつ呆れたようにそう言った。
「どっちの意味ですかね?」
「……どっちもじゃ」
師匠は俺に手を置いて魔力を流し込む。その魔力は俺の損傷個所へと流れていき、だんだんと修復されていくのが感じられる。
「ほれ、終わりじゃ」
「いやあ、すみません」
俺はしばらく体を動かし、不自然なところがないかを調べる。ちゃんと完治している。さすが魔法のある世界である。一切の問題がない。
「大丈夫、スバル」
「ああ、問題はないよ」
俺は心配そうに見ているかおるを落ち着かせるように、頭に手を置いて優しく撫でる。
「いや、問題あるじゃろ。鬼人の攻撃を何のガードもなしに受け止めるなんぞ、誰もやらんぞ」
「いや、こういう時じゃないとわかりませんよね。攻撃の威力がどんなもんかは」
「そのために受け止めたのかの?」
「あとは……アドレナリンが高まっていたんでね」
「うわー……」
師匠がジジキャラを忘れて引いているよ。それとは対照的にかおるはとてもきれいな笑顔を俺に見せている。何かいいことあったのかね。
「アドレナリン高まると、つい無茶しちゃうよね」
あ、ただ共感しているだけだったわ。
「いや、かおるはそこまで無茶しなくていいからな。体を壊されると俺が困るからさ」
「スバル……。私も心配だから無理しないでほしいな」
「ああ、そりゃそうか。気を付けるよ」
ゲームだからと無理はしちゃいかんよな、うんうん。かおるに心配をかけてまで無理したいわけじゃないしな。
「みんな、戻ったよ」
と、背後から声が聞こえる。しかも、見知った声である。
「祖母ちゃん、今帰って来たのか?」
俺の視線の先には祖母ちゃんが尻尾を振りながら立っていた。
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