ブラックリストハンター ~異世界ルールで警察はじめました~
反射神経の秘密
リョウマの説明は、異なる文化であるスタンとトルニャに向けて、わかりやすくしたものであった。
それをさらに簡単明瞭に直すと―――
2004年 ペプシコーラ主催のペプシ・オールスター・ソフトボールゲーム(注 MLBオールスターゲームとは別物)
アメリカの野球選手―――メジャーリーガーから三振を奪った選手がいる。
その選手はメジャーリーガーでない。さらに言えば、野球選手ですらない。
彼女の名前はジェニー・フィンチ。
2004年 アテネオリンピック 女子ソフトボール金メダリストだ。
話は続く。
この試合を見た1人のメジャーリーガーが彼女への挑戦に名乗りを上げた。
当時、メジャー最高峰の選手と言えるバリー・ボンズである。
簡潔に結果を言えば、ボンズは数十球のストライクに手を出せず、勝負を終えた。
ソフトボールでは野球のマウンドよりも5メートルもホームベースに近い。
そのため、バッターが体感したフィンチの球速は150キロ以上となる。
確かに150キロは速い。 しかし、相手はメジャーリーガーである。
時には160キロの剛速球を相手に戦わなければならないメジャーリーガーがどうして手も足もでなかったのか?
実を言えば、人間の反射神経は野球選手も一般人も大差はない。
人間の脳が体を動かす命令を出し、実際に体が反応する時間は5分の1秒と言われている。
これでは160キロのボールを見てから体を動かすには遅い時間だ。
ではメジャーリーガーと一般人の違いは何か? それは経験則にある。
つまり、投手が投げる前から、自身の脳にストックされている過去のデーターベースから未来予想を行っているのだ。
メジャーリーガーがフィンチに完敗したのも、ソフトボールの投球フォームが彼に取って未経験のものだったからだ。
つまり―――
つまり、要するに、人間は未知の動きに対応できないと言う話だ。
「……なるほど」とトルニャ。
「よくわかりませんが、ユウト選手が逃げ回っているのは、未知の動きに対応できなくなっているという事でしょうか?」
リョウマは頷き、「おそらく」と付け加えた。
そして、試合場の両者を見る。すると、戦いに動きがあった。
逃げ回っていたユウトが剣を腰の鞘に収めたのだ。
リザードマンを含めた、ほぼ全員が、それを敗北宣言だと受け取った。
しかし、ユウトは構え直した。
剣ではなく拳を―――
それを見たスタンが叫ぶように言う。
「徒手空拳!格闘術に持ち込むつもりですか!」
それに対して、リョウマは「いや、正解だ」を返した。
ユウトは身を鎧で包んでいる。
最初から1撃2撃を受けるつもり懐に飛び込んでいけば、リザードマンの剣技に惑わされる事はない。
さらに言えば、鎧に包まれた拳、文字通りの鉄拳は十分すぎるほどの鈍器に変わる。
一方のリザードマンはと言うと―――
「舐めるなよ人間! 大人しく負けを認めれば、まだ可愛げがあるものを!」
素手の戦いで自分に勝つ? 貴様ら貧弱な人間風情が?
組み付けば、ゴミ屑の如く吹き飛ばすこともできるのだぞ!
激高したリザードンは自ら一族が禁じ手にしている技を使用する事も思い浮かんだ。
しかし、紙一重の所で冷静さを取り戻す。
(そこまでするほどでもない……か。奴が突っ込んでくる直前に通常の構えに戻さば……あの程度の鎧ならば貫けるだろう)
そして、ユウトは前に出た。
それをさらに簡単明瞭に直すと―――
2004年 ペプシコーラ主催のペプシ・オールスター・ソフトボールゲーム(注 MLBオールスターゲームとは別物)
アメリカの野球選手―――メジャーリーガーから三振を奪った選手がいる。
その選手はメジャーリーガーでない。さらに言えば、野球選手ですらない。
彼女の名前はジェニー・フィンチ。
2004年 アテネオリンピック 女子ソフトボール金メダリストだ。
話は続く。
この試合を見た1人のメジャーリーガーが彼女への挑戦に名乗りを上げた。
当時、メジャー最高峰の選手と言えるバリー・ボンズである。
簡潔に結果を言えば、ボンズは数十球のストライクに手を出せず、勝負を終えた。
ソフトボールでは野球のマウンドよりも5メートルもホームベースに近い。
そのため、バッターが体感したフィンチの球速は150キロ以上となる。
確かに150キロは速い。 しかし、相手はメジャーリーガーである。
時には160キロの剛速球を相手に戦わなければならないメジャーリーガーがどうして手も足もでなかったのか?
実を言えば、人間の反射神経は野球選手も一般人も大差はない。
人間の脳が体を動かす命令を出し、実際に体が反応する時間は5分の1秒と言われている。
これでは160キロのボールを見てから体を動かすには遅い時間だ。
ではメジャーリーガーと一般人の違いは何か? それは経験則にある。
つまり、投手が投げる前から、自身の脳にストックされている過去のデーターベースから未来予想を行っているのだ。
メジャーリーガーがフィンチに完敗したのも、ソフトボールの投球フォームが彼に取って未経験のものだったからだ。
つまり―――
つまり、要するに、人間は未知の動きに対応できないと言う話だ。
「……なるほど」とトルニャ。
「よくわかりませんが、ユウト選手が逃げ回っているのは、未知の動きに対応できなくなっているという事でしょうか?」
リョウマは頷き、「おそらく」と付け加えた。
そして、試合場の両者を見る。すると、戦いに動きがあった。
逃げ回っていたユウトが剣を腰の鞘に収めたのだ。
リザードマンを含めた、ほぼ全員が、それを敗北宣言だと受け取った。
しかし、ユウトは構え直した。
剣ではなく拳を―――
それを見たスタンが叫ぶように言う。
「徒手空拳!格闘術に持ち込むつもりですか!」
それに対して、リョウマは「いや、正解だ」を返した。
ユウトは身を鎧で包んでいる。
最初から1撃2撃を受けるつもり懐に飛び込んでいけば、リザードマンの剣技に惑わされる事はない。
さらに言えば、鎧に包まれた拳、文字通りの鉄拳は十分すぎるほどの鈍器に変わる。
一方のリザードマンはと言うと―――
「舐めるなよ人間! 大人しく負けを認めれば、まだ可愛げがあるものを!」
素手の戦いで自分に勝つ? 貴様ら貧弱な人間風情が?
組み付けば、ゴミ屑の如く吹き飛ばすこともできるのだぞ!
激高したリザードンは自ら一族が禁じ手にしている技を使用する事も思い浮かんだ。
しかし、紙一重の所で冷静さを取り戻す。
(そこまでするほどでもない……か。奴が突っ込んでくる直前に通常の構えに戻さば……あの程度の鎧ならば貫けるだろう)
そして、ユウトは前に出た。
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