ブラックリストハンター ~異世界ルールで警察はじめました~
転生者は二度目の死を恐れるだろうか?
それは一目で自殺とわかる死にざまだった。
―――自殺―――
自殺と言われて何を連想する?
首吊り。薬物の過剰摂取。飛び降りや飛び込み。銃をこめかみに当てたり、口に咥えたり。
魔法のある世界なら、上記以外の画期的な自殺方法があるかもしれない。
どうして、ただの……
『ただの』と言ってしまうのは、いささか不謹慎ではあるが、それにしても『ただの自殺』で遠まわしで回りくどい表現の必要性があるのか?
それは、あまりにも有名な自殺方法であるにも関わらず、現在社会で選択する人はほど皆無な特殊な自殺法だったからだ。
「かっ割腹自殺!?」
悲鳴のような声を上げたのは3人の内の誰だろうか?
神父の異常な死にざまに全員の思考は乱れてしまい、暫く呆然としていた。
神父は地面に座り込み、正座の体勢。
その周囲には血で水たまりができている。
神父の手には十字架……いや、十字架の形をしたナイフをしっかりと握り絞め、自分の腹部に突き立てている。
割腹自殺。つまり……切腹の事だ。
神父は自らの腹部をナイフで切り裂き、自死を行っていたのだ。
「リョウマさん、リョウマさん!あれ!」と加賀がリョウマの腕をパンパンと叩く。
リョウマが加賀を見ると指を指してこう告げた。
「あれって遺書じゃないですか?」
加賀の指差す方向。神父の机の上に洋紙が置かれている。
リョウマは現場を汚染しないように、上着と靴を脱ぐと加賀に持たせる。
指紋も残さないように手袋も着用する。
鑑識も居らず、科学調査も不能の現場で必要があるのか?と脳裏に浮かんだが、解決できなければ明日には本庁から団体さんが到着する予定をリョウマは思い出した。
(容疑者の自殺。これは今日中に解決できる事案ではなくなった……か?)
リョウマは遺体の血を迂回しながら、目的の紙に目を通す。
その内容は、加賀の言う通りの遺書……なのだろう。
『不死身の英雄ユウトの殺害は私、1人の手で行いました。
なぜ、このような大それたことを?と疑問に思う方々は多いかと思います。
それを死と引き換えに告白するには英雄であるユウト氏の名誉を著しく損なうものであり、直接的な動機と言うものを勝手ながら控えさせていただきたい。
最も、私とユウト氏の関係を調べられて、ある事、ない事を後世に残す事も遺憾である。
直接的な動機はともあれ、私がこのような大胆な犯行に至ったのは、神に対する信仰心の消滅である。
神のしもべであるべき聖職者である私は神に対して裏切ったのではない。
裏切ったの神の方である。
神は我々を自ら姿に似せて御造りになられたと言われているが、しかし、どうだろうか?
転生者は神に会ったと言うのだ。
そして彼らはこう続ける。
全知全能であるはずの神が、自身の間違いによって我らを殺したのだと。
果たして神と言う存在は、どういうものだろうか? それが背徳に繋がると分かっていても私の考えは止める事はできず……
そうこの殺人は動機は背信であったのだ
―――カーム・アウラー』
・・・
・・・・・・
・・・・・・・・・
「なんだこれは?」
読み終えたリョウマは軽く引き攣った顔を見せた。
「実際に被疑者を殺した動機は秘密で、神様が悪い?『世間が悪い』や『世の中が悪い』って動機よりも、一回り以上酷いぜ」
リョウマはため息をつき、摘まんだ遺書を加賀とスタンへ見せる。
カーム・アウラーは神父の名前で間違いないだろう。
リョウマたちは、この時、初めて神父の名前を知ったのだ。
「犯人は神父―――いや、カーム・アウラーで間違いないだろう。取りあえず本庁へ連絡だな」
「はい」と勢いよく返事をした加賀はスマホを手にして医務室から離れた。
「……俺も」とリョウマは医務室の外に出て、関係者へ連絡を……
しかし、できなかった。
後頭部を掴まれたような感覚。もちろん、ふり返っても誰もいない。
後ろ髪を引かれるという表現はあれど……
精神的な感覚が物理的な足止めを行うほどの強烈な違和感。
(俺を何を見落としているというんだ?)
いくら考えても答えは出てこない。
(答えはでない?だったら、もっと感覚を言語化して……)
「あの、リョウマさん?」
虚空を見つめ、動きを止めたリョウマの異変にスタンが声をかけた。
「あぁ、スタンか……」と返事はするがリョウマの視点は今も虚空を見続けている。
そして、こう続けた。
「なぁ、スタンよ。果たして転生者ってのは、二度目を死を恐れるのだろうか?」
―――自殺―――
自殺と言われて何を連想する?
首吊り。薬物の過剰摂取。飛び降りや飛び込み。銃をこめかみに当てたり、口に咥えたり。
魔法のある世界なら、上記以外の画期的な自殺方法があるかもしれない。
どうして、ただの……
『ただの』と言ってしまうのは、いささか不謹慎ではあるが、それにしても『ただの自殺』で遠まわしで回りくどい表現の必要性があるのか?
それは、あまりにも有名な自殺方法であるにも関わらず、現在社会で選択する人はほど皆無な特殊な自殺法だったからだ。
「かっ割腹自殺!?」
悲鳴のような声を上げたのは3人の内の誰だろうか?
神父の異常な死にざまに全員の思考は乱れてしまい、暫く呆然としていた。
神父は地面に座り込み、正座の体勢。
その周囲には血で水たまりができている。
神父の手には十字架……いや、十字架の形をしたナイフをしっかりと握り絞め、自分の腹部に突き立てている。
割腹自殺。つまり……切腹の事だ。
神父は自らの腹部をナイフで切り裂き、自死を行っていたのだ。
「リョウマさん、リョウマさん!あれ!」と加賀がリョウマの腕をパンパンと叩く。
リョウマが加賀を見ると指を指してこう告げた。
「あれって遺書じゃないですか?」
加賀の指差す方向。神父の机の上に洋紙が置かれている。
リョウマは現場を汚染しないように、上着と靴を脱ぐと加賀に持たせる。
指紋も残さないように手袋も着用する。
鑑識も居らず、科学調査も不能の現場で必要があるのか?と脳裏に浮かんだが、解決できなければ明日には本庁から団体さんが到着する予定をリョウマは思い出した。
(容疑者の自殺。これは今日中に解決できる事案ではなくなった……か?)
リョウマは遺体の血を迂回しながら、目的の紙に目を通す。
その内容は、加賀の言う通りの遺書……なのだろう。
『不死身の英雄ユウトの殺害は私、1人の手で行いました。
なぜ、このような大それたことを?と疑問に思う方々は多いかと思います。
それを死と引き換えに告白するには英雄であるユウト氏の名誉を著しく損なうものであり、直接的な動機と言うものを勝手ながら控えさせていただきたい。
最も、私とユウト氏の関係を調べられて、ある事、ない事を後世に残す事も遺憾である。
直接的な動機はともあれ、私がこのような大胆な犯行に至ったのは、神に対する信仰心の消滅である。
神のしもべであるべき聖職者である私は神に対して裏切ったのではない。
裏切ったの神の方である。
神は我々を自ら姿に似せて御造りになられたと言われているが、しかし、どうだろうか?
転生者は神に会ったと言うのだ。
そして彼らはこう続ける。
全知全能であるはずの神が、自身の間違いによって我らを殺したのだと。
果たして神と言う存在は、どういうものだろうか? それが背徳に繋がると分かっていても私の考えは止める事はできず……
そうこの殺人は動機は背信であったのだ
―――カーム・アウラー』
・・・
・・・・・・
・・・・・・・・・
「なんだこれは?」
読み終えたリョウマは軽く引き攣った顔を見せた。
「実際に被疑者を殺した動機は秘密で、神様が悪い?『世間が悪い』や『世の中が悪い』って動機よりも、一回り以上酷いぜ」
リョウマはため息をつき、摘まんだ遺書を加賀とスタンへ見せる。
カーム・アウラーは神父の名前で間違いないだろう。
リョウマたちは、この時、初めて神父の名前を知ったのだ。
「犯人は神父―――いや、カーム・アウラーで間違いないだろう。取りあえず本庁へ連絡だな」
「はい」と勢いよく返事をした加賀はスマホを手にして医務室から離れた。
「……俺も」とリョウマは医務室の外に出て、関係者へ連絡を……
しかし、できなかった。
後頭部を掴まれたような感覚。もちろん、ふり返っても誰もいない。
後ろ髪を引かれるという表現はあれど……
精神的な感覚が物理的な足止めを行うほどの強烈な違和感。
(俺を何を見落としているというんだ?)
いくら考えても答えは出てこない。
(答えはでない?だったら、もっと感覚を言語化して……)
「あの、リョウマさん?」
虚空を見つめ、動きを止めたリョウマの異変にスタンが声をかけた。
「あぁ、スタンか……」と返事はするがリョウマの視点は今も虚空を見続けている。
そして、こう続けた。
「なぁ、スタンよ。果たして転生者ってのは、二度目を死を恐れるのだろうか?」
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