【書籍化】マジックイーター 〜ゴブリンデッキから始まる異世界冒険〜

飛びかかる幸運

97 - 「新たな力――第三のデッキ」

 空中を漂ってきた魔力マナが、次々に身体へ流れ込んでくる。

 そして、目の前に現れる大量のメッセージ。

 そのメッセージは次々に浮かんでは消えていく――


 《マナ喰らいの紋章 Lv14 解放》
 《マナ喰らいの紋章 Lv15 解放》
 《マナ喰らいの紋章 Lv16 解放》
 《マナ喰らいの紋章 Lv17 解放》
 《マナ喰らいの紋章 Lv18 解放》
 《マナ喰らいの紋章 Lv19 解放》
 《マナ喰らいの紋章 Lv20 解放》
 《マナ喰らいの紋章 Lv21 解放》
 《マナ喰らいの紋章 Lv22 解放》
 《マナ喰らいの紋章 Lv23 解放》
 《マナ喰らいの紋章 Lv24 解放》
 《マナ喰らいの紋章 Lv25 解放》

『(虹×3)マナを獲得しました』
『(虹×3)マナを獲得しました』
『(虹×3)マナを獲得しました』
『(虹×3)マナを獲得しました』

『過去に討伐したモンスターを1枚カード化できます』
『過去に討伐したモンスターを1枚カード化できます』


『新たなデッキが解放されました』


「……あ」


 思わず声が出た。

 すかさずステータスを開く。


<ステータス>
 紋章Lv25
 ライフ 44/44
 *猛毒カウンター1
 攻撃力 99
 防御力 4
 マナ : (虹×20)(赤×3130)(緑x100)
 装備 : 心繋きずなの宝剣 +99/+0
 召喚マナ限界突破11
 マナ喰らいの紋章「心臓」の加護
 自身の初期ライフ2倍、+1/+1の修整


 地味にライフ上限が2増えてる。

 それに猛毒カウンターって何…… ああ、ブードっていう土蛙人ゲノーモス・トードに毒吐かれたんだった。今思えば、ネスがいるときに毒の治療をしてもらえば良かったな。まぁ後でいいか。

 後は…… 赤マナが大量に増えている。だけど、これは流石にインフレし過ぎじゃないだろうか。当分、赤マナには困らなそうだから安心っちゃ安心だけど。

 召喚マナ限界突破も11に増えた。


 そして、新しく解放されたデッキを確認する。



《 新たに解放されたデッキ 》

・デッキ名:礼拝堂警備員

・マナカード (白) 計20枚

・モンスター 計22枚
 → [SR] またたきのスピリットブリンキング・スピリット 1/1 (白x4) 4枚
 飛行
 手札帰還
 精神攻撃Lv1

 → [R] 熟練の薬学者マスター・アポセカリー 1/1 (白x3) 2枚
 ポーション精製

 → [UC] 戦場の癒し手バトルフィールド・メディック 1/1 (白x2) 4枚
 回復魔法Lv1
 魔法障壁Lv1

 → [C] 礼拝堂の癒し手ヒーラー・オブ・チャペル 1/1 (白) 4枚
 回復魔法Lv1

 → [R] 礼拝堂の守護霊ガーディアン・オブ・チャペル  1/1 (白x3) 4枚
 飛行
 物理攻撃無効

 → [R] 神聖なる礼拝堂ホーリー・チャペル 0/3 (白x5) 1枚
 礼拝堂の加護
 魔法攻撃無効

 → [UC] 礼拝堂の高僧ハイプーリスト・オブ・チャペル 1/1 (白x3) 2枚
 回復魔法Lv1
 魔法障壁Lv2

 → [SR] 永遠の蜃気楼エターナル・ドラゴン 6/6 (白x11) 1枚
 飛行
 手札帰還
 物理攻撃無効

付与魔法エンチャント 計4枚
 → [C] 和平の心パシフィスト (白)(1) 2枚
 無力化

 → [C] 神聖な力ホーリーストレンクス  (白) 2枚
 能力補正 +1/+2

簡易魔法インスタント 計10枚
 → [C] 解呪ディスペル (白x2) 4枚
 能力解除ディスエンチャントLv3

 → [C] 天への捧げ物ディヴァイン・オフェリング (白x2) 4枚
 遺物除去回復オフェリングLv1

 → [C] 白妙の秘薬アラバスターポーション (X) ※白マナのみ 2枚
 回復魔法LvX

大型魔法ソーサリー 計2枚
 →[SR] 神の激怒ラース・オブ・ゴッド (X×2) ※白マナのみ 2枚
 全体除去魔法LvX

・アーティファクト 計2枚
 → [UC] 卯の花色のマーブルダイアモンド (2) 2枚
 マナ生成(白)
 生贄時:マナ生成(白)(白)



(礼拝堂警備員って……)


「礼拝堂警備員」デッキとは、マサトの兄が作成したネタデッキの一つだ。元々は、全体除去魔法を多用することで、1対多の交換によりカード・アドバンテージを獲得しつつ、盤面を掌握して勝利するコントロールデッキ――マス・デストラクション(Mass Destruction)系のデッキだったのだが、今では見る影もない構成になってしまっている。

 兄曰く――PSプレイヤースキルが無くとも、家に籠っているだけで、勝手にモンスターが相手を倒してくれる魔法のデッキ。自宅警備員ならぬ礼拝堂警備員。

 魔法攻撃の効かない礼拝堂を建てて、その礼拝堂で引きこもりながら、守護霊や僧侶に守ってもらいつつ、またたきのスピリットによる精神攻撃でじりじり削っていくという、聖職者らしからぬ厭らしいネタデッキだった。いや、見方によっては本質をついているとも言えるのかも知れない。


神の激怒ラース・オブ・ゴッドかぁ…… 懐かしい。でもここで使ったらどうなってしまうのか…… 確か、注ぎ込んだ魔力マナに応じて効果範囲が増えるんだったと思うけど…… おっと、今は目の前の土蛙人ゲノーモス・トードが先だ。詳しくは後で見よう)


 目の前に表示されたウィンドウを念じて消し、地上へと再び目を向けた。


(しかし、すげぇー集まってきたな…… まさかこっちへわざわざ近付いてくるとは思わなかったけど。これはこれで好都合か)


 屋敷から少し離れた場所にある建物の影から、次々と土蛙人ゲノーモス・トードが現れる。

 俺はそれを空に浮かびながら眺めていた。

 屋敷周辺の丘には、土蛙人ゲノーモス・トードがぎっしりと隙間なく集まり、皆こちらへ向けて一様に首を下げている。

 所謂、土下座スタイルである。


(やっぱり効果あったか。ゲノーに念の為聞いておいて助かったなぁ)


 占術士でもあり、土蛙人ゲノーモス・トードの長老であるゲノーから共有された予言。

『種族滅亡の危機に瀕するとき、炎の樹冠を持つ神が天より現れ、我らを新世界へと導く。従わぬ者に未来はない。その身を地獄の業火で焼かれ、魂を喰われることになるだろう』

 聞いたときは驚いた。再現率高っ!って。これを代々聞かされて育った上で、目の前で実現されれば、それは信じない方がおかしいのかも知れない。

 土蛙人ゲノーモス・トードの住処となっていた地下洞窟の一件では、その予言をたまたま再現したことで、その場にいた多数の土蛙人ゲノーモス・トードから忠誠を誓われる運びとなった。

 予言は土蛙人ゲノーモス・トードにとって絶対であり、全ての土蛙人ゲノーモス・トードが知っているらしい。現世で言うところの法律のようなものなのだろうか。だが、予言を信じないという選択肢は彼らには存在しない。また、予言そのものが “信仰対象として崇められる神聖なものでもある” とのことだった。

 といっても、それを話していたのが予言至上主義者のゲノーなので、多少…… いやかなりの偏りが入っているとは思うが……


(この光景を土蛙王に見せたら、奴は同じように降伏したんだろうか…… いや、奴は立場が違うから厳しいか。取り敢えず今はこの大量に侵入してきた土蛙人ゲノーモス・トードをどうにかしよう)


 再び口を開く。


「聞け! 俺はお前達を導く神だ! 」


(あれ? 王だったっけ? まぁどっちでもいいか) 


「この炎の樹冠が何よりの証! 顔をあげ、この証を確と目に焼き付けよ!!」


 一斉に顔を上げる土蛙人ゲノーモス・トード達。

 その瞳には、光り輝く樹冠が一様に写り込んでいた。


 ――ぎゅぎゅぅぅ……


 再び地に頭をつけるように平伏す土蛙人ゲノーモス・トード

 これでこの戦は終いだ。少なくともここにいる土蛙人ゲノーモス・トードは俺に刃向かうことはしないはず。


「お前達に命じる! 全ての土蛙人ゲノーモス・トードにこのことを伝えよ! 逆らう者は殺せ! だが、この街の市民には一切危害を加えるな! それを守れぬ者も殺せ!」


(こいつら…… 頭下げたままで俺の話聞こえてんのかな? もう少し手応えが欲しい……)


「顔をあげよ!」と叫ぶと、再び土蛙人ゲノーモス・トード達が頭を上げた。


(これでよし!)


「仲間の死体を一箇所に集め、負傷している者は全て元の住処へと戻れ! その後のことはゲノーが代わりに伝える! 怪我のない者はここへ残れ! 住処へ帰る前にやるべきことがある! 分かったか!!」

「「「ゲロ、ギュー!!」」」


 一斉に声をあげた。

 それを聞いて満足する。


(さて…… 土蛙人ゲノーモス・トードのことはこれでいいとして、だ。この左手から生えた馬鹿でかい光の木をどうするかだな…… 手を離したら消えるかな? 消えずに落下したら街が火の海になりそうで怖いな…… 地下洞窟の時はどうしたんだっけ…… いや、いいや。空に投げ捨てよう。空なら大丈夫だろ)


「では、行け!!」


 そう叫ぶのと同時に、俺は左手の灼熱の火鞭シアリング・ラッシュを上空へと放った。

 俺の手から離れた光の大木は、そのまま上空へと大量の火花を撒き散らしながら昇っていき――

 空に広がる暗雲を突き破り、そのまま上空に巨大な穴を開け――

 音のない特大の花火のように弾けた。

 その花火は、しだれ柳のように無数の光を垂れ下げ、キラキラと明滅しながら消えていく。

 空に開いた大穴からは青空が覗き、無数の雲の隙間からは、まるで天への階段のように、光の柱が地上へと放射状に降り注いでいた。

 運が良いのか、はたまた悪いのか――その光の柱は、空に浮かぶマサトを照らすように交差している。


(なんだこれ…… 偶然にしては演出が神がかってんな……)


 その光景に、土蛙人ゲノーモス・トードだけでなく、その場にいた兵士や冒険者達までもが平伏した。


(またそれか! もういいって! そんな崇めんな! もう! マジで病み付きになりそうで怖い!)


 身体を駆け巡る全能感に、顔が緩みそうになるのを必死に堪えながら、俺は再び平伏する土蛙人ゲノーモス・トードへ向けて命令を飛ばすのだった。

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