ブラックリストハンター ~異世界ルールで警察はじめました~

チョーカー

第一試合開始

 第一試合 

 選手が試合会場である魔法陣の内部に踏み込んだ。
 まず1人目は女性。1目で魔法使いという事がわかる。
 頭には黒い三角帽子(とんがり帽子)。頭の先は少し折れ曲がっている。
 手は竹ぼうき。そして丸い水晶。 服装はローブ。
 どこからどう見ても魔法使い……と言うよりも魔女。
 しかし、ローブは妙に短い。 本来、ローブはワンピース形式であるはずなのだが、上下が分けられていて、共に丈が短い。
 日本側の感覚で言うならば、へそ出しの超ミニスカート。それもローブの色はピンクに統一されている。
 少し動くだけで上下とも下着がチラと見え、その度に男どもが口笛と雄たけびにような声援を上げる。  
 まるでハロウィンで魔女のコスプレをしているエロカワ系の女の子に見える。
 しかし、彼女はコスプレーヤーではなく本物の魔法使いなのだろう。
 証拠に、片手に持っていた水晶が浮かんでいる。 彼女はソレに腰を掛け、宙に浮かんでいる状態で対戦相手を持っている。

 一方、対戦相手はと言うと?

 普通の男だ。 特に変わった特徴もない。 
 無論、戦士として普通に鍛えられた肉体を持っているが……
 強いて特徴と言うならば、若干、みすぼらしい装備品くらいか?

 いや、ちょっと待て! 

 会場前列の観客達に何かに気づいた。
 それらが周囲に伝わり、徐々にざわめきが起きる。
 そして、観客たちは気づいたのだ。

 デカい!?

 対戦相手の魔法使いと対峙して初めてわかる規格外の巨体。
 その身長は3メートルは遥かに超える。
 亜人の巨人族だ。
 審判ジャッジが投げた大会用剣を受け取ったが、どう見ても短剣にしか見えない。

 まだ収まらない騒めきの中、試合開始を告げる銅鑼ドラが叩かれた。

 会場には野獣の雄たけびに似た怒声が響いた。
 声の主は巨人だ。
 先手必勝と言わんばかりに走り始めた。 
 対する魔法使いは?
 妖艶な笑みを浮かべ、自身に襲い掛かってくる巨人に指を刺した。
 まるで、子供が指でピストルを表現するように、親指を立て、人差し指は巨人を指す。
 いや、実際に日本でピストルをいう知識を得て、見立てているのかもしれない。
 なぜなら、彼女は――――

 「ばきゅーん☆」

 とウインクと共に声を出した。
 それが合図に巨人が倒れた。まるで何かにつまずいたかのように
 走っていた巨体が頭から地面に突っ込んだ衝撃は凄まじく、最前列の観客たちは地震のような地面の震えを感じた。
 そして、観客たちには当然の疑問が浮かぶ。

 一体、何が起きたのか?

 中には八百長を疑う者もいた。
 しかし、そんな考えを浮かべた者たちは、次の瞬間に考えを撤回した。
 転倒により、頭部にダメージを受けた巨人は、それでも戦闘を続けようと体を起こそうとする。
 しかし、彼は見た。
 彼女の周囲には、未知の物体がいくつも掴んでいる。
 そのほとんどが星型やハート型と言ったファンシーで奇妙な形だった。
 それは見た目と違って上位の魔法。
 例えれば、火や氷と言った自然にありふれたモノを再現した魔法とは違い、まだ解明されていない未知の物質エネルギーを魔力によって固定化したもの。
 どんな性質があり、どのような効果があり、どのような威力があり、どのように対策すればいいのか?
 それを知っているのは、熟練の魔法使いでも極少数だろう。
 そんな魔法攻撃を、起き上がろうとする巨人に向けて彼女は発射した。
 落雷時の轟音によく似た音が巻き起こり、攻撃の衝撃で巨人の姿はかき消された。

 「そ、それまで!」

 審判が決着の合図を出した。
 巻き起こった砂埃が収まると、ボロボロになり倒れた巨人の姿が顕わになった。

 「勝者 ソフィア」

 魔法使いの名前はソフィアというらしい。
 圧倒的な力量を見せつけた彼女だったが、試合を終え、退場するまでの間は、観客に向けて投げキスをしたり、ウインクをしたり、様々なポーズと見せて観客を虜にしていた。

 

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