ブラックリストハンター ~異世界ルールで警察はじめました~
リョウマの推理
「俺の推理?さらに詳しく話せって意味か?」とリョウマは微妙な笑みを浮かべた奇妙な表情に変わった。
どうやら、自身の推理の評価は低いみたいだ。横から加賀が「恥の上乗りになっちゃいますからね」とからかっている。
しかし―――
「えぇ……ぜひ、お願いします」
スタンの神妙な顔に押されたのか、「推理ってほどのものじゃないんだが……」と観念したかのようにポツリポツリと語り始めた。
「さっき言ったばかりだが、俺が気になったのは2か所だ」
「なぜ、ユウトは試合後に医務室へ行ったのか。なぜ、試合中に自分の能力の説明を始めたのか。この2つですね?」
リョウマは「そうだ」と相槌を打つ。
「前者に関しては戦いによる負傷以外……凍傷の治療かと思ったが違った」
「えぇ、攻撃による二次的な負傷すら、彼のチート能力は防いでました」
「後者に関しては、そういうものかと思っていた」
「そういうもの?ですか?」
「あぁ、こっち側の世界だって戦争中に自己紹介をしてから戦う、名乗り上げってのがある」
「あぁ、私知ってますよ。やーやー我こそはってやつですね」と加賀が横から口をだすも……
「……」 「……」
とスタンとリョウマからは無言でスルーされた。
抗議の声を上げる加賀を、さらに無視して話は進む。
「戦いの最中に自己紹介する文化ですか……似たようなものはありますが、先ほど言った通りに転生者の多くは自身のチート能力を隠したがる傾向がありますね。現にユウト選手は、『不死身』の二つ名は有名でも実際に『無敵』の能力を持っているとは知られていませんでした」
「つまり、被害者も能力を隠していた側の転生者で間違いないな」
「えぇ」とスタンは肯定した。
「俺の疑問というか、わからない点は、この2つに集約されるわけでだが……」
なぜユウトは医務室へ行ったのか?
なぜユウトは試合中に能力の説明をしたのか?
「俺は、こう考えてみた。被害者……ユウトは―――
無敵のチート能力 『無敵の鎧』
そんな能力を持っていなかったんじゃないか?」
ピッタとスタンは足を止め、リョウマの顔を覗き込むように見上げてきた。
その直後、その横の加賀から「ええええぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!?!?」と絶叫が漏れてきた。
「リョウマさん、リョウマさん!そこを否定しちゃうのですか?それ全否定じゃないですか?辻褄が合わないと言いますか、それ矛盾ってレベルじゃねぇぞ?」
加賀はパニック状態と言うよりも狂乱と言った方が良い状態だ。
もう逆にスタンは冷静そのもののように見え、そのまま考え込む。
そんな2人を横目にしながらも、リョウマは続けた。
「いや、現に被害者は『無敵』の力を有していたんだろう。ではないと、加賀のいう通り辻褄が合わない」
「? ? ? 」とクエスチョンマークを浮かべた加賀が「それこそ辻褄が合わないのでは?」と言う。
表情は「何言ってんだ?コイツ?」と雄弁に語っている。間違っても上司に向けてはいけない表情だった。
一方のスタンはぶつぶつと呟き―――
「『無敵』のチート能力は嘘だったとして……『無敵』が能力ではない。でも、『無敵』ではあった……それだと……能力以外の要因で無敵に……あっ!」
そしてリョウマの推理に追いついた。
「まさか、あの鎧が!」
「そう、なんてことはない。『無敵の鎧』は読んで字の如し……着ると無敵になる鎧の事だったんだ」
リョウマの推理を要約すると――――
ユウトが有していたのはチート能力ではなく、チートアイテムだった。
・・・
・・・・・・
・・・・・・・・・
「いやいやいや……」と加賀が両手を振るオーバーリアクションを見せた。
「それはないですよ。だって、あの鎧は準決勝で壊れたじゃないですか!」
確かに加賀のいう通りだ。あの鎧は準決勝のスコーン戦で壊れた。木端微塵に破壊された。
そして、その後もユウトは『無敵』ぷりを披露していた。
わざわざ、自分が無敵だという事を説明して、
わざわざ、スコーンの攻撃を受けて見せて、
ワザとらしく、無敵っぽく勝利してみせた。
「だが、それは―――
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