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シスコンと姉妹と異世界と。

花牧優駿

【第101話】帰郷⑤




 家を出て4人でお買い物へ。学校から汽車で10分、徒歩で1時間位のところにあるこの住宅街にはあまり商店街というものもない。

 決まって買い物にくるのは、1階が食品や雑貨を取り揃え、2階に服屋が入っているそこそこ大きなお店。俺の第一印象は『いな○や』だった。

 「それじゃ、私は適当に見て回ってるから、食べたいもの決まったら持ってきてちょうだい」

 「「「はーい」」」

 母の号令で各々散らばる。とりあえず俺は肉のコーナーへ。ギューだったりコブシシといったメジャーどころの肉がある。まぁ牛肉と豚肉ってところだ。ブロック状だったり切り落としだったり様々なのが並んでいる。

 その近くに一際異彩を放つものが……。新発売! の文字と共にに『固形香辛料』なるものが笑顔の女性店員さんと共に鎮座していた。

 「いらっしゃいませ! 固形香辛料スパイスキューブがいまオススメですが如何でしょうか?」

 「如何でしょうか、と言われましても……」

 眩しい営業スマイルに思わずたじろいでしまう。

 「この芳醇な香り……まさに宝石箱っ。ほら、嗅いでみて下さい!」

 彦摩呂みたいなこと言い出したぞ。それに嗅がなくても大体想像がつく……。

 「これは……」

 カレールーですよね。そういやアリスさんが前に親父さんの作るカレーがどうこうって言ってたよな……。間違いなく存在するにしたって、こんな形で出てくるとはねぇ。

 「どうです? ビビッと来るものがありませんか? お野菜や肉を炒めて水を入れて煮込んで、これをポンと入れて20分ほどことこと煮込むだけ!」

 「……したら、1つ貰えますか?」

 「お買い上げ、ありがとうございます!! ……、良かったら今度感想聞かせてください。わたしもまだ食べたことないんで。だって怖いじゃないですか、新しいものって」

 「本音ぶちまけ過ぎじゃないっすかね?」

 「本当ならこの場で調理してお客様に毒、じゃなくて味見してもらって買ってもらうのが1番なんですけど、店長さんが聞く耳持たずで……」

 「へぇー、大変すねー」

 愚痴が長引く気がしたのでそそくさと退散。人参、男爵いも、玉ねぎを手に母さんを探した。この世界ではジャガイモは全て男爵いもで統一されている。見た目も呼び名も味も。王様がこのイモを見てとある男爵の顔にそっくりだからその名が付いたらしいけど……。転生した日本人が栽培して男爵いもとして広めたってんならスッとするんだけどな。

 「あら、ショーが最後だったのね」

 なかなか母さんが捕まらずにナビ子に頼って見つけてもらった。同じようなペースでグルグルと一定の間隔を保って回っていたらしい。そりゃ捕まえられないわけだ。

 「あれ?」

 「ショーもそれにしたの? やっぱり姉弟妹きょうだいは似るのかしらね〜」

 そう言う母さんの持つカゴの中には、カレールーの箱が既に2つ。姉さんとローズが入れたってことだ。

 「3つも要らないか……。戻してくるね」

 「別にいいわよ。ある程度乾燥させてあるものなんだし日持ちするでしょうから。それにローズがいるから、多くある分には困らないもの」

 「ははは。確かにそうかも。カゴ、俺が持つよ」

 「あらあら、ありがたいわぁ。最近肩こりがねぇ〜」

 母さんの場合はその胸のせいだろうか。まだまだアラサーであり、そこまで年齢に振り回されるってことも無さそうだし。姉さんが肩こりを訴えたら、剣の振りすぎってことにしておこう。それ以外理由がつけようがないんだから。

 「母さんは何か買いたいものとかないの?」

 「そうねぇ……。どうせ普段ここでお買い物するから特別これといって……。あっそうだわ。上の階で下着が見たいわね。ショーが選んでくれるかしら?」

 「なんで俺が母さんの下着を選ばなくちゃならないのさ!?」

 そんな、母親の下着をあーでもないこーでもないと吟味する息子という存在は、この世界でも初めてだろう。そんな不名誉に輝くつもりは毛頭なかった。

 「だってあの子達に水着を選んであげたんでしょう? かといって今は水着の季節じゃないし……」

 「それなら普通の服でもいいじゃんか!」

 「あら、ショーはわたしの身体のことを隅々まで知ってるというのかしら? 胸、腰、お尻……いつの間に測っていたのね?」

 「いや知らないけど!?」

 「いくら息子が相手でもそういうのは気にするものなの。だから下着の柄を選んでくれたらいいなって。これも親孝行のひとつよ?」

 そんな親孝行なら俺はしなくてもいいと思うんだ……。


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