シスコンと姉妹と異世界と。

花牧優駿

【第18話】食後の運動は大事②



 「結局、戻ってきちゃったね……」

 「でも、御飯食べに行く時に『目的を忘れるな』なんて言い方するのかなぁ……?」

 「ローズの言う事は一理あるとは思う。厨二病でもこじらせた訳じゃなければ……」

 「厨二病? なんだそれはショー。新手の病なのか? ともかく、ローズの疑問はもっともだな」

 「そしたら、このまま見張ってよーかー」

 「がってん! ってアレ? なんか、何の音もしなくない?」

 ローズに言われて皆が気付いた。確かに、ご飯屋で音がしないのは

 「「おらァっ、見世物じゃねえぞ!! それにさっさとカネ詰めな!!」」

 そうゆうことですよね。なんかこう、単純というか工夫が無い。このまま俺らが後ろから襲ったらどうすんのよ?
 1人が客を威嚇し、2人が店員に金銭を要求している。

 「「腐れ外道めが……」」

 姉妹探偵2人が怖い……。ってうわっ!??!

 客席からナイフが2つ縦回転で飛来。強盗のおっさん達には当たらず、俺らが覗いていた玄関扉に突き立った。どんな力で投げられてんだよ……。

 「誰だ今ナイフなんか投げたやつは! 危ねぇじゃねーか!」

 そう言いながら男は刀を振り回して威嚇する。

 「「お前が危ねぇよじーさん!」」

 レジ前の2人がすかさずつっこむ。連携が上手い。

 「おぅ、お前もボサッとしてんな! 早くしろ! って熱ッ?!」

 ローズが1人のズボンから発火させた。 

 「おい! 水だ! 水を寄越せ!」

 「はーい、水ですね。これ位で如何ですかぁッ!!」

 そう言いつつ、俺が先陣切って店に突入。何も無い所から水が発生し強盗3人を襲う。やり過ぎるとお客さんに被害が及ぶため、客を威嚇していたおじいちゃんの濡れが甘い。レジの女性にも少し被害が。透け感が出ている。申し訳ない。

 「んな!? 誰だ!? ぐはっ……」

 混乱に乗じて加速魔法で突入した姉さんとアリスさんがおじいちゃんを沈黙させた。硬化したグーを鳩尾に、加速させた手刀を首にお見舞いして。

 「ローズ。やるぞ」

 「うん!」

 やるといっても大技をぶっぱなす訳では無い。ただ、おっさん2人に付着した水分を凍らせるだけである。

 「オメエは、さっきのガキ共ォ!! って冷てぇ! う、動けねぇ……」

 多量の水分を含んだ服が完全に凍り付き、まったく身動きを取れなくしている。

 「無理に動こうとしない方がいいですわ。皮膚が裂けて血の海が……」

 ちょっとローズが脅すように声を掛ける。どこか楽しそうなのが今後気掛かりだけど……。

 「「ヒエッ」」

 「ドン引きしてるじゃんか……」

 「何事だ!? ……これは」

 衛兵さんが突入。前もって通行人の人たちにお願いして呼んできてもらっていた。
 伸びたじいさんと半分凍った2人を見てさすがに驚いたようだ。

 「君たちがやってくれたのか。若いのに大したものだ。礼を言わせてもらう。……って君たちは、アレックスさんのところの?」

 ベテラン衛兵さんが思い出したように言う。

 「え? 父を知ってるんですか?」

 「そりゃあ、あの人を知らない衛兵はいませんから」

 若い衛兵が付け足す。

 「エリーゼちゃん、ショーくん、ローズちゃんだったよね? 小さい頃には会ってるんだけどね」

 「「そうだったんですか……」」

 俺もローズも全く知らないから申し訳ない。

 「ほら、先輩。犯人連行して、早く帰りましょう」

 「そうだな。だが凍ってるぞ……」

 「あっちょっと離れてて下さい」

 そう言って衛兵さんたちを下がらせる。

 「よっ……はい!」

 50度強のお湯を頭から被されて氷が溶け、身体が動くようになったおっさん2人がその身体をジタバタさせている。服が密着して熱さが引かないのだろう。

 「見事……それじゃ、俺たちはこいつらを連れていくから。良くやってくれたな」

 「おお、エリーゼちゃんにアリスちゃんだったか! よく似た声がすると思ったら。あれ、でもさっき……? いや、何はともあれよく助けてくれた。ありがとうよ」

 店長さんが衛兵さんたちが出ていったのを見計らって顔を出した。

 「そんな、当然のことをしたまでです」

 「そうだよおじちゃん」

 「いやいや、何か礼をさせてくれ……。そうだ、なんか食べてくか?」

 「先ほど頂いたのでさすがに食べれないです……」

 「……」

 俺が断りを入れると、ローズが黙ってこっちを睨む。いや、フツー食えないからね?

 「そしたら……、今度来た時全部タダでいい! それでどうだ?」

 「のったー!!」

 ローズが叫ぶ。

 「ちょ、ローズ……」

 「ローズちゃん……でもその方が助かるか……」

 「よし、決まりだな!」

 「でもとりあえず、そろそろ帰ろうか……。僕もう疲れたよ〜。ショーくんおんぶして〜」

 「甘えるなアリス。ショーもしなくていいぞ」

 「手繋いで帰ろっ! 途中で途切れちゃったしさっき」

 「そうだな〜」

 「それじゃ、店長さん。また来ます」

 姉さんが頭を下げるので、俺らも一緒になってぺこり。
 そのまま店の外へ。



______。



 「いやーローズの勘も捨てたもんじゃないな」

 「そうかなぁ? へへ〜」

 「あぁ、出なきゃあの店は、そのまま襲われてたかもしれないからな」

 「お手柄だよローズちゃんっ」

 「そんな褒め殺しにしないでぇ〜」

 「さ、寮についたな。やっと帰ってきた……」

 「ショーくん、最初に飛び込んで行く時、凄くかっこよかったよ!」

 「なっ、アリス!?」

 爆弾を落として行くことを忘れないアリスさん。
 俺はこのあと、散々『アリスのあれは冗談だ』『恋愛はまだ早い』とグチグチ言われるハメになった。


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