FANTASY WAR ONLINE
第二話
俺は、ほんのわずかでありながら、固まった。
目の前にいる女性は、肌はみずみずしく、目は二重で大きく、しかし、顔のバランスを崩さない慎ましやかな大きさであり、その瞳には知性あふれ、唇は潤んでおり、鼻筋も綺麗に通っており、彼女の意志の強さを表しているかのようである。さらに、瞳から感じられる清純さと、老練さ。その二つが独特の流れによって合わさっているのである。
「どちらさま?」
「ああ、俺は龍血昴流と言う。君は?」
「わたしはメル」
「ここに住んでいるのか?」
「そう。ここがわたしの家よ」
「この家に見惚れてしまってね。どんな人が住んでいるのだろうと思ったが、とてもきれいな女性とは、実に映える」
俺は発言一つ一つに下心を混ぜないよう細心の注意を払っている。そうでもしないと初対面の女性にはすぐ警戒されてしまう。ただから俺は、ただひたすらに穏やかな笑顔をし続けているわけなのだが。おそらく、いや確実に、俺はメルに惚れているだろう。薫を初めて見た時と同じ衝撃が体を突き抜けてしまったのである。龍血の家で良かったと心から思う。
で、今現在、メルはゆっくりと瞳を閉じて何か考えているようである。少し頬が赤い。とても綺麗だ。ただ目を閉じて佇んでいるだけであるというのに。
「ねえ、昴流」
「なんだ?」
「家に上がる?」
「いいのか?」
「ふふ、当然よ。この家の素晴らしさをわかってもらえる人なら大歓迎よ」
「では、お言葉に甘えさせてもらうよ」
メルは上機嫌に俺を家に上げてくれた。先ほどまでの凛とした女性としての雰囲気ではなく、年頃の少女のような柔らかな雰囲気を身に纏っているメルはとてもかわいらしく感じる。
「ああ、ちょっと待ってくれ」
「なに?」
「俺は裸足なんだ。だから、そのまま家に上がると土が入ってしまう」
「あら、そうね。じゃあ、ちょっと待ってて」
しばらく家の奥へと入っていったメルが戻ってくると、一枚の濡れた布と腰かける用の小さな椅子を手に持っていた。そして、椅子を俺の近くへ置く。
「はい、ここに座って」
俺はメルの言う通り椅子に座らせてもらう。
「じゃあ、足をこっちに」
俺は足を向けると、メルは濡れた布でもって、優しく足の汚れを拭いてくれる。俺はメルの顔を見ながらにっこりとほほ笑んでいる。メルがここまでしてくれるのが嬉しくて、顔が緩んでいるともいえるが。ただ、俺はその顔をほほ笑んでいるように矯正している。
メルがこちらへ顔を向けると、ありがとうと、一言いう。すると、メルもはにかんだような笑みを見せるのである。可愛すぎか。
「はい、これで終わり」
「ありがとう、これで綺麗になったよ」
「じゃあ、家に入りましょ」
メルは俺の手を掴んで家へ上がる。俺もメルに引っ張られて家に上がる。メルの肌も、薫と同じぐらいすべすべとして綺麗であった。いや、女子の手はどの手もすべすべなんだけどね。
と、俺が案内されたとこは、テーブルがあり、お互いに向かい合うように座った。
ここは非常に落ち着く。初めて入ったというのに温かい雰囲気というものに満たされており、人の家だというのに、それを感じない。
「ねえ、昴流って異界の旅人よね」
おそらく、プレイヤーの別名であろう。
「ああ、そうだよ。俺は異界の旅人だね。で、それがどうしたの?」
「ううん、異界の旅人のほとんどがもう冒険の旅に出発していて百人も残っていないのよ。だから、今わたしと話しているのが本当に異界の旅人なのか気になってね」
「なるほど、みんなもう旅立ったのか。……まあでも、いまだにここにいるからこうしてメルと話をしていられるわけだから、別に悪いことではないと思うけどね」
「そう? ふふ、ありがとう」
「あ、そういえば、なんでメルは今この地に残っている人の数がわかるんだ?」
そもそも、この地になんで住んでいるのかも気になるが。
「あら、そうね。わたしが神様だからよ」
「創造神様?」
「違うわ。創造神様は、男性だし、この地にはいないわ。わたしは文武の神様。他の特化した神様よりは弱いけど、スキルの習熟が早まったり品質のいい作品が作りやすくなったりする加護を与えられるわよ」
「そうか……メルは神様なのか」
「あ、でも……別に様は付けないで。昴流に様付けされて呼ばれたくないわ」
「ああ、別にメルに様付けをしたりしないさ。別に敬ってないわけじゃない。でも、様付けで読んだら、メルとの距離が離れる気がするからね」
「そうでしょ! わたしも、天使たちに様付けで呼ばれたりするけど、なんか寂しいのよ。呼び捨ては全員神様仲間だけど、そう毎日も会うわけじゃないし……」
「いつも一人なのか? だったら、いつもはどうしているんだ?」
「あ、じゃあ見せてあげるわ。ちょっと待ってて」
メルは再び、奥へ引っ込みいくつかの箱を持って来て帰ってきた。
「これは?」
「わたしの趣味。開けてみて」
一つ箱を取って、開けてみると。そこには小さな宝石で作られたアクセサリーが入っていた。俺がとった箱にはネックレスとブレスレットである。
「まあ、細工の神様なんかには遠く及ばないけどね」
「いや、そんなことないと思うぞ。とってもきれいだ」
「ほんと?」
「俺がわざわざ噓をつくか。このアクセサリーは何というか身近にあって落ち着くような温かいアクセサリーだと思う。身に付けて少し着飾りたいときとかに重宝しそうだ」
俺はそういいながら、ネックレスを手に取り、メルの首へ手を回し、ネックレスをかける。
「ほら、きれいだ」
「う、うん。ありがとう」
それは変に主張を行わずにかといって埋もれるような弱さでもない、きれいなバランスの上に成り立っている。
「いつも身に付けたりしないのか?」
「わたしの作品は他の神様が作った作品よりも劣っているから恥ずかしいの」
「でも、俺と一緒にいるときぐらいは付けてほしいな」
「そんなに気に入ったの?」
「ああ、とってもきれいだ」
「変わった人なのね」
「そうか? かわいらしくていいじゃないか。このアクセサリーとかも」
「じゃあ……」
メルは一つの箱の中からネックレスを一つ取り出す。それは飾りなどはなく、小さな宝石が一つ、ついているものであった。
「これをもらって。わたしが初めて作ったネックレス」
「いいのかい?」
「あなたにもらってほしい」
「メル……」
「昴流……」
メルはゆっくりと俺に近づいて、俺の隣の椅子に座る。そして、手に持ったネックレスを俺の首にかける。そして、うっとりとそのネックレスを眺める。
「わたしは、あまり信仰されてないの。すべての武芸にはそれ専門の神様がいるから、わざわざ、わたしに祈りに来る人はいないの。わたしの神殿だけないのよ。だから、こんな森の奥深くに住んでいるの。他の神様もたまに森に住んでいる人はいるけど、こんな辺境に家を構えているのはわたしだけ」
「この家もメルが建てたのか?」
「そう……だから、この家をきれいって言ってくれてうれしかったの。わたしが作ったものはどれも中途半端だから、あなたが初めて褒めてくれた」
「俺以外にも褒める人はいるさ」
「いないわ。だって、わたしのものは地味だもの。豪華じゃないもの。でも、あなたは……昴流はわたしのものを本心からきれいって言ってくれる。すごくうれしい」
「メル……」
「昴流……昴流は旅人なのよね。いずれここからいなくなっちゃうのよね。いや、そんなのいや。ずっとここにいてほしい。わたしとずっとお話ししてほしい。わたしが色んなものを作ってそれを昴流と一緒に鑑賞し続けたい。ね、ここには綺麗なものがいっぱいあるの。明日の夜空は月が二つみえる日なのよ。とってもきれいよ。昴流にも見てほしい。だから、ここにいて?」
俺は、メルの手を握る。メルも俺の手を握りかえす。メルは潤んだ瞳で俺を見つめる。俺も真っ直ぐメルの瞳を見つめ返す。
「昴流、わたしは昴流に一目惚れしたのかもしれないわ。だって、昴流に手を握られるとすっごくドキドキするもの」
「俺もだ、メル。俺もメルに惚れている」
「昴流……」
「ただ、一つ言っておくことがある」
「なに?」
「俺には恋人がいる。将来を誓い合っている。それほどに愛し合っている女性がいるんだ。だから、俺はメル一人だけを愛し続けるわけじゃないんだ。それでも、俺はメルを愛したいし、メルも俺を愛してほしい。我儘だけど、俺と付き合うというのはそういうことなんだ。それでも俺と一緒にいてくれるか?」
「……昴流」
メルは先ほどまでの甘えるような目つきをやめて最初に出会った時の凛とした雰囲気を身に纏って俺の目の前に座っている。俺もその雰囲気に気圧されることなく真っ直ぐメルの前にいる。
「なに?」
「ありがとう。ちゃんと言ってくれて。やっぱり旦那様は昴流以外に考えられないわ」
「そうか?」
「そうよ。……だって、好きな人に隠し事をしないタイプでしょ?」
「ああ、そうかな?」
「だから、昴流がいい。昴流じゃなきゃいや。ねえ、好きよ昴流」
「……俺も好きだよメル。愛してる」
俺たちはゆっくりと近寄り抱きしめ合う。メルのぬくもりは暖かくてとても落ち着くものであった。
「でも、一緒にいる方法はどうするんだ? メルがどんなに望んでも、いずれ俺は旅立つ。どうすればいい?」
メルは頬に手を当てて空を見上げる。何かいい案でも見つかるだろうか。
「じゃあ、常に連絡をとれるようにしましょ。そうすればいつでも昴流とお話しできるし」
「連絡?」
「そ。【交信】って、EXスキルを昴流にあげる。そうすれば好きな時に昴流と話せるようになるわ」
「でもそれじゃあ、顔は合わせられないぞ。それでもいいのか?」
「それは安心して。わたしたち神は神族であり神職なの。わたしは【学術文芸の神】って種族であり【学術文芸の神】って職業でもあるのよ。だから、わたしの跡を継いでくれる人を見つければいいわけ」
「じゃあ、さっきは何を悩んでいたんだ? いずれ会えるじゃないか」
「だって、跡継ぎを見つけるまで昴流と会えなくなっちゃうじゃない。寂しい」
「メル……それは卑怯だ。可愛すぎるよ」
俺はついメルを抱きしめてしまう。
「昴流……好きよ。大好き」
「俺も好きだよメル」
この後しばらく、俺はメルを抱きしめ続けていた。
目の前にいる女性は、肌はみずみずしく、目は二重で大きく、しかし、顔のバランスを崩さない慎ましやかな大きさであり、その瞳には知性あふれ、唇は潤んでおり、鼻筋も綺麗に通っており、彼女の意志の強さを表しているかのようである。さらに、瞳から感じられる清純さと、老練さ。その二つが独特の流れによって合わさっているのである。
「どちらさま?」
「ああ、俺は龍血昴流と言う。君は?」
「わたしはメル」
「ここに住んでいるのか?」
「そう。ここがわたしの家よ」
「この家に見惚れてしまってね。どんな人が住んでいるのだろうと思ったが、とてもきれいな女性とは、実に映える」
俺は発言一つ一つに下心を混ぜないよう細心の注意を払っている。そうでもしないと初対面の女性にはすぐ警戒されてしまう。ただから俺は、ただひたすらに穏やかな笑顔をし続けているわけなのだが。おそらく、いや確実に、俺はメルに惚れているだろう。薫を初めて見た時と同じ衝撃が体を突き抜けてしまったのである。龍血の家で良かったと心から思う。
で、今現在、メルはゆっくりと瞳を閉じて何か考えているようである。少し頬が赤い。とても綺麗だ。ただ目を閉じて佇んでいるだけであるというのに。
「ねえ、昴流」
「なんだ?」
「家に上がる?」
「いいのか?」
「ふふ、当然よ。この家の素晴らしさをわかってもらえる人なら大歓迎よ」
「では、お言葉に甘えさせてもらうよ」
メルは上機嫌に俺を家に上げてくれた。先ほどまでの凛とした女性としての雰囲気ではなく、年頃の少女のような柔らかな雰囲気を身に纏っているメルはとてもかわいらしく感じる。
「ああ、ちょっと待ってくれ」
「なに?」
「俺は裸足なんだ。だから、そのまま家に上がると土が入ってしまう」
「あら、そうね。じゃあ、ちょっと待ってて」
しばらく家の奥へと入っていったメルが戻ってくると、一枚の濡れた布と腰かける用の小さな椅子を手に持っていた。そして、椅子を俺の近くへ置く。
「はい、ここに座って」
俺はメルの言う通り椅子に座らせてもらう。
「じゃあ、足をこっちに」
俺は足を向けると、メルは濡れた布でもって、優しく足の汚れを拭いてくれる。俺はメルの顔を見ながらにっこりとほほ笑んでいる。メルがここまでしてくれるのが嬉しくて、顔が緩んでいるともいえるが。ただ、俺はその顔をほほ笑んでいるように矯正している。
メルがこちらへ顔を向けると、ありがとうと、一言いう。すると、メルもはにかんだような笑みを見せるのである。可愛すぎか。
「はい、これで終わり」
「ありがとう、これで綺麗になったよ」
「じゃあ、家に入りましょ」
メルは俺の手を掴んで家へ上がる。俺もメルに引っ張られて家に上がる。メルの肌も、薫と同じぐらいすべすべとして綺麗であった。いや、女子の手はどの手もすべすべなんだけどね。
と、俺が案内されたとこは、テーブルがあり、お互いに向かい合うように座った。
ここは非常に落ち着く。初めて入ったというのに温かい雰囲気というものに満たされており、人の家だというのに、それを感じない。
「ねえ、昴流って異界の旅人よね」
おそらく、プレイヤーの別名であろう。
「ああ、そうだよ。俺は異界の旅人だね。で、それがどうしたの?」
「ううん、異界の旅人のほとんどがもう冒険の旅に出発していて百人も残っていないのよ。だから、今わたしと話しているのが本当に異界の旅人なのか気になってね」
「なるほど、みんなもう旅立ったのか。……まあでも、いまだにここにいるからこうしてメルと話をしていられるわけだから、別に悪いことではないと思うけどね」
「そう? ふふ、ありがとう」
「あ、そういえば、なんでメルは今この地に残っている人の数がわかるんだ?」
そもそも、この地になんで住んでいるのかも気になるが。
「あら、そうね。わたしが神様だからよ」
「創造神様?」
「違うわ。創造神様は、男性だし、この地にはいないわ。わたしは文武の神様。他の特化した神様よりは弱いけど、スキルの習熟が早まったり品質のいい作品が作りやすくなったりする加護を与えられるわよ」
「そうか……メルは神様なのか」
「あ、でも……別に様は付けないで。昴流に様付けされて呼ばれたくないわ」
「ああ、別にメルに様付けをしたりしないさ。別に敬ってないわけじゃない。でも、様付けで読んだら、メルとの距離が離れる気がするからね」
「そうでしょ! わたしも、天使たちに様付けで呼ばれたりするけど、なんか寂しいのよ。呼び捨ては全員神様仲間だけど、そう毎日も会うわけじゃないし……」
「いつも一人なのか? だったら、いつもはどうしているんだ?」
「あ、じゃあ見せてあげるわ。ちょっと待ってて」
メルは再び、奥へ引っ込みいくつかの箱を持って来て帰ってきた。
「これは?」
「わたしの趣味。開けてみて」
一つ箱を取って、開けてみると。そこには小さな宝石で作られたアクセサリーが入っていた。俺がとった箱にはネックレスとブレスレットである。
「まあ、細工の神様なんかには遠く及ばないけどね」
「いや、そんなことないと思うぞ。とってもきれいだ」
「ほんと?」
「俺がわざわざ噓をつくか。このアクセサリーは何というか身近にあって落ち着くような温かいアクセサリーだと思う。身に付けて少し着飾りたいときとかに重宝しそうだ」
俺はそういいながら、ネックレスを手に取り、メルの首へ手を回し、ネックレスをかける。
「ほら、きれいだ」
「う、うん。ありがとう」
それは変に主張を行わずにかといって埋もれるような弱さでもない、きれいなバランスの上に成り立っている。
「いつも身に付けたりしないのか?」
「わたしの作品は他の神様が作った作品よりも劣っているから恥ずかしいの」
「でも、俺と一緒にいるときぐらいは付けてほしいな」
「そんなに気に入ったの?」
「ああ、とってもきれいだ」
「変わった人なのね」
「そうか? かわいらしくていいじゃないか。このアクセサリーとかも」
「じゃあ……」
メルは一つの箱の中からネックレスを一つ取り出す。それは飾りなどはなく、小さな宝石が一つ、ついているものであった。
「これをもらって。わたしが初めて作ったネックレス」
「いいのかい?」
「あなたにもらってほしい」
「メル……」
「昴流……」
メルはゆっくりと俺に近づいて、俺の隣の椅子に座る。そして、手に持ったネックレスを俺の首にかける。そして、うっとりとそのネックレスを眺める。
「わたしは、あまり信仰されてないの。すべての武芸にはそれ専門の神様がいるから、わざわざ、わたしに祈りに来る人はいないの。わたしの神殿だけないのよ。だから、こんな森の奥深くに住んでいるの。他の神様もたまに森に住んでいる人はいるけど、こんな辺境に家を構えているのはわたしだけ」
「この家もメルが建てたのか?」
「そう……だから、この家をきれいって言ってくれてうれしかったの。わたしが作ったものはどれも中途半端だから、あなたが初めて褒めてくれた」
「俺以外にも褒める人はいるさ」
「いないわ。だって、わたしのものは地味だもの。豪華じゃないもの。でも、あなたは……昴流はわたしのものを本心からきれいって言ってくれる。すごくうれしい」
「メル……」
「昴流……昴流は旅人なのよね。いずれここからいなくなっちゃうのよね。いや、そんなのいや。ずっとここにいてほしい。わたしとずっとお話ししてほしい。わたしが色んなものを作ってそれを昴流と一緒に鑑賞し続けたい。ね、ここには綺麗なものがいっぱいあるの。明日の夜空は月が二つみえる日なのよ。とってもきれいよ。昴流にも見てほしい。だから、ここにいて?」
俺は、メルの手を握る。メルも俺の手を握りかえす。メルは潤んだ瞳で俺を見つめる。俺も真っ直ぐメルの瞳を見つめ返す。
「昴流、わたしは昴流に一目惚れしたのかもしれないわ。だって、昴流に手を握られるとすっごくドキドキするもの」
「俺もだ、メル。俺もメルに惚れている」
「昴流……」
「ただ、一つ言っておくことがある」
「なに?」
「俺には恋人がいる。将来を誓い合っている。それほどに愛し合っている女性がいるんだ。だから、俺はメル一人だけを愛し続けるわけじゃないんだ。それでも、俺はメルを愛したいし、メルも俺を愛してほしい。我儘だけど、俺と付き合うというのはそういうことなんだ。それでも俺と一緒にいてくれるか?」
「……昴流」
メルは先ほどまでの甘えるような目つきをやめて最初に出会った時の凛とした雰囲気を身に纏って俺の目の前に座っている。俺もその雰囲気に気圧されることなく真っ直ぐメルの前にいる。
「なに?」
「ありがとう。ちゃんと言ってくれて。やっぱり旦那様は昴流以外に考えられないわ」
「そうか?」
「そうよ。……だって、好きな人に隠し事をしないタイプでしょ?」
「ああ、そうかな?」
「だから、昴流がいい。昴流じゃなきゃいや。ねえ、好きよ昴流」
「……俺も好きだよメル。愛してる」
俺たちはゆっくりと近寄り抱きしめ合う。メルのぬくもりは暖かくてとても落ち着くものであった。
「でも、一緒にいる方法はどうするんだ? メルがどんなに望んでも、いずれ俺は旅立つ。どうすればいい?」
メルは頬に手を当てて空を見上げる。何かいい案でも見つかるだろうか。
「じゃあ、常に連絡をとれるようにしましょ。そうすればいつでも昴流とお話しできるし」
「連絡?」
「そ。【交信】って、EXスキルを昴流にあげる。そうすれば好きな時に昴流と話せるようになるわ」
「でもそれじゃあ、顔は合わせられないぞ。それでもいいのか?」
「それは安心して。わたしたち神は神族であり神職なの。わたしは【学術文芸の神】って種族であり【学術文芸の神】って職業でもあるのよ。だから、わたしの跡を継いでくれる人を見つければいいわけ」
「じゃあ、さっきは何を悩んでいたんだ? いずれ会えるじゃないか」
「だって、跡継ぎを見つけるまで昴流と会えなくなっちゃうじゃない。寂しい」
「メル……それは卑怯だ。可愛すぎるよ」
俺はついメルを抱きしめてしまう。
「昴流……好きよ。大好き」
「俺も好きだよメル」
この後しばらく、俺はメルを抱きしめ続けていた。
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