シスコンと姉妹と異世界と。

花牧優駿

【第111話】討伐遠征①




 待ち合わせの午前十時丁度、全員がそれなりに防具を付けたりと武装を整えて勢揃いしていた。

 姉さんは鎧(学校支給品だけど国税入ってるからなのかれっきとした一級品)で身を固めている。頭部には何も付けていないが、付けていたらハガ○ンの弟の方みたいな見た目になってたかも。

 ローズやサニーさん、ヴィオラさんはちょっとした胸当て(3人とも胸当てそのものは小さいが、カップ的な所にはちゃんとゆとりがあるものを選んでいるようだ)と小手を付けている。恐らく魔法メイン故に動きやすさ重視といったところか。それとも可愛さ重視なのか……。

 「俺は学生服の下にプロテクター仕込んでるくらいだけど……」

 俺だけ学生服。はっきり言って浮いた。袖に腕を通さずに肩に羽織るだけにすりゃ多少は様になるかもしんないけど、誤差の範囲だろう。

 「シャロンさんは……なんか怖ぇっすね」

 「そうかな……。でも、これが落ち着くのよ。目立たない分恥ずかしくないから」

 シャロンさんは真っ黒のローブに身を包み、頭の先から爪先まで黒で統一された装備。はっきり言ってむしろ目立つだろう。……、黒魔道士とか暗殺者アサシンが似合いそう。

 「全員準備はいいかなー?」

 ヴィオラさんが皆に問いかける。

 「「「はいっ!」」」

 「じゃ、しゅっぱーつ!!」

 しゅっぱーつ!! との発言とは裏腹にヴィオラさんは学校に戻るように歩き出した。

 「ヴィオラさん、トイレっすか?」

 「ち、違うわよ! 女の子にいきなりそんなこと聞くのは失礼に値するわよっ」

 「あ、すみません。……じゃあなんで学校に戻るんすか? てっきり汽車かなんかで行くもんだと思ってたんすけど」

 「そっか、ショーくんとローズちゃんは知らないのか!」

 「「??」」

 これについてはマジで首を傾げることしか出来ない。

 「お姉ちゃんは何のことか知ってるの?」

 「いや、わたしも知らないよ。心当たりも……まぁ、無いに等しいかな」

 「ほらほらついてきて〜」

 シャロンさんに誘導されるがまま辿り着いたのは副学園長室。副学園長なんか居たことあったか? 見たことないけど……。

 「じゃ、入るわよ〜」

 「「失礼しまーす」」

 俺とローズは何となく挨拶をした。ハモったのがちょっと気恥ずかしい。

 「なんじゃあこりゃ!?」

 いざ入ってみると、目の前には巨大な姿見。しかしその表面には何も映っておらず真っ黒。それどころか、ゆらゆらと波打っている。

 「これはね、ある座標と座標を繋げる魔法が掛けられた鏡よ」

 ヴィオラさんがすぐに説明してくれた。

 「ようするにワープゲートね」

 アリスさんが凄くわかり易いかたちで耳打ちしてくれた。

 「でも、真っ暗ですけど……」

 ローズが俺に続いて疑問をぶつける。現状どこにも繋がってない、ってことなのかね? お先真っ暗じゃん。

 「もう少ししたら向こうの人たちが門を開いてくれるわよ。基本的にこれは受け身だから……。本当はこっちからバンバン開けられれば任務の効率も良いのに、国はケチくさいわよねっ」

 後半部分については聞かなかったことにしよう。

 「ダイヤルの付いてない電話……的な?」

 「ショーくん、なかなか上手いけどわたし以外には分からないかもしれないから減点一よ」

 「がっ……、なんと手厳しい。じゃ雛鳥みたいなもんか」

 「シンプル過ぎてダメね。はい、マイナス一点」

 「ぬぅ……。リミット幾つっすか?」

 「マイナス三点まで」

 おお……、既に瀕死に追い込まれていた。……よし、話し相手を変えよう。

 「サニーさんは見たことあるんですか?」

 「えっ、わっ!?」

 何故かサニーさんは掌をグーパーグーパー開いたり閉じたりしてたので、そこに指を突っ込んでみた。急に何かを掴むことになって驚かせてしまったようだ。

 「あ、ショーくんか……びっくりした。これはわたしも初めて見るよー」

 「やっぱり機密事項的な感じで管理されてたんですかね?」

 「多分そうじゃない? 存在しない筈の副学園長に部屋が割り当てられるってのも変な話だからね」

 「確かに……」

 「……」

 「あの、指をそろそろ解放してやってはくれませんか?」

 「あっ。ごめんごめん」

 サニーさんが俺の指をパッと離す。そこで俺は何故かその指の匂いを嗅いでいた。何故かと問われれば理由を説くことは出来ない。思い付きとか魔が差したとしか言いようがなかった。

 「やめてよっ、なんか恥ずかしいじゃん……」

 女の子らしくなるサニーさんが可愛い……。

 「あっ」

 姉さんの声に皆が反応した。鏡を見るとそこには鮮やかな空の青と、草原の緑が映し出されていた。

 「繋がったみたいね。それじゃいよいよ、魔物討伐に出発よっ!」

 そう言うとヴィオラさんは鏡に向かって歩いて行き、吸い込まれるように消えた。すると鏡の中にヴィオラさんが映り、こちらへ来るようにと手招きしている。

 「じゃあ、わたしも……」

 シャロンさんが静かに続く。

 「よし、私たちも続こう」

 「うんっ」

 それに続いて姉さんも行った。姉さんに続くように俺、ローズ、サニーさん、シャロンさんの順でワープを終えた。

 「おおっ、良く来たなっ!!」

 その先では俺や姉さん、ローズのよく知る男の良く通る声が響いていた。

 

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