シスコンと姉妹と異世界と。
【第84話】貸し出し権⑩(サニー編)
「ふぅ……」
俺はどこでこんなハーレム湯けむりルートのフラグ立てをしたのだろうか。そう思わずにはいられないよね……。ねぇ?
とりあえず俺は脱衣場に着くなりササッと脱いで、中の湯船に浸かっていた。露天もあるようだがそれはやっぱりみんなで楽しまないとなんか、申し訳ないし。露天の方には大きめの浴槽、2人くらいで入れる桶みたいな浴槽の2つがある。さすがに泡が出たり腰や首に水流が当たるやつとかは無かった。あるとしたらベンチくらい。
「……………………(蕩)」
なんとなーく、身体中にマナが満たされるような気がする。ねえ、ナビ子さん。
(血行が良くなることで、マナの巡りも良くなるのでしょう)
(マナって血管の中流れてるのか……って!!)
(どうでしょうか?)とナビ子は俺に上目遣いで聞いてくる。その姿はテレビでお風呂に入る女性と同じでタオルを巻いている。ちょっと谷間を出しているあたりがあざとい。
(ボン、キュッ、ボンだと思う……正直クラっとくる。そういやさ、ナビ子って体型維持とか必要なのか?)
(わたしは特には必要ないですよ。仮にショー様がもう少しふくよかなイメージをしたままにわたしを呼べばそうなるかもしれませんね)と、ナビ子が言うので思わず頬が緩んでニヤけてしまった。
(じゃあパーツそのままに身長だけ小さく……)
(妄想がダダ漏れなのですが……。まぁ、そういうのも新鮮で面白いかもしれませんね)
(スマン、今度からは気をつけるから)
(妄想しない方向ではないんですね)と言いながらナビ子も笑う。
(なんか、いいな。ナビ子といると自分が出せるっていうか。解放されるって言うのかな。やっばり事情を知ってくれてるからかなぁ、正直自分を偽る事がなくていいから助かる)と本気で思っている。
(そう、ですね。わたしはショー様が望む限りいつまでも、側で寄り添っていますからね?)
うぇ……、と。泣きの衝動が込み上げてきて、ちょっと溢れそうになってしまった。ので、湯船の中に逃げるように潜った。
(うん……。ありがとう)
(どういたしま)言い切る前に入口の方を指差しながら、(皆様が来られるようですね。エリーゼ様の頑張りの成果をわたしもこの目で確認するとしましょう)
(こうやってテレパシーで会話してるわけだけどさ、サニーさんもテレパシー使えるんだよ。ナビ子との会話がダダ漏れになるってことは無いもんなの?)
(わたしという存在を認識しない限りは無理だと思いますよ。まずサニー様はわたしの声を聴いたことがないので、脳内でそれを再生することがまず不可能です)と断言しつつ、人差し指を立てる。
(わたしの場合はマナから情報を得ますので、音や声ならばショー様の耳で聴いたものが脳に伝わり、脳からマナへ、マナからわたしへと情報として伝わります)次は中指も立てて2つ目の合図。
(マナはショー様もご存知の通り、この世界のどこにでも存在するものです。そしてそれら全てはわたしの感覚器になり得ます)
(というと?)
(探査魔法としてわたしを初めて使った時や森での採集の時に、わたしが何故狂いなく対象の場所を示せたのか。それは空気から地面までがわたしの目となり耳となり、鼻となっているからです。遮るものが無ければ1つのものを360度からの視点で捉えることが出来ます)
(なるほどな)まあまあ納得出来てはいるので、(でもそんな情報をいっぺんに処理し切れるものなのか?)
(そのへんの話はまた後ほど……。ほら、あられもない姿の少女がこちらへ来ますよ)
(言い方がよ……)
「ショーくん待った〜?」と、サニーさんが隣に入ってくるのに続いて、
「お兄ちゃんってばさっさと行っちゃうんだもん」
「お待たせしました……」
「そりゃ一緒に着替えるわけにもいかないだろ、……ねえ? ゾラさん」 
「わたしは別に、まぁもう今更というか……。ショーくんがそうしたいのならそうするけど」
「あらあら〜ゾラは積極的ねぇ。ほらほらお姉さん、恥ずかしがってると弟クン誘惑されて奪われちゃうよ〜ん」
「なっ!? それはまだダメだ! ていうか皆はどうしてそんなに平気そうなんだ!?」
「だってお兄ちゃんだし……」
「海で水着見せてるし☆」
「わたしもそんな感じかな」
「わたしはショーくんに初めてあげてるし……」
「は、初めてって!? えっ!? はわ……」
ステラさんが狼狽えながら顔を真っ赤に染めてボンっとなった。このCではなくAの誤解を解くのには時間を要した。
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