あるバーのマスターの話
『CAN YOU CELEBRATE?』
マスターこと粟飯原彰一と遼は一応仲人がわりに、高坂夫妻とその娘の花橘、葛葉や宣子たちと言った常連たちと共にバーで人前式を行った。
入り口ではウェディングベアがお迎えし、受付では花橘と、花橘の父のお店を受け継いだ美鶴がお客をお迎えしている。
「ようこそ」
美鶴の声と共に、遼が作ったと言う、ミニチュアベアのバッジを着ける花橘。
「でも、遼さんって器用ですね~?こんなに小さいミニチュアベアですよ?」
「えっと、花橘ちゃんは、嬉しそうですね」
「頂いたんです!本当に欲しかったんです。で写真を見たら、欲しかったベアで、そうしたらお父さんが、マスターさんに電話を掛けて、このベアをどうやって手に入れれば良いんだろう?って相談したら、遼さんが持っているからって……嬉しくて。それに、お客様にテディベアバッジって可愛いですよ」
「器用ですよね。きっと、うちの祖母が喜びます」
「あ、お父さんが言ってました。美鶴さんはおばあさまが優しいかただって」
頭をかく。
「ばあちゃんっ子で……周囲は変な顔をするんですけど」
「私もおじいちゃんやおばあちゃん大好きです。おじいちゃんは去年なくなったんですけど……おばあちゃんはもうすぐ退院するんですよ」
「それは良かったですね!元気になられたら、ご挨拶に伺いますね。私は本当に新米だったので最初は本当に親父さん……高坂さんに申し訳ないと思っていたのですが、マスターにも励ましてもらって……」
「お父さんは大丈夫だって言ってましたよ?」
花橘は微笑み、入ってきたお客様に声をかける。
「ようこそ、こんにちは」
そして、小さいバーの奥にはドレスを着た遼が出入りはできず、近くに引っ越した新居で宣子とその友人の葛葉が手伝う。
「わぁ、葛葉は6月だったわよね?」
「えぇ……でも、こんな人前式も素敵だわ。それに、純白のドレス可愛い」
「ど、どうしましょう……」
「何を今さら」
宣子は微笑む。
「幸せになったら良いのよ。世界で一番」
先に向かったマスターを追うように、タクシーでバーに向かった。
ドアが開かれると、待っていたマスターが手を差し出す。
「行きましょうか?」
「あ、は、はい!」
腕を組み、自分のお店に入っていく。
「おめでとう!」
「お幸せに!」
招待者たちの声と共に、ライスシャワーが注がれる。
照れくさそうに顔を見合わせながら歩いていく二人。
人前式だったため二人で周囲に結婚を誓いあい、微笑みあう。
「乾杯をするか?」
高坂の一言に、
「あ、ちょっと待ってください。遼が……」
マスターがCDを変えると、遼が歌い出す。
安室奈美恵さんの名曲『CAN YOU CELEBRATE?』である。
『CAN YOU CELEBRATE?』は結婚式で歌われるが、おめでとうとお祝いと言うよりも、『貴方は(私達を)祝福してくれますか?』と花嫁の歌である。
マイクはなく、ただ、マスターと手を繋ぎ、頬を赤くして、笑って歌っている。
幸せに……嬉しそうに歌っている。
声は本当に跳ねるようである。
「上手ね~‼」
葛葉が驚いたように言うと、宣子が、
「上手いのよ。カラオケに行くと楽しいの。レパートリー多いし」
「へぇ~今度私も行きたいわ!それに、高坂さんの奥様の彩和さんと花橘ちゃんですね?」
「主人がお世話になりました。本当に主人は良い友人の皆様に囲まれて……それに、今日はとても素敵ですわね」
「本当に……」
花嫁の声が広がる。
それはバーだけでなく、空にまで届く聖歌のようでもあった。
人前式の後は、けして広くはない店で立食パーティである。
普通と違うのが、カクテルを作るのは新郎であり、できたカクテルを運ぶのは新婦。
花橘だけが未成年だが、ちゃんとノンアルコールのカクテルを、届ける。
「おめでとうございます。遼さん。それに、テディベアをありがとうございます」
「ありがとうございます。それに、テディベアをお譲りできて良かったです。その子は本当に喜んでいますよ」
「良かった……大事にします。でも、本当にお父さんも嬉しそうです。幸せですね」
「……ありがとうございます。幸せです」
「遼」
カウンターから出てきたマスターはカクテルを差し出す。
「マスター……あ、彰一さん、これは?」
「キャロルですよ。『この想いを君に捧げる』と言う意味があります」
頬を赤く染め、もじもじとしていたが、はっと思い出したように、
「じゃ、じゃぁ、彰一さんに私の歌を贈りますね」
と、歌い始める。
先日花橘が伝えた『ハジメテノオト』である。
先程の『CAN YOU CELEBRATE?』とも声質が違い、鼻にかかったような声で可愛らしくコロコロと歌う。
「わぁ……さっきとも違うわ?本当に上手いわ……」
葛葉の目の前では、普段は見せないマスターが本当にほんわかとした微笑みを歌っている花嫁に向けていたのだった。
入り口ではウェディングベアがお迎えし、受付では花橘と、花橘の父のお店を受け継いだ美鶴がお客をお迎えしている。
「ようこそ」
美鶴の声と共に、遼が作ったと言う、ミニチュアベアのバッジを着ける花橘。
「でも、遼さんって器用ですね~?こんなに小さいミニチュアベアですよ?」
「えっと、花橘ちゃんは、嬉しそうですね」
「頂いたんです!本当に欲しかったんです。で写真を見たら、欲しかったベアで、そうしたらお父さんが、マスターさんに電話を掛けて、このベアをどうやって手に入れれば良いんだろう?って相談したら、遼さんが持っているからって……嬉しくて。それに、お客様にテディベアバッジって可愛いですよ」
「器用ですよね。きっと、うちの祖母が喜びます」
「あ、お父さんが言ってました。美鶴さんはおばあさまが優しいかただって」
頭をかく。
「ばあちゃんっ子で……周囲は変な顔をするんですけど」
「私もおじいちゃんやおばあちゃん大好きです。おじいちゃんは去年なくなったんですけど……おばあちゃんはもうすぐ退院するんですよ」
「それは良かったですね!元気になられたら、ご挨拶に伺いますね。私は本当に新米だったので最初は本当に親父さん……高坂さんに申し訳ないと思っていたのですが、マスターにも励ましてもらって……」
「お父さんは大丈夫だって言ってましたよ?」
花橘は微笑み、入ってきたお客様に声をかける。
「ようこそ、こんにちは」
そして、小さいバーの奥にはドレスを着た遼が出入りはできず、近くに引っ越した新居で宣子とその友人の葛葉が手伝う。
「わぁ、葛葉は6月だったわよね?」
「えぇ……でも、こんな人前式も素敵だわ。それに、純白のドレス可愛い」
「ど、どうしましょう……」
「何を今さら」
宣子は微笑む。
「幸せになったら良いのよ。世界で一番」
先に向かったマスターを追うように、タクシーでバーに向かった。
ドアが開かれると、待っていたマスターが手を差し出す。
「行きましょうか?」
「あ、は、はい!」
腕を組み、自分のお店に入っていく。
「おめでとう!」
「お幸せに!」
招待者たちの声と共に、ライスシャワーが注がれる。
照れくさそうに顔を見合わせながら歩いていく二人。
人前式だったため二人で周囲に結婚を誓いあい、微笑みあう。
「乾杯をするか?」
高坂の一言に、
「あ、ちょっと待ってください。遼が……」
マスターがCDを変えると、遼が歌い出す。
安室奈美恵さんの名曲『CAN YOU CELEBRATE?』である。
『CAN YOU CELEBRATE?』は結婚式で歌われるが、おめでとうとお祝いと言うよりも、『貴方は(私達を)祝福してくれますか?』と花嫁の歌である。
マイクはなく、ただ、マスターと手を繋ぎ、頬を赤くして、笑って歌っている。
幸せに……嬉しそうに歌っている。
声は本当に跳ねるようである。
「上手ね~‼」
葛葉が驚いたように言うと、宣子が、
「上手いのよ。カラオケに行くと楽しいの。レパートリー多いし」
「へぇ~今度私も行きたいわ!それに、高坂さんの奥様の彩和さんと花橘ちゃんですね?」
「主人がお世話になりました。本当に主人は良い友人の皆様に囲まれて……それに、今日はとても素敵ですわね」
「本当に……」
花嫁の声が広がる。
それはバーだけでなく、空にまで届く聖歌のようでもあった。
人前式の後は、けして広くはない店で立食パーティである。
普通と違うのが、カクテルを作るのは新郎であり、できたカクテルを運ぶのは新婦。
花橘だけが未成年だが、ちゃんとノンアルコールのカクテルを、届ける。
「おめでとうございます。遼さん。それに、テディベアをありがとうございます」
「ありがとうございます。それに、テディベアをお譲りできて良かったです。その子は本当に喜んでいますよ」
「良かった……大事にします。でも、本当にお父さんも嬉しそうです。幸せですね」
「……ありがとうございます。幸せです」
「遼」
カウンターから出てきたマスターはカクテルを差し出す。
「マスター……あ、彰一さん、これは?」
「キャロルですよ。『この想いを君に捧げる』と言う意味があります」
頬を赤く染め、もじもじとしていたが、はっと思い出したように、
「じゃ、じゃぁ、彰一さんに私の歌を贈りますね」
と、歌い始める。
先日花橘が伝えた『ハジメテノオト』である。
先程の『CAN YOU CELEBRATE?』とも声質が違い、鼻にかかったような声で可愛らしくコロコロと歌う。
「わぁ……さっきとも違うわ?本当に上手いわ……」
葛葉の目の前では、普段は見せないマスターが本当にほんわかとした微笑みを歌っている花嫁に向けていたのだった。
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