【書籍化】マジックイーター 〜ゴブリンデッキから始まる異世界冒険〜
253 - 「プロトステガ攻城戦12―決着」
帝国が誇る最強の空軍――金色の鷲獅子騎士団。
女性のみで構成される彼女たちは、帝国市民の憧れであり、帝国の秩序を守る法の番人でもある。
強敵にも怯まず立ち向かうだけの意思を持つ彼女たちも、今この時ばかりは、自身の無力さに打ちひしがれていた。
「まさか……プロトステガが……」
ワンダーガーデン北部、スペード領で発生した紛争を、圧倒的な武力で鎮圧した不沈の要塞。
それが突如現れた正体不明の空飛ぶ船によって、なす術なく地に墜とされた。
この空飛ぶ船が帝国の所属ではないことは明白であり、それはワンダーガーデンを支配するヴァルト帝国の基盤を覆す事態を意味することに、誰もが気付かされたのだ。
「あの力は危険だ……どこの、一体どこの国の戦力だ……?」
その答えを持つ者はいない。
いや、1人だけ心当たりのある者がいた。
「至急、大鷲獅子に乗った新人――クロを探せ! あいつなら何か事情を知っているはずだ!」
だが、それもすぐ行動に移せずに終わる。
「あ、あれを見ろ! まだ終わっていない!」
プロトステガが墜落した場所から舞い上がる土煙の中から、生き残った一つ目の浮島巨人兵が顔を出したのだ。
巨人は左右を見渡すと、空に浮かぶ大型飛空艇を見つけ、ぴたりと止まった。
そして巨人の眼が紅い粒子を纏うと、大型飛空艇へ向けてそのまま熱光線を放った。
「なっ!?」
紅い光に照らされた彼女たちの瞳が、再び驚きに見開かれる。
巨人から放たれた熱光線は、大型飛空艇を撃墜するに至らなかったからだ。
紅色の光線は、群生色の装甲に沿って後方へと流れると、夜空へと静かに消えた。
「ど、どういうことだ!? あの船は巨人の攻撃が効かないのか!?」
そう驚く彼女たちの顔を、今度は紫色の閃光が照らす。
敵の生き残りを確認した飛空艇の軍団は、反撃とばかりに魔導砲を次々と地上へ放ち、まだ息のある巨人を徹底的に焼き払った。
遠方にいるはずの彼女たちまで熱波が届き、その綺麗な肌や髪をちりちりと焦がす。
だが、今度は誰も声をあげようとはしなかった。
そして、呆然と戦況を見守っていた彼女たちの周りに、ひっそりと忍び寄る影。
最初に異変に気付いたのは鷲獅子だ。
「クォオオオオン!!」
「ど、どうした!?」
「見ろ! あの悪魔達だ!」
「か、囲まれてる!?」
「落ち着け! 私の指示があるまで手を出すな!」
動揺する彼女達の前に、大鷲獅子に跨った黒崖が姿を見せる。
「クロ! これはどういうことだ!? 説明しろ!!」
鷲獅子騎士の1人がそう問い詰めるも、黒崖は涼しい顔で平然と答えた。
「これが全てだ」
「何!?」
「無駄死にしたくなければ抵抗しないことだ」
その言葉に、他の騎士達も声を荒げる。
「貴様ッ! 私達を裏切る気かッ!?」
「まさか他国の手先だったのか!?」
「悪魔に魂を売り払ったか! 愚か者め!!」
だが、それを黒崖は鼻で笑った。
「悪魔に魂を売り渡したのはどっちだ」
「何ッ!? 貴様は何を知っているッ!?」
「どうやらまだ戦況が見えていないようだな。話すだけ時間の無駄だ。拘束しろ」
「ま、待て!!」
大鷲獅子がその黒い翼を羽ばたかせ、騎士達から離れると、ファージ達がすかさず間に入り、その距離を詰めてきた。
「くッ! やむを得んかッ! 全員剣を取れッ!!」
騎士達は絶望的なまでの状況に、苦悶の表情を浮かべながらも、矜恃を見せようと剣を抜く。
だが、次の瞬間、彼女達の顔を七色の光が照らし、その決断を踏み止まらせた。
「なっ……」
矜持を見せようとした最後の意思が、その光景によって急激に勢いを失っていく。
その視線の先には、轟々と燃え盛るプロトステガ跡地上空で、夜空へと舞い上がる色とりどりの光の粒子を取り込むマサトの姿があった。
▼おまけ
【SR】 虹色の鎮魂歌、(虹)、「ソーサリー ― 領域」、[強制マナ回収] [効果発動中に限り、全対象攻撃不可]
「どんな者であれ、死した後の魂の輝きは美しい。その鎮魂歌となれば、悪魔ですら魅力できる。邪魔する者などいないであろう――大賢者ブルース・ワイズ・キャスタピランドア」
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