シスコンと姉妹と異世界と。

花牧優駿

【第98話】帰郷②




 とまあそんなわけで、俺ら一行は母さんを訪ねるべく学校を発ったということ。

 ローズはローブで耳や尻尾を隠して、肉球になりかけた手を手袋で隠している。ローブの内側では、サ○ヤ人のように腰に巻き付けるようにして尻尾を収納というか格納というのかしているのだろうか。さすがにここで腰に手を回して確認しようものなら衛兵にしょっぴかれる可能性が出るのでパス。

 しょっぴかれなくても引っぱたかれるのは確実だし。

 「あっちからいい匂いがする……」

 「どうせ魚の焼ける匂いだろ?」

 「多分……」

 「ネコ化が止まらねーな。ネコまっしぐらだな」

 「まぁ、朝食は済ませてしまったし、昼は母さんと一緒の方がいいだろうからな。今は我慢してくれ」

 「はーい……(ぐぎゅるる……)」

 口と腹とで意見が割れている。嗅覚がネコ側に近付きすぎるとそのうちヒゲもちょーんと生えてくるんじゃないのか? 急いだ方がいいのかもしれないな……。



______。



 「「「ただいま〜」」」

 昼食の前に無事我が家へと到着出来た。ローズもローブや手袋を外してパタパタと手で扇いでいる。ちょっと滲んだ汗がなんともセクスィーだ。セクスィー。

 「あらあら? この声は……」

 奥の方から母さんの声が聞こえた。住み慣れていたはずの我が家だが、家そのものよりも人の声で、帰ってきたんだな、と実感。

 「おかえりなさい。……、あら」

 母さんは後ろに立っていた。ドアが開閉した音もしなかったし瞬間移動の類なんだろうか。それにローズのことも気づいたようだ。

 「あら、いつの間にショーったら背が伸びたんじゃないかしら?」

 「俺の方!?」

 「あらあらエリーゼも……少し胸が大きくなったかしら?」

 それは……。

 「変わってません……お母様……」

 姉さんは悔しいのか悲しいのかよくわからない、どっちとも取れそうな顔で答えた。にしても、もう成長しないのかなぁ……残念。まぁ母も姉も妹も巨乳じゃ、カテゴリの渋滞になっちまうから何かと都合がいいのかもしれないけど。

 「あら〜、ローズの少し分けて貰えばいいんじゃないかしら?」

 「出来ることならそうしてます!」

 「お姉ちゃん……」

 「そういう事、姉さんでも考えてたんだ……」

 「うぅ……。だって、皆と湯浴みする度にわたしが1番……その……、小さいから……。ショーだって母様やローズのように大きい方がいいんだろう?」

 ぐぬぬ……。そんな目で言われると辛い……。

 「そんなことないって! (人によっちゃ需要)アリだと思うよ!!」

 俺の出した答えは、両手で姉さんの両肩を掴み、できるだけ爽やかな笑顔で当たり障りのない言葉をかけることだった。ごめんね姉さん。貴方の愚弟はチキン野郎です、はい。

 母さんがグッと親指を立ててこちらにウインク。良くやった! 的な感じで褒めてくれているんだろう。ちゃんと意味合いが伝わってて良かった。

 「お兄ちゃん的には、私みたいにちょっとだけ人よりも大きい感じのはナシなの……?」

 ローズの健気な兄への疑問は、姉への強烈な猫パンチ(ボディーブロー)となった。姉さんから、ぐふっ、という声が漏れると共に、ゴングの音が聞こえたように感じた。

 「いや……そりゃアリだろ? 父さんがアリだったから俺たち3人がいる訳だし……」

 「まぁ……それもそうかぁ」

 「とりあえず中入っていい? いつまで玄関でこんな話してんだってなもんよ」

 姉さんの胸の話=こんな話。この不用意な発言のツケが後々大きく膨らんで押し寄せることなど、この時の俺には知る由もなかった。


______。



 「で、突然帰ってきたのは、ローズちゃんの身体がどんどんネコちゃんになっていってるから、ってことね?」

 「そういう事なの……」

 気付けばもう手が肉球と爪のそれになっている。

 「ローズは大丈夫なんですか!?」

 「わたし死んじゃうのかな……」

 こういうのって死にはしないようになってるよな……。

 「結論から言えば、大丈夫よ。それはわたしやローズのような赤髪の魔力持ちかつその能力が高い場合に起きうるみたいなの」

 「じゃあローズも母さんくらいの魔法使いになりうる、ってこと?」

 「かもしれないわね〜。いずれは超えてもらわなければ困るのだけど」

 一点の陰りもない晴れやかな笑顔で母さんが語る。やはり親としては子に超えてもらいたいものなんだろうか。

 「じゃあ姉さんも父さんを切り伏せるくらいにならないとね」

 「わかっているさ。……、お前はどうするんだ?」

 「んー、どーしよーねぇ? 俺だけ父さんとも母さんとも髪の色も違って真っ黒だしさ。何処からこの因子が飛んできたんだか分かんないもん」

 「かのシュヴァルツ様も黒髪だったって話もあるから、ショーはシュヴァルツ様の力があるのかもしれないわよ?」

 「でも街中でもたまーに黒髪の人見かけるよ?」

 「……、まぁ、そんなときもあるわよ」

 フォローしきれなかったようである。

 「いいもんね。父さんを超えた姉さんを、母さんを超えたローズを超えれば俺が1番だもんね!」

 「同じ手は2度と食わないぞ?」

 「威力を加減しなくていいならお兄ちゃんには負けないもん!」

 「頼もしい息子だこと。お父さんより格好いいわね」

 「父さんは超えたみたいだから、姉さん、お先に失礼」

 「それとこれとは違うだろう!?」

 「で、わたしはどうしたらいいのかな? このままじわじわとネコちゃんに寄っていくだけだと、明後日とか学校あるんだけど……」

 「自分は猫だー、って思い込めばスッとネコちゃんになれると思うわよ?」

 「でも、なんで母さんやローズはネコになるの?」

 「さあ? わたしにもわからないけど、ネコとか自然に近い存在の姿の方がマナを取り込みやすいって感じはするわよ」

 「では、お母様もネコの姿をした大魔道士になれたりするってことでしょうか?」

 「大魔道士って言うのは大袈裟かもしれないけど……ほら」

 と言うと一瞬母さんの身体を光が包み、中から黒猫が現れた。

 「おお〜」

 「どうかしら?」

 「ちゃんと会話出来るんだね。猫語とかになるのかと思ったけど」

 「ネコちゃんとも話せるわよ? そのへんはまあマナが上手いことやってくれてるんじゃないかしら?」

 「わたしはネコ……、わたしはネコ……」

 「ローズがまるで呪いのようにブツブツと呟き自己暗示をけているッ」

 するとローズは三毛猫になってしまった。信じられないと言わんばかりの面持ちで自分の身体を眺めているのだろうか、服の中でモゾモゾと蠢いている。一通り確認が終わって出てこようとするが、

 「……、お兄ちゃん助けて〜」

 服の袖に身体が詰まっていた。この感じはテレビでよくやってた、可愛いペットの動画特集みたいな番組で見たことある。

 「可愛いなぁ〜」

 「姉さんってそんなにネコ好きだったっけ?」

 とりあえず服の中に手を突っ込んでローズを助けてやり、そのまま抱っこしてみる。

 「こういう毛のもふもふした感じのものは大好きなんだ」

 「お姉ちゃんくすぐったいよぉ〜」

 姉さんに撫でられて嬉しそうな三毛猫ローズ。この2人の絵は萌える。反応が面白いので腕の上で仰向けにしてお腹をくすぐってやった。

 「姉さんも女の子だなぁ……」

 「いいじゃないか! わたしだって……」

 思わず口から漏れ出てしまった。姉さんがわーわー言ってるけどとりあえずスルーで。

 「母さん、これ、2人とも戻れるの?」

 「もちろんよ。ローズちゃん、深呼吸してみて」

 「すー、はー、すー、はー」

 抱っこしているから肺が膨らんだりするのが直に伝わってくる。生きてるんだな〜と実感が湧く。

 「どう? マナに満たされた感じがするでしょう? その状態なら元の人の姿に戻れるから、頭の中で念じてみて」

 「うん!」

 すると腕の中が一瞬光った。正面に座っていた母さんのいた所もピカっとなった。そして、急に腕の中が重くなった。

 「おー戻った……な……なッ!?」

 「あ、お兄ちゃん……何びっくりして……てッ!?」

 母さんもローズも産まれたままの姿になっていた。しかもあろう事か俺の左手はローズの左胸をわしずかみにし、右手でお腹をさすっているではないか。まぁ当然ネコになる上で縮んで服が脱げて、俺の上で元に戻ろうとしたりしてんだから、そりゃそうなるか……。

 「天誅ゥーー!!!!」

 はい、お決まりのブラックアウトでした〜。




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