ブラックリストハンター ~異世界ルールで警察はじめました~
準決勝 ユウトの試合開始
「よく、この体で決勝まで進めましたね」
スタンの診察を済ませた神父は驚きの声を上げた。
「そんなに酷いのですか?」とリョウマが聞くと
「酷いってレベルじゃないですね。前腕の尺骨は折れてますね。あとあばらも……あぁ、これヒビも含めると……なんで、もっと早く医務室に来なかったんですか?」
後半から神父は怒るような口調に変わっていた。
しかし、スタンは慣れているのか、暖簾に腕押し、糠に釘といった感じで
「いやぁ、どうせ治癒魔法で治して貰えるなら、ある程度はダメージをためてからの方が時間の短縮になって良いか……と」
神父を激高させるに相応しい言葉だった。
・・・
・・・・・・
・・・・・・・・・
神父は、その髪と同じ緑色の光を手から発光させてスタンの体、おそらくはケガの個所にかざす。
原理はわからないが、治癒魔法とか、回復魔法とか呼ばれる種類の魔法だろう。
どうして、医務室に神父が?とリョウマは最初に思ったが、治癒魔法の使い手は聖職者というお約束なのだろう。
加えるなら、スタンが1回戦で戦った相手と毛色が違うのは、おそらくは宗教の違いなのだろう。
そう納得した。
「これで治療は終わりました」
終わった?これで!とリョウマは驚いた。
骨折がたった数分で完治したというのか?本来ならドクターストップがかかる負傷のはずが……
しかし、これが当たりまえなのか、スタンと神父はリョウマが何に驚いているのかわからず、不思議そうな表情を浮かべていた。
「まぁ、決勝前に言う事ではないのですが、ケガをしたら次から早く医務室に来てくださいね。骨折の治療だって、変に骨がくっついてしまえば自然に治すよりも遥かに時間がかかってしまうので、甘く見ないこと」
「はい」と元気よく返事をするスタンは見て、神父は「やれやれ」とあきれた感じだった。
「そう言えば、準決勝が始まりますね。ここで見て帰りますか?」
「そうですね。ではお願いします」とスタン。
神父は机の引き出しから取り出したものは、水晶だった。
占い師が持っているような球状のアレだ。
なぜ、水晶を? リョウマは疑問に思ったが、次の瞬間、水晶の上に映像が浮き上がってきた。
まるでプロジェクションマッピングだ。
そして、映像は準決勝の様子。ユウトが入場する場面だった。
試合場に立ったユウトは、すでに入場済みだった対戦相手をじろりと睨む。
それだけで、相手は「ひぃ~」と短い悲鳴を上げた。
ユウトの対戦相手である魔法使い、名前はスコーンと言う。
細身の体を押さえてガタガタと震えている。
彼は小心者だった。
そもそも魔法使いと職業を選んだもの、離れた位置から安全に戦えそうという動機だ。
しかし、彼が取得してて行った魔法は、従来、彼が理想とする離れてから攻撃する火力重視の構成から全く違う構成になった。
いかに相手を騙すか。いかに相手の足を引っ張るか。
なぜ、自分がそういう種類の魔法を取得したのか。それは偏に彼の性格によるものだと、彼自身は気が付いていない。
だが、しかし―――
幸いにもこの武道大会において、その魔法構成こそが理想形だった。
魔力の出力を落とす結界が張られた試合場で、魔法使いはどう戦えばいいのか?
火力でごり押しが通用しないのならば、テクニカルな戦い方が望ましい。
良く言えばテクニカル。
悪く言えば、いかに相手を騙すか。いかに相手の足を引っ張るか。
スコーンが準決勝まで勝ち進む事ができたのは偶然ではなく必然であった。
しかし、観客の多くは魔法職に求める戦い方は、派手で華がある戦い方。
地味な戦い方というよりも、卑怯という方がふさわしいスコーンの戦法。
彼が勝ち進むごとに、彼に送られる声援は減って行った。
そして、準決勝。彼は、普通に戦っていたはずなのに、観客からは悪役のような扱いを受けて困惑していた。
しかも、相手は本来なら戦う事すら叶わない格上の存在である英雄ユウト。
スコーンは恐怖で失神してしまいそうになっていた。
それでも、スコーンの心情など無関係に試合は始める。
試合開始の合図。
銅鑼が鳴り響いた。
スタンの診察を済ませた神父は驚きの声を上げた。
「そんなに酷いのですか?」とリョウマが聞くと
「酷いってレベルじゃないですね。前腕の尺骨は折れてますね。あとあばらも……あぁ、これヒビも含めると……なんで、もっと早く医務室に来なかったんですか?」
後半から神父は怒るような口調に変わっていた。
しかし、スタンは慣れているのか、暖簾に腕押し、糠に釘といった感じで
「いやぁ、どうせ治癒魔法で治して貰えるなら、ある程度はダメージをためてからの方が時間の短縮になって良いか……と」
神父を激高させるに相応しい言葉だった。
・・・
・・・・・・
・・・・・・・・・
神父は、その髪と同じ緑色の光を手から発光させてスタンの体、おそらくはケガの個所にかざす。
原理はわからないが、治癒魔法とか、回復魔法とか呼ばれる種類の魔法だろう。
どうして、医務室に神父が?とリョウマは最初に思ったが、治癒魔法の使い手は聖職者というお約束なのだろう。
加えるなら、スタンが1回戦で戦った相手と毛色が違うのは、おそらくは宗教の違いなのだろう。
そう納得した。
「これで治療は終わりました」
終わった?これで!とリョウマは驚いた。
骨折がたった数分で完治したというのか?本来ならドクターストップがかかる負傷のはずが……
しかし、これが当たりまえなのか、スタンと神父はリョウマが何に驚いているのかわからず、不思議そうな表情を浮かべていた。
「まぁ、決勝前に言う事ではないのですが、ケガをしたら次から早く医務室に来てくださいね。骨折の治療だって、変に骨がくっついてしまえば自然に治すよりも遥かに時間がかかってしまうので、甘く見ないこと」
「はい」と元気よく返事をするスタンは見て、神父は「やれやれ」とあきれた感じだった。
「そう言えば、準決勝が始まりますね。ここで見て帰りますか?」
「そうですね。ではお願いします」とスタン。
神父は机の引き出しから取り出したものは、水晶だった。
占い師が持っているような球状のアレだ。
なぜ、水晶を? リョウマは疑問に思ったが、次の瞬間、水晶の上に映像が浮き上がってきた。
まるでプロジェクションマッピングだ。
そして、映像は準決勝の様子。ユウトが入場する場面だった。
試合場に立ったユウトは、すでに入場済みだった対戦相手をじろりと睨む。
それだけで、相手は「ひぃ~」と短い悲鳴を上げた。
ユウトの対戦相手である魔法使い、名前はスコーンと言う。
細身の体を押さえてガタガタと震えている。
彼は小心者だった。
そもそも魔法使いと職業を選んだもの、離れた位置から安全に戦えそうという動機だ。
しかし、彼が取得してて行った魔法は、従来、彼が理想とする離れてから攻撃する火力重視の構成から全く違う構成になった。
いかに相手を騙すか。いかに相手の足を引っ張るか。
なぜ、自分がそういう種類の魔法を取得したのか。それは偏に彼の性格によるものだと、彼自身は気が付いていない。
だが、しかし―――
幸いにもこの武道大会において、その魔法構成こそが理想形だった。
魔力の出力を落とす結界が張られた試合場で、魔法使いはどう戦えばいいのか?
火力でごり押しが通用しないのならば、テクニカルな戦い方が望ましい。
良く言えばテクニカル。
悪く言えば、いかに相手を騙すか。いかに相手の足を引っ張るか。
スコーンが準決勝まで勝ち進む事ができたのは偶然ではなく必然であった。
しかし、観客の多くは魔法職に求める戦い方は、派手で華がある戦い方。
地味な戦い方というよりも、卑怯という方がふさわしいスコーンの戦法。
彼が勝ち進むごとに、彼に送られる声援は減って行った。
そして、準決勝。彼は、普通に戦っていたはずなのに、観客からは悪役のような扱いを受けて困惑していた。
しかも、相手は本来なら戦う事すら叶わない格上の存在である英雄ユウト。
スコーンは恐怖で失神してしまいそうになっていた。
それでも、スコーンの心情など無関係に試合は始める。
試合開始の合図。
銅鑼が鳴り響いた。
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