シスコンと姉妹と異世界と。

花牧優駿

【第31話】モチベーション




 いきなりだが、ジャポネ合州国。それがこの国の名前。

 だが俺にとってはまるで思い入れの無い国。故郷は日本だから。まあ親子2代で国にとっての功績を上げれば、その家は貴族として認められる。
 そうなれば、今後続いていくであろう子孫たちの身分は保証されるようになるだろう。それが良いのか悪いのかはイマイチ掴めないのだが。

 姉さんが騎士を目指すのは父への憧れの他に、それがあるようだった。俺は姉さんやローズと居られればそれでいいし、そんな勤勉な心掛けはしていない。

 極論、国がかの有名な魔女様に滅ぼされても、家族さえいればとくに何とも思わないかもしれない。アリスさんとモーリスはいて欲しいけど。

 父さんの地位は現状なんとも微妙な所にある。合衆国騎士団長として認められているが、出自が他の騎士達とは大きく違う。故に国政に干渉したりは出来ないようだった。

 転生したとはいえ、特にやりたいことがあった訳じゃないから、現状目標と言えるものが存在しないのが最近の悩み。モチベーションの維持が極めてしんどくなってきている。

 なんだかんだで特に行き詰まることもなく、そこそこのペースで任務もこなしてきたはずだったが、初任務から半年の今、俺はピンチだった。

 周囲四方八方を10頭以上のコブシシに囲まれている。というより突進されている。バリアーでなんとか凌いでいるものの、攻撃に転じようとしてバリアーを解除した瞬間に突っ込んでくるのが容易に想像できて、ジリ貧に追い込まれていた。

 女性陣3人が今日は買い物に行くと言うので、小遣い稼ぎにと1人で狩りに来たのだが、こんな目に遭うとは思ってもみなかった。ヘイト値が溜まりすぎたのかな……。

 自分を中心に爆発を起こす?

 手足が吹っ飛んでも治る、とはいえ痛みはあるから勘弁だし、万が一そんなシーン見られたら見た人のトラウマにもなってしまう。しかも次の瞬間に元通りになるんだから。

 魔法の並行使用が出来るか試しておくべきだった……。

 以前廃屋内に潜んでいた賊をとっちめた時も、目的地に付いた時点で案内終わってたし。

 「うーん……手詰まり感」

 腕を組んで思考をフル回転させるも突破口が見えない。

 上に飛んでも降下中待たれたら終わるし。

 (ナビ子さん、助けて〜)

 (わたしは物事に干渉出来ませんので……。でも、もしかしたら大丈夫かもしれませんよ?)

 「『かもしれません』ってなぁ……。うん?」

 若干マナの流れが変わった気がした。

 「へ?」

 コブシシの群れを囲うように火の輪っかが発生。当然俺がその中心になる。

 「あ、熱ぃ……」

 ジリジリと肌が焼かれる感触。それが強まると同時に火の輪も段々と狭まってくる。迫ってくる。

 「熱い! バリアあるのに! 誰かさん、俺ごと殺さないで!!」

 何も考えずにコブシシの突進に対してバリアを行使したから、魔法はモロに通しちゃってるらしい。

 「死ぬ……。しかもグロい……」

 遂に火の輪がコブシシに触れる。その距離1m強。断末魔の叫びを上げながら徐々にその身を焼かれる。最期の光景としては最悪だ。

 「もう止めたげて……。溶ける……」

 願いが通じたのか火が消える。焦げて残ったコブシシだった物
に周りを囲まれていた。

 「弟クン、大丈夫!?」

 「え!?」

 そこにはエリーゼ親衛隊の皆様がいらっしゃった。

 「エリーゼお姉様の弟クンでしょ? 怪我はない??」

 「とくには……」

 「全身軽く火傷してるじゃないか。サニー、流石にやり過ぎだぞ」

 そう言いながら俺の肌に触れながら治癒魔法をかけてくれる。

 「シャロンの言う通りです。エリーゼお姉様のお叱りを受けても知りませんよ? 『よくも弟を傷物にしたな!』って」

 「傷物って……」

 「そんな事言わないでよステラ〜。叱られるのはちょっと……。でも、悪くないかも」

 サニーさんやばい人だ。

 「「「「確かに」」」」

 類は友を呼ぶ、ここに極まれり。

 「わたしはセリーヌ。ほんとにもう怪我は無い?」

 「はい、ありがとうございます……」

 「ゾラだ。確かにエリーゼの言う通りだな……」

 姉さんに何を言われたら俺の頭を撫でることに繋がるのだろうか。この人とは他の4人とはちょっと一線を画するものがある。

 「あの……」

 「ああ、ゴメンね。ちょっと心拍が乱れているくらいで、他は本当に問題なさそうだ」

 ゾラさんは一応診てくれてたのか……。

 「ショーくんはどうするんですか? もし帰るなら一緒に帰りませんか? わたし達も皆寮生活ですので」

 「はい。よろしくお願いします」

 ステラさんのありがたい申し出に応える。ただ、歳上のお姉さんにこう囲まれるとどうしても萎縮してしまう。はっきり言って落ち着かないのだ。

 「じゃ、帰りにお茶でもして行こ! あ、もちろんわたし達が奢るよ! その代わりと言っちゃなんだけど、普段のエリーゼお姉様の話とか色々と聞かせて!」

 「「「「(コク……)」」」」

 サニーさんの提案に加え、4人が無言で頷く。拒否権は無さそうだ。

 街へ戻りお茶をしていると、顔を紅潮させた姉さんがアリスさんを引き連れて殴り込みをかけてきた。どうやら俺の声に気付いて話の内容に耳を傾けていたらしい。

 「げ! 姉さん!?」

 「お前は余計なことをペラペラ喋るんじゃない! サニーたちも今聞いたことは忘れろ!!」

 「分かりました。わたしたちは今の話を忘れるし、口外も致しません。そこで、今日のお会計はエリーゼお姉様持ちということでどうでしょう?」

 策士ステラさん。6人分の会計を押し付けるとは。しかも断れない条件だから交渉とも言えない。

 「分かった。それでいい」

 「じゃあ僕のもお願いねー!」

 「アリスは自分で払え!」

 「むー。けちー」

 「お兄ちゃん大所帯だね」

 結局帰りは女子8人、男子1人になり周りの目線を集め続けることになった。


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