シスコンと姉妹と異世界と。

花牧優駿

【第121話】討伐遠征⑪




 遠征二日目の朝四時半。身体がなんか暑くて目が覚めた。アリスさんが隣で寝ていたからだった、のか? 鍵とか意味無いんかなこの人には。……、マスターキーでも使われた?

 「寝顔って本当にずるいよなぁ。ちょー可愛いじゃんか。痛ッ!?」

 起き上がろうとして腕に体重をかけたら、痛みが電流のように走った。昨日噛まれた左腕だ。

 「とりあえず、汗流してくるかぁ……」


______風呂へステージチェンジ。


 「うげぇ……なんだよこりゃ……」

 長袖だった浴衣を脱ぐと左腕には黒い斑点が浮き上がっていた。

 「そんな内出血してたのか……? バイ菌入っちゃったのかな。クリアオール! ……ダメか消えんわ」

 毒的な何かでは無さそうだし、まいっか。痛いけど。

 扉を開けて風呂に入る。

 「よっ」

 ざばーん! 誰も居ないので飛び込んでみた。

 「朝から元気ね」

 「へ?」

 「またお風呂で一緒になったわね。これって運命?」

 「マリーさんっ。……、すいません」

 明らかに、俺が飛び込んだ飛沫しぶきを浴びて顔がびっしょりになっていた。

 「もう裸見ても動じなくなっちゃったのね。色々経験したのかしら?」

 本人が言う通り女将のマリーさんは裸である。タオルも何も無い。俺もだけど。

 「まだまだ、何もないですって!!」

 「ホントにぃ? って、その手どったのよ?」

 「なんか咬まれてしまって」

 「大丈夫? 痛くない!?」

 「さすがにそうされると、痛みぶっ飛びそうです……」

 両手で左手を持ち上げて心配してくれるから胸から上が全見えである。嬉しさK点超えである。

 「なぁぁあにしてんのおぉぉぉおお!!!」

 「むがぁっ!?」

 顔を勢いよくタオルで縛られる。完全に首から上がミイラ状態になっていることだろう。

 「アリスも朝風呂派だったっけ?」

 「そんなことは良いの! ほらこれ巻いて!!」

 声の主はマリーさんの姪っ子であるアリスさん。起きたら俺がいないもんだから、もしかして捜してくれてたんだろうか。

 「なんでマリー姉ぇが居るのよ……」

 「二人が良かったって? なんか前もサニーちゃんだかそんな感じだったわね」

 「前もあったの!?」

 「あ、これ言っちゃダメだったっけ?」

 「いや、その……」

 「ちゃんとサニーから聞いてますぅー」

 マジすか……。バレとるんかい。てか、サニーさん言っちゃったんか。姉さんとかももしかして知ってるのか? 今更ながらそれはヤバイような。怒られてはないし時効かな?

 「……これ外してくれないんすか?」

 「マリー姉に欲情するからダメ」

 「浴場だけに?」

 「馬鹿!」

 これ、前言った時は結構好評だった気がしたんだけど……。今回は不発だった。

 「あっはっはっはっは!!」

 でもマリーさんには大好評だった。……、歳か?

 「ショーくん面白いねぇ。今度ウチで一席漫談でもやってもらおうかしら」

 「いやぁ、ありがとうございます……」

 逆にここまで持ち上げられると恥ずかしくなってくる。

 「ショーくんも調子乗らないっ。もう……」

 ここから沈黙が五分くらい続いた。

 「さて、温まったし出るか……」

 「待って」

 「サニーさんどうしたんすか?」

 待て、とこの上なくシンプルに捕まった。

 「ショーくんタオルこっちまで持ってきてる?」

 「持ってきてないです」

 「そのまま立ち上がったらさ、わたし達は……その……、ショーくんのショーくんを見せつけられる格好にならない?」

 「あ、あぁー……」

 考えてなかったなぁ。

 「わたしの巻いていっていいから、振り返らずゴー。いい?」

 「わたしのでもいいわよ?」

 「マリー姉もいいからっ! もしかして酔ってるの!?」

 「昨日のが残ってるかもー?」

 「じゃお借りします……」


______。


 そんなこんなで部屋に戻って暫くすると、アリスさんが戻ってきた。俺の部屋だから訪ねてきた、か。 

 「もう、ショーくんっていつもああなの?」

 「いや、偶然だとは思うんですけど……」

 「にしても多過ぎない!? わたしのファーストキスだって……」

 そうでしたね。

 「さっきも、寝顔がどうとか言ってたじゃない?」

 「……あれ、聞いてたんですか!?」

 「もうガッツリ。朝からいい気分だったわよ」

 「もう恥ずかしい……。穴があったら入りたい」

 「一緒に布団入る?」

 「そのうちどうせ姉さんとか来るから止めときましょ? 後が怖いっすよ」

 「ちょっとくらいイイじゃんかぁー、ケチ」

 「寝てる間に潜り込んで来てたんですし、もう十分じゃないですか!?」

 「足りないよー」

 「……はぁ。分かりました分かりましたよ。とりあえず二度寝はまずいから話でもしましょう」

 「やりー」

 止む無く、本当に仕方なく布団に入ることにした。決して俺がそうしたいという訳じゃ無いとわかって欲しい。

 「なんかピロートークみたいな感じ?」

 「何言ってんすか急に!?」

 この後は少し雑談した後に、案の定二人揃って二度寝をしてしまい、強めの注意を肉体的にも精神的にも受けるハメになってしまったのだった。

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