シスコンと姉妹と異世界と。

花牧優駿

【第170話 】北の幸29




 結局、この肩のキスマークは自然になんとかなるものかとフェリに聞くも煙に巻かれ。
 更には「四人と契約してくる。説得は任せて」と言われ置いてけぼりをくらい。

 「(どうしたもんかね、ナビ子……)」

 『(……)』

 「(なんだよ、そんな格好でツーンとしちゃってさ)」

 淫魔サキュバスであるフェリの魔力マナに影響されて姿を象ったからか、今のナビ子はセクシー街道まっしぐら。
 足元のピンヒールが淫魔というより女王サマ感を引き出していたが。

 『(踏みますよ?)』

 喋ったと思ったらこれである。
 中には喜ぶ人もいるんだろうが、生憎俺はそこまで倒錯していない。これでも身体はまだ十二歳なんだ。

 『(わたしという存在がありながら、他の精霊と契約するとはいったいどういう了見なんですかね?)』

 「(いやいやいや、ナビ子も俺と色々共有してるってんならわかるだろ? ほぼ強制的に契約結ばれたんだぞ?)」

 『(キスをされて鼻を伸ばしていたのはどこの誰でしょうか?)』

 「(確かにちょっとは伸ばしたけど!)」

 『(汝の罪を認め懺悔なさい。さすれば全ては赦されるでしょう。具体的には靴を舐めろ)』

 「(お前、俺がそれやったら周りには空中舐めるヤバい奴にしか見えないの分かってるんだろうな? むしろ分かってて言ってるな!?)」

 『(でなければ罰の意味が無いですから)』

 「(取り付く島もねえな……。姉さんと同じで断崖絶壁だ)」

 「むっ……。(ご主人、こちらが貴方の最初の精霊ですか?)」

 女子会を終えてフェリが帰ってきたようだ。
 目線だけを送り俺にテレパシーで質問。
 あからさまに指をさしたりしなかったのは助かった。
 ナビ子のことは誰にも言えない秘密みたいなものだ。ちょこっとモーリスには言っちゃったような気もするけど……。

 「(ああ。他の人には居ることすら知られてないから、上手いこと頼むわ。俺とお前の最初の約束な)」

 「(あん。早速従わせるなんて……、やっぱり貴方を選んで正解だったかも。ものはついでなんだけど、恥ずかしいし普通の服そうでもいいかな?)」

 「(それは断固拒否する。今の恥ずかしくてそこそこエッチな感じで頼む)」

 「(くぅぅ……)」

 こちらから胸を隠すようにフェリは自分の肩を抱いた。
 傍から見たら俺が何かしたと思われるやつやん。

 『(貴方の名前はフェリ、でよろしいのですか?)』

 「(はい。大聖霊様のことはなんとお呼びすれば……)」

 大聖霊様ぁぁぁ!??
 ナビ子のポジションってそんな高位なの!?

 『(こちらのショー様より、ナビ子と呼ばれています。同じように呼んでいただいて構いません)』

 「(分かりました、ナビ子様……)」

 『(様は付けなくても……)』

 とりあえず、精霊二人の間でも上下関係がハッキリと成立したようだ。仲良くやってくれれば言うことない。

 『(ところで。一つフェリさんに頼みたい事があるのだけど……)』

 「(何なりとお申し付けください)」

 『(……、たまにでいいので、お身体を貸していただけませんか? わたしは貴方のように実体化することは叶いません。しかし貴方の身体を借りることで……)』

 「(ナビ子様はその性質上、世界への干渉が制限されているのでしたね……。分かりました。いつでもお貸しします)」

 シンプルに言えば、知り過ぎているからという事だろうか。
 この異世界の仕組みについて。
 まぁ、ナビ子の身体探しも一旦これで解決したわけだし、フェリと契約して良かったのかもしれないな。
 満足したのか、ナビ子は一旦姿を消した。

 「で、姉さんたちとの契約は済んだの?」

 「ええ。簡単な条件ですけどね。あちら四人はわたしの姿をいつでも視認できる、という契約です。その対価として、たまに魔力補給をさせて貰うわけです」

 なんと、女の子同士とな……ッ!
 けしからん……。

 「(したらあれか。ナビ子がフェリの身体使ってる時でも、姉さんたちからは見える化されてるってことか。ま、問題ねえか)」

 「(本当に問題無いのですか?)」

 「(え?)」

 「(わたしたちの愛の魔力補給も、姿を見られる以上堂々とは出来ないのですよ?)」

 「あ! しまった!!」

 「どうしたのお兄ちゃん? 急に大声だして。フェリさんと早速喧嘩でもしたの?」

 ふいに声が出てしまった為に、ローズに怪しまれてしまったようだ。

 「俺をそこらのゴロツキかなんかと思ってないか? ……、隠蔽していませんっ」

 「何も言ってないよ?」

 おっと、つい。
 まるでイマイチな政治家みたいになってしまった。

 「いやな、アリスさんには黙ってて欲しいんだけど。俺、部屋の電気点けっぱなしだし、外の一人露天風呂の蛇口も開けっ放しだったような気がしてな……」

 「ちょっとそれ本当マジ!?」

 いきなりアリスさんに胸ぐらを掴まれた。

 「な、なんで……」

 「視てたし、聴いてたからよ」

 五感の増幅がアリスさんの能力だったもんな……。油断した。

 「アリスさんも、フェリと契約したんすか?」

 「したわよ。ほら」

 そう言いながら服の袖を捲る。あれ?

 「肩……なんすね、印の場所。しかも『仮』って……。おれのこんなんなんすよ!?」

 「あー、それは流石に同情するわ……」

 「お兄ちゃんのえっち……」

 「俺が強要したわけじゃねーよ!?」

 「あー、それは引くわー」

 「アリスさんまで!?」

 「どうした? 何を盛り上がっている?」

 「げ」

 「あ、姉の顔見て『げ』とか言うなっ!」

 垂直落下式拳骨。割れるわ。
 俺の能力チートの『自己再生』は単純な痛みそのものはカバーしてくれない。

 「あらら……、派手にやられちゃったねぇショーくん」

 後ろから頭をさすってくれたサニーさん。
 天使かな?

 「む」

 「む? ばぁぁぁ!?」

 さすっていたはずの手は、俺の頭を包み込んでいた。
 ミシミシと音を立てながら。

 「ほらほら、ご主人様を殺さないで頂戴な」

 「ひゃう!?」

 フェリの手がサニーさんの首筋に触れた。
 その手は青白く発光していた。
 気付けば、頭を潰さんとしていた圧力から解放されていた。

 「『精力吸収ドレインタッチ』よ。わたしの身体で触れた相手から精力を奪うの。わたしと契約したご主人様はこれを使えるようになってるはずよ。あとでナントカカードで確認しておくといいわね」

 「へーい」

 「なかなか便利そうな魔法じゃないか」

 と、姉さんは言うが。
 直接触れなきゃいけないってのは実践において、かなり難しい条件だと思う。
 『精力吸収』を知らないのであればいいが、知っている相手には効いても一回だけだろう。

 「喧嘩仲裁屋とか向いてそうだね。応援するよ、お兄ちゃん!」

 「嫌だよ! 騎士学校初の喧嘩仲裁屋、なんて看板なんか要らねえよ!」

 「……」

 つかつかとサニーさんに近付いていくフェリ。
 一触即発かと身構えると。

 「……ッ!!」

 「アハハハ」

 耳元で何かを囁かれサニーさんは赤面し爆発した。
 起爆させた張本人の悪魔のような笑い声だけが響いた。




 

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