FANTASY WAR ONLINE
第十四話
森の中を少し進んだところで師匠は立ち止まる。
「ほれ、よく見ろ。これはアンヤカシュといっての、茎がうまい。で、こいつがニルヘイルという根っこがうまい植物じゃ」
「師匠、それは何語ですか?」
単語が全く聞いたことないんですけど。
「え? ……ああ、そうじゃったの。アンヤカシュは精霊語で、ニルヘイルが妖精語じゃったかの?」
「全く違う言語なんですけど」
「そりゃそうじゃろ。神代語にも魔族語にもこの山菜を表現する単語はないしの。だから他の種族の言語を借りてきているのじゃよ。ちなみに、あれは山芋じゃ」
山芋はあるのか……。つまり、謎の固有名詞を使用する植物はこのゲームに独自に存在する植物ということなのだろうか。
「白っ! ニルヘイル白っ! 白いゴボウだこれ!」
マナトが掘り出したニルヘイルは確かに真っ白なゴボウである。なんだこれ。面白い植物である。
「よく、葉や茎の形は覚えておくといいぞ」
「匂いも覚えておいたほうがいいじゃろうな」
「そうだね」
祖父ちゃんたちはそういうと、鼻を茎や根に近づけ、匂いを嗅いでいる。たしかに、狼の獣人がこれを活用しない手はないな。
俺も同じように匂いを嗅ぐ。ふむ、ゴボウに少し甘いにおいがする。甘いゴボウ? 面白そうな味である。おいしそうとは思っていない。だが、師匠が教えてくれたものなのだからおいしいのだろう。まあ、これを調理するのは女性陣なのだ。そこは任せるとしようかな。
《只今までの行動により【嗅覚強化】がレベルアップしました》
ふむ、レベルアップしたか。そういえば、ステータス開いてないな。今はどんなスキルを覚えているか整理する必要があるのかね?
……いや、レベルアップしてからでいいか。まだ俺自身はレベル1だからな。
しばらく歩いきながら、食べられる山菜を教えてもらい、色形、匂いを覚えながら【嗅覚強化】がもう一度レベルアップしたところ。
《只今までの行動により【鑑定】を習得しました》
「なんか出たね」
父さんが反応する。これは全員出ているのかな? そんな気がする。
「【鑑定】か。定番なスキルなのかな?」
「あ、アイテムの名前が見れるぞ」
「品質とかは?」
「わからない」
マナトは残念そうに答える。
「そりゃそうじゃろう。わしはまだ品質のいい山菜の見分け方を教えておらんからの」
師匠のその発言で俺たちはみな固まった。きっと、頭の中で今の師匠の言葉の意味を真剣に考えているのだろう。俺だって考えているのだ。
品質のいい山菜の見分け方を教えていない。この意味はどういうことか? これ、品質の見分け方を知らないと、鑑定でアイテムの品質の項目が出ないのではないだろうか? しかも、アイテムごとにどういうものが質がいいのかというのは変わってくる。つまり、すべてのタイプの品質の見分けを最低一度は目にしておく必要があるのだ。おそらくはそういうことだ。
現に今俺が手に持っているものを見てみる。
【オラシエーナ(鬼人語)】
ミカンに似た木の実。皮をむくとハチミツの匂いがする
そう、俺が知っていることしか出ないのである。つまり、図鑑をよく読み込んでどんなアイテムがあるのか知っておく必要があるということなのだろう。運営は頭がおかしい。汎用スキルですら、難易度が高い。
「これは……えぐいなあ」
父さんは頭を搔いている。こればっかりはしょうがない。俺だって同じ気持ちなのだからな。
「ほれ、立ち止まらないで先へ行くぞ。まだまだ先は長いぞ」
師匠に言われて【鑑定】についての考察を一旦やめて、後に続く。こればっかりはどうしようもないのだ。
して、しばらく師匠に続いていくと、開けた場所へと出る。日の光が気持ちがいい。先ほどまでは木漏れ日でしかなかったからな。
「あ、泉だ」
ユウトの指さす先には泉がある。中を覗いてみるとそこまで見れるほどに透き通っていたのである。
「きれいじゃのう」
祖父ちゃんも泉の水を手ですくって飲んでいる。俺も一口。
「……うまっ」
つい、声が零れ落ちてしまう。日本の天然水より美味いってどんな水だよ、これ。
「なかなかいいところじゃろ?」
確かに。ここは非常に気分がいい。心が落ち着く。少し遠くで狼らしき生き物がいるが、こちらに襲い掛かってくる様子はない。そういうところなのだろう。いいところである。後でかおると一緒に来たいものだ。
……ん? 何かを感じ取った。俺の鼻が。俺は周囲の匂いを嗅ぎ始める。これは……無臭だな。しかし、無臭であると嗅ぎ分けられる無臭である。匂いがない匂いとでもいえばいいのだろうか? そんな不思議な物体があたりにかすかに感じ取れる。これはなんだ?
「兄さんどうしたんだ?」
「なんかある」
「どこに?」
「ここら一帯にだ」
マナトは目を細めて周囲を見渡すが何も見つけられないのか困惑したような顔をする。しかし、俺が何かあるといった言葉を疑っておらず警戒を怠ることはしない。その雰囲気が伝播していき、全員が警戒態勢を敷いている。警戒していないのは師匠ぐらいである。師匠、明らかに俺たちより強いですよね? なんでそこまで余裕なんですか? 強いからですか?
いや、これ……俺の体の表面からも匂うな。どういうことなんだこれ?
俺はしきりに自分の体と空気中の何かを嗅ぎ続けている。ここまで鼻を酷使したのは人生初めてのことだ。しかし、これが気になる。なんなんだこれ?
「なんだこれ?」
ふと、無臭が強くなった。
《只今までの行動により【嗅覚強化】がレベルアップしました》
《只今までの行動により【魔力感知】を習得しました》
……あ。
「ほれ、よく見ろ。これはアンヤカシュといっての、茎がうまい。で、こいつがニルヘイルという根っこがうまい植物じゃ」
「師匠、それは何語ですか?」
単語が全く聞いたことないんですけど。
「え? ……ああ、そうじゃったの。アンヤカシュは精霊語で、ニルヘイルが妖精語じゃったかの?」
「全く違う言語なんですけど」
「そりゃそうじゃろ。神代語にも魔族語にもこの山菜を表現する単語はないしの。だから他の種族の言語を借りてきているのじゃよ。ちなみに、あれは山芋じゃ」
山芋はあるのか……。つまり、謎の固有名詞を使用する植物はこのゲームに独自に存在する植物ということなのだろうか。
「白っ! ニルヘイル白っ! 白いゴボウだこれ!」
マナトが掘り出したニルヘイルは確かに真っ白なゴボウである。なんだこれ。面白い植物である。
「よく、葉や茎の形は覚えておくといいぞ」
「匂いも覚えておいたほうがいいじゃろうな」
「そうだね」
祖父ちゃんたちはそういうと、鼻を茎や根に近づけ、匂いを嗅いでいる。たしかに、狼の獣人がこれを活用しない手はないな。
俺も同じように匂いを嗅ぐ。ふむ、ゴボウに少し甘いにおいがする。甘いゴボウ? 面白そうな味である。おいしそうとは思っていない。だが、師匠が教えてくれたものなのだからおいしいのだろう。まあ、これを調理するのは女性陣なのだ。そこは任せるとしようかな。
《只今までの行動により【嗅覚強化】がレベルアップしました》
ふむ、レベルアップしたか。そういえば、ステータス開いてないな。今はどんなスキルを覚えているか整理する必要があるのかね?
……いや、レベルアップしてからでいいか。まだ俺自身はレベル1だからな。
しばらく歩いきながら、食べられる山菜を教えてもらい、色形、匂いを覚えながら【嗅覚強化】がもう一度レベルアップしたところ。
《只今までの行動により【鑑定】を習得しました》
「なんか出たね」
父さんが反応する。これは全員出ているのかな? そんな気がする。
「【鑑定】か。定番なスキルなのかな?」
「あ、アイテムの名前が見れるぞ」
「品質とかは?」
「わからない」
マナトは残念そうに答える。
「そりゃそうじゃろう。わしはまだ品質のいい山菜の見分け方を教えておらんからの」
師匠のその発言で俺たちはみな固まった。きっと、頭の中で今の師匠の言葉の意味を真剣に考えているのだろう。俺だって考えているのだ。
品質のいい山菜の見分け方を教えていない。この意味はどういうことか? これ、品質の見分け方を知らないと、鑑定でアイテムの品質の項目が出ないのではないだろうか? しかも、アイテムごとにどういうものが質がいいのかというのは変わってくる。つまり、すべてのタイプの品質の見分けを最低一度は目にしておく必要があるのだ。おそらくはそういうことだ。
現に今俺が手に持っているものを見てみる。
【オラシエーナ(鬼人語)】
ミカンに似た木の実。皮をむくとハチミツの匂いがする
そう、俺が知っていることしか出ないのである。つまり、図鑑をよく読み込んでどんなアイテムがあるのか知っておく必要があるということなのだろう。運営は頭がおかしい。汎用スキルですら、難易度が高い。
「これは……えぐいなあ」
父さんは頭を搔いている。こればっかりはしょうがない。俺だって同じ気持ちなのだからな。
「ほれ、立ち止まらないで先へ行くぞ。まだまだ先は長いぞ」
師匠に言われて【鑑定】についての考察を一旦やめて、後に続く。こればっかりはどうしようもないのだ。
して、しばらく師匠に続いていくと、開けた場所へと出る。日の光が気持ちがいい。先ほどまでは木漏れ日でしかなかったからな。
「あ、泉だ」
ユウトの指さす先には泉がある。中を覗いてみるとそこまで見れるほどに透き通っていたのである。
「きれいじゃのう」
祖父ちゃんも泉の水を手ですくって飲んでいる。俺も一口。
「……うまっ」
つい、声が零れ落ちてしまう。日本の天然水より美味いってどんな水だよ、これ。
「なかなかいいところじゃろ?」
確かに。ここは非常に気分がいい。心が落ち着く。少し遠くで狼らしき生き物がいるが、こちらに襲い掛かってくる様子はない。そういうところなのだろう。いいところである。後でかおると一緒に来たいものだ。
……ん? 何かを感じ取った。俺の鼻が。俺は周囲の匂いを嗅ぎ始める。これは……無臭だな。しかし、無臭であると嗅ぎ分けられる無臭である。匂いがない匂いとでもいえばいいのだろうか? そんな不思議な物体があたりにかすかに感じ取れる。これはなんだ?
「兄さんどうしたんだ?」
「なんかある」
「どこに?」
「ここら一帯にだ」
マナトは目を細めて周囲を見渡すが何も見つけられないのか困惑したような顔をする。しかし、俺が何かあるといった言葉を疑っておらず警戒を怠ることはしない。その雰囲気が伝播していき、全員が警戒態勢を敷いている。警戒していないのは師匠ぐらいである。師匠、明らかに俺たちより強いですよね? なんでそこまで余裕なんですか? 強いからですか?
いや、これ……俺の体の表面からも匂うな。どういうことなんだこれ?
俺はしきりに自分の体と空気中の何かを嗅ぎ続けている。ここまで鼻を酷使したのは人生初めてのことだ。しかし、これが気になる。なんなんだこれ?
「なんだこれ?」
ふと、無臭が強くなった。
《只今までの行動により【嗅覚強化】がレベルアップしました》
《只今までの行動により【魔力感知】を習得しました》
……あ。
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