シスコンと姉妹と異世界と。

花牧優駿

【第176話】父と迷子なチビッ子と⑤

 


「おっ、ここがミカヅキ魔道具店か! 良かったぁスンナリ見つかって……」

 なぜ、見つかって安堵したのか。
 独りぼっちにされたからだ。
 ここでは、その辺を簡単に振り返ろうと思う。


 ______以下回想。



『じゃあ、ちゃんと責任持ってご主人様が私を抱いてくださいね? 淫魔を焦らすのですから、それ相応の覚悟をしてくださいね?』

 と、フェリに出し抜かれた俺。
 ドヤ顔までキメられて、悔しいと感じてしまった。
 今となってはここが間違いだったのだが……。
 そろそろまた大通りにぶつかるかな、という所で俺は動いた。

「……」

 無言のまま、再びフェリと腕を組んでいた俺は手をポケットから出し、フェリの頬を両手で優しく包み込む。
 フェリの身体がビクンと跳ね、潤んだ目で許しを乞うかのようにこちらを見上げていた。

「分かった。お前にそこまで言わせたんだから、俺も男の端くれ、責任は取る。十五禁だろうが十八禁だろうが条例だろうがそんなの知らん。行くぞ」

 フェリの手を取り、大人の宿屋へと戻ろうとした。

「……、あ、え、ええええ!??!? いや、あの、その、えっと……」

 どこからかフリーズしていたようだが、途端にフェリの目が泳ぎ出す。

「ほら、俺だって腹括って本音で言ってんだ。な?」

「ほ、本音!? いや、でも、みんなとも……」

「ん?」

「ま、まだ、心の準備がダメです!! 今日のところはこの辺で失礼致しますぅぅぅぅぅぅううう!!!!!!」

 と、逃げられてしまった。______回想終了。




 結局、大人向け通りを抜けた先の大通りにて、馴染みの店(勤務先として)を見つけた俺はミカヅキ魔道具店の場所を聞いてここまで来たわけだ。
「店出てすぐだよ」と言われた時には少し恥ずかしかった。

「フェリと話してた時間含めてもまだ六時にゃなってないよな……。寄ってくか? うーん……」

 五分くらい店の前で悩んでいただろうか。
 さながら、踏ん切りの付かない強盗犯のようだったかもしれない。

「お兄ちゃーん!!」

 唐突に聞き慣れたフレーズが耳に届き、ふと振り返る。

「お、こんな所でどしたロー……ズぁぁぁぁぁああ?」

 赤い髪を携えたその少女が勢いよく走り込んで来た。
 が、その勢いは衰えることを知らず。

「ちょ、待っ______」

 まるで軽トラにはねねられたかのように吹っ飛ばされ、店の扉を突き破って中へ雪崩れ込んだ。
 咄嗟の判断で少女の頭を庇うように抱き抱えたので、そちらに怪我はないだろう。

「いきなりなにすんだよローズ……、ん?」

 誰これ。
 てっきり妹だとばかりその女の子は、少し自分の妹とは様子が異なっていた。
 赤い髪はいい。身長も大して変わらんか。見た目にもローズと同い年くらいだろうか?
 だが、第一に胸が無い。物理的に首から下が無いとかそういうのではない。
 そして第二に、長めの兎のような耳がある。横ではなく上に伸びる方向で。
 以前任務で一緒になった、父さんの隊に所属してたフィーナさんの様な。間違いなく彼女と同じ獣耳族エルーンだろう。
 後は、一瞬見えたネックレスぐらいが特徴と言えるのか?
 結局、どこの誰なんだろう?

「なにすんだよ、はこっちのセリフだと思うんだけど? 最近の強盗犯はこんなにポップな感じで攻めてくるの?」

 声のする方を見やると、緑の髪を後ろで纏めた眼鏡の女性が仁王立ち。
 胸のあたりが弾けそうなワイシャツの上からエプロン。その両手にはボクシンググローブという、異様極まりない出で立ちだった。

「遂に来たか、この手の戦闘狂みたいなの……」

「お兄ちゃん、わたしあの人怖い……」

 少女も本能的に怯えているようだ。
 今までこういう好戦的な、高飛車な感じの人出てこなかったもんね。
 いっそエプロン姿なら包丁持ってた方が安全な気さえするけど。グローブ付けてるより。対峙するにあたっては。

「オマエ、その制服騎士校のっしょ?」

「そう……ですけど?」

「じゃああたしの後輩だ。騎士校魔法士課程三年のルナだ。歳は十六。よろしくな」

「ルナさん……。あ、俺は魔法士課程一年の、ショー・ヴァッハウです。歳は十二です」

 まさか、こんなやばそうな人が先輩とは……。

「「!!!」」

「?」

 なんか女子二人に一斉にガン見された。

「ヴァッハウってことはエリーゼと同じ……。弟か?」

「そうですけど……? 姉さんとお友達なんですか?」

「あーいや、そんなに親しいわけじゃないし。ただ彼女は有名人だからな」

「父さんと母さんですか?」

「勿論それもある。が、学校でのあの熱狂的な人気ぶりを見たことあるだろう? それも男女問わずだ。見てるこっちが引いちゃうくらいだし」

 それには大分、姉さんも気疲れしてるみたいだけど。
 疲れている時は服も直さずに「うぁー」と呻きながら、こけしのようにベッドに飛び込んでるし。

「して、そっちのチビッ子は? なんか見覚えが無くもないが……」

 どうしよう、たった今拾った子だなんて言えない。
 変に受け取られたら、俺が誘拐犯扱いされるかもしれないし。

「妹のユイです! 十歳です!」

 勝手に自己紹介してくれた。
 どうやら、ローズの一個下にあたるらしい。
 嘘が無ければだけど。

「妹……? でも耳が……」

「身寄りが無くて、預かって頂いているんです」

 嘘にしてはちょっとガチ過ぎて、後々のフォローが大変そうなんだけど……。

「そっか……。ちょっと軽率な質問だった、許して欲しいし」

 素直にルナさんは頭を下げた。
 さすが武闘家、この辺はサバサバしているというか潔い。

「いえいえ、わたしの方こそお兄ちゃんごと扉を吹っ飛ばしてしまって……」

「壊したの妹なのかよ!?」

「「うんうん」」

「息ピッタリじゃんよ……」

 即席兄妹、そこそこ上手くやれそうな予感ッ。




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