シスコンと姉妹と異世界と。
【第7話】男の矜持②
「…………大好きだ」 
「なっ、ずるっ…」
「あっ……(一瞬、マナが強くなった!?)」
「しまっ、マナの制御がッ」
思わぬショーの告白に、動揺したエリーゼはマナの制御を失う。ローズにも、エリーゼのマナの暴走が肌で感じられた。
「避けてッ! お兄ちゃぁあん!!!!」
「クソッ、止められんッ。退け!ショー!!」
獅子の子の一閃。剣が剣を断ち切り、勢いままにショーの両の腕、肘から先を消し飛ばした。
ショーの身体が、受け身を取ることなく地に投げ出される。喪失の衝撃か、ショーは既に意識が失われていた。
「お兄ちゃん!!!! う、腕が! そんな、こんなの、わたしには治せないよ!! お姉様! どうして!? どうして…………」
「そ、そんな、そんな…………。う、嘘だ……。わたしが、わたしがショーを、ショーの、未来をッ……
「「うああああァァァッ!!」
姉妹の絶叫と呻き声だけが、修練場に取り残されて響いた。
____________。
「ローズ。ローズ!」
「え、え!? お兄ちゃんの声が……」
「俺だよ。ショーだ。生きてるよ」
「腕! お兄ちゃんの腕が!!」
「あー、その、なんだ。すまん。ちょっと魔法が制御しきれなくて、お前まで巻き込んじまったみたいだな」
「それって、どういう……」
「鍔迫り合いになった時に、俺の声を起点に幻惑魔法を発動したんだ。姉さんが動揺して、姉さんの魔法まで暴走するなんて思いもしなかったから、すげー焦ったけど……」
「お兄ちゃんのばがぁ…………うぅっ」
「ちょ、ローズ泣くなって! ほら、立てるか? 姉さんも起こさなきゃ」
「…………おんぶ。おんぶしてくれたら、許す。」
「んな、大した距離じゃ…………わかった! わかったから、泣かないで! おんぶするから!!(僥倖ッーーー!!)」
「へへー。久しぶりに、お兄ちゃん独占だぁ」
嘘泣きだったのかよ! 柔ら、機嫌治るの早すぎるだろ……。ふわふわ。女の子ってそーゆーもんなのか? 柔らけぇ。背中が。背中ーーーーッ。
「ぅぁ?」
「どったのお兄ちゃん、変な声出して。お姉様起こすんでしょ? わたしは別に、今すぐには起こさないで、お兄ちゃんと……」
「姉さん!! エリーゼ姉さん!! 起きて!! 俺の大事な何かが壊れちゃうから!」
「そんな起こし方じゃ可哀想だよ。ねぇねぇお兄ちゃん。お姉様に、膝枕して起こしてあげて?ビックリさせちゃお!」
とんでもなく悪い顔をしたもんである。もうこの状況を楽しみにかかっている。はぁ……。肝の据わった妹ですこと。
「おーい、エリーゼ姉さーん」ぺしぺし
「おーい」ぺしぺしぺしぺしべしッ←ローズ
「痛ッ……。……ショー!?え、なんで、なんでお前の顔がそこに……!? 膝枕!? は!? ……おまえ、腕は!?」
「2人してどんなグロいの観たんだよ……。さっきのは幻惑魔法だよ」
「幻惑魔法か……。あぁ、良かった……。わたしがお前の未来を奪ってしまったとばっかり……。それに罹ってしまったということは、わたしの負けだな」
「お姉様に何をさせる気なの〜お兄ちゃん?」
「そんな活き活きした目で俺を見るな……」
「完敗だ。お手柔らかに頼む」
「姉さんまで……。…………起動ッ!!」
指パッチンを起点に幻惑魔法を起動。
夜、布団で必死に考えた結果、幻惑魔法の中で姉さんのファッションショーをしようと決めていた。
ローズや母さんと違って、普段から堅い格好ばかりの姉さんの違う一面が見てみたい、と。
手合わせの段階で、ローズも巻き込めることが確認出来てしまったのは、嬉しい誤算だった。
____________。
「ショー、これは……?」
「お兄ちゃん……?」
「ちょっとした魔法の中だよ。2人には、別の国の資料本で見た、すっごい可愛い服を着てもらいたいかなーって」
「「服なんて、どこにも……」」
「せーのっ」パチンっ
「なーーっっ!!」
「うわーお」
「2人とも、スゴイな……(ゴクリ)」
どストレートに、ビキニである。ちょっと、ローズが見せつけているというか、余裕をかましている気がする。姉さんに対して。
「こんな格好させるなんて、聞いてないぞ!」
「まぁまぁお姉様。とてもよくお似合いですよ? これなら3人でお風呂にも入れます!」
「ローズはいいのかもしれないが……わたしはその……ローズとは違って胸が……。これじゃ風呂なんかとても無理だ! 恥ずかしくて死ぬ!! ショー、早くこの辱めを終わらせろ!」
「じゃあ、次ね!」
「次だと!? ……、な、コレは…………(プルプルプルプル)」
「体操着かぁ〜懐かしいね」
まさかサイズ感がこうなるとは。これは世界、神様側の趣味なのか? しっかし……。
「2人とも丈が……」
「お前がやらせてるんだろうが!」
「短いよ〜。おへそ出ちゃうね〜」
体操服によるヘソだしペアルックである(ブルマver)。お尻もぱっつんぱっつん。ローズの方に限っては恐らく、丈は合っているのだが、胸が大きいせいで押し上げてしまっている。
エリーゼ姉さんの締まった脚とローズのおっ○い。暴力的なまでに女性の身体のラインを主張するこの禍々しいフォルム。最高かよ!! ……ふぅ。
「じゃ、最後に! これはダイジョブ!!」
「もう腹は括った……」
「つぎはなにかなー??」
「せーぇの!」
合図で魔法発動。
「これなら…………どう?」
浴衣、である。旅館に置いてあるようなアレではなく、夏休みにお祭り行ったりする時のアレだ。
「存外普通で逆に驚いたよ……」
「……(お姉様のうなじ、美しい。。)」
「エリーゼ姉さんも、ローズも、なんか可愛いな。よく似合ってる。自分でやっといてなんなんだけど」
「な、かわいい!? 褒めてもなんにも出ないんだからな!? もうしらん!!」
「んなプリプリしなくても……。今着てる『ゆかた』を着て祭りを楽しむのが、その国の習わしなんだってさ。この国でも、そういう催し物があれば、3人で出掛けられるんだけどなぁ」
「ふむふむ。。こうなってるのかぁ〜。お兄ちゃん、これお母様に作ってもらう! これならお母様も似合うだろうし、帯を細くすれば寝間着にもなる!」
「ま、まぁコレなら、家の中で着てやらなくも……ない……(かわいいって言われたし……)」
「気に入ってもらえたみたいで良かった、かな? そしたら、修練場に戻るよ」
____________。
「ようやく終わったか……」
「お兄ちゃん、結構向こうで時間経ってたけど、今何時なの?」
「俺が発動ッってしてから、数秒後ってところだな。向こうでの時間は、術者の裁量次第なところがあるのかもしれないな」
「なら、風呂に入って、昼食にしよう。お母様もいないし、ショーが作ってくれ」
「げっ!?そこで寝坊の罰か!」
「じゃあわたしも一緒に作る〜♪」
「……待て! 2人で作るなら、3人も一緒だ!「」
我ながら、今日は悪戯が過ぎた様な気もするが、男として、思春期の願望を詰め込んだ計画が完璧に成就して、俺は満足してい
る。
「ところでショー。あの鍔迫り合いの最中に、お前は魔法を使ったんだったな。どこからが魔法で、どこまでが現実だったんだ?」
「いやー、そのー……(あの言葉を蒸し返すつもりかッ!!)。まぁ、言葉を起点に、魔法を起動しました……」
「ふふっ、そうか……」
「お兄ちゃん、なんて言ったのー?」
「そ、それは姉さんから聞いてくれぇ! じゃ、お先に風呂入ってくる!!」
自分が言った台詞を思い出して、頬がカアっと熱くなる。ので、逃走。
「ねえねえ、お姉様〜。お兄ちゃんはなんて唱えてたんですか?」
「ん〜? 秘密だっ」
 
このショーが行った着せ替え魔法が、この国に『ゆかた』を流行らせることになったり、エリーゼが、ローズの作った水着で、3人で風呂に入らされたりしたのは、また別のお話。
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