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ブラックリストハンター ~異世界ルールで警察はじめました~

チョーカー

スタン・ザ・オックスフォード

 『ゲート

 メギの中心にそびえ立つ建設物。
 開かれた門の周囲には、青いモヤが漂っていて、門の向こう側――― 
 異世界がどうなっているのかは、見えないようになっている。
 そこに、また1人……
 観光客が異世界へ戻るために門を通って行く。

 「でも、なんで向う側の世界の人たちは中世ヨーロッパ風(?)みたいな恰好なんでしょうか?」
 「なんでって……そりゃ、お前……」

 加賀の言葉に、リョウマは言い淀む。

 なぜ、こちら側で言う中世ヨーロッパ風なのか。

 それを答えるのは簡単な事だ。
 しかし、リョウマの考え出した答えは、非常にデリケートなモノあり、公の場所(少なくとも異世界人が行きかう場所)で言うわけにはいかなかった。
 そのため、誤魔化すように……

 「そりゃ、ヨーロッパと気候が近いから、自然と衣服も近しい物になったのだろうよ。ほら、天然の金髪碧眼がそこら辺にいるって事は色素が薄くても大丈夫な地域って事だ」
 「何か、誤魔化してますよね?目が泳いでますよ?」

 リョウマは「チッ」と舌打ち。
 仕方がなく、加賀を『ゲート』の壁へ押しやる。
 いわゆる壁ドン。……と言うよりも肘ドン状態だ。
 リョウマは他人に聞かれないように加賀の耳元に口を近づけて、可能な限り声のボリュームを落とした。
 加賀の頬には若干の赤みが増したように見える。

 「良いか?よく考えてみろよ。現在の日本からでも、転生や召喚で人材を輸送してた異世界の連中だ。どうして、過去にも同じような事を欧州で行っていたと思わない?」
 「えっ?それは……それじゃ、つまり?」

 リョウマの言葉から重要性がわかったのだろう。
 加賀の顔色は青く染まっていった。

 「向う側の歴史は知らない。だが、彼らが中世ヨーロッパ風の服装をしているという事は、中世ヨーロッパ文化が異世界で流通したと言う事でしかない。それも有能な人材ごとな」
 「それは……あくまでリョウマさんの想像であって……では、数百年の年月で文化レベルが止まっているのはどうしてですか?」
 「文化レベルが止まって見えるだけだ。彼らは我々と違い文明の機械化に頼らずとも、魔法によって文化レベルは我々と同等。あるいはそれ以上だ。転生と言った魂の存在証明を可能にしてる所とかこちら側では追いつけないほど発展しているのだろうよ。
 加賀よ、異世界の闇は深いぞ。1年も向う側について調査している日本政府が、一般側だけじゃなく行政側の俺たちにも情報を流さないのは、俺たちが嫌悪感を抱くような文化差があるのだろう」

 「……でも、それは、やっぱりリョウマさんの憶測にすぎません!」

 不意をつかれた大声にリョウマは驚き、体を仰け反った。
 見た目だけでは少女を言っても通用しそうな若手に、こんなにも強い思いがあるとは思っていなかったのだ。 

 「そうだ。俺の憶測に過ぎぬな。だが……
 この異世界は、憧れていたゲームの世界とは別物だ。異世界であり、同時に現実の世界だと肝に銘じておけ」

 そう言ってリョウマは加賀から離れた。
 加賀からは小さく「……はい」と返事が聞こえた。

 そのまま、互いに気まずい空気が流れた。
 そもそも、この場所にいる理由は待ち合わせだ。
 いくら警察と言っても、2人だけで活動するのには無理がある。
 しかし、現時点で島への上陸を許された警察関係者は両馬景と加賀千里の2人のみ。
 圧倒的な人材不足。それに加え、異世界人の風習や文化に対する経験不足や知識不足は否めない。
 そこで考えられたのは異世界側の警察組織との連携。 向うからの留学という形で協力を求める事になった。
 その人物が、今日、この時間帯にやってくる予定だったのだが……

 「すいません、リョウマ・ケイ署長でしょうか?」

 リョウマ達に話しかけれ来る青年がいた。
 その青年の格好を表現する事は難しかった。
 なぜなら、彼の服装は……

 人々が思い描く勇者像に、とても近いものだったのだ。


 「……」 「……」

 リョウマと加賀の2人は無言だった。
 我に返ったのは、青年が「すいません、人違いですね」と2人から離れようとする直前。
 慌てて、彼を止める。

 青年は恰好は―――
 布の服。 背中にはマントと剣を背負っていた。
 頭部には、金色の額当て。 額の中心に青く光る宝石が輝いていた。
 そして、彼の黒髪は、逆立っているツンツンヘアーだ。

 「今日からお世話になります。スタン・ザ・オックスフォードと言います」
 「どうも、岡山県警察部メギ警察署長 両馬景を言います。こちらの女性は同じくメギ警察署で刑事生活安全課に所属している加賀千里と言います」

 リョウマは名刺を取り出したが、スタンはマジマジと名刺を見つめていた。
 当たり前だが、名刺という文化はないのだろう。 リョウマは無言で名刺をひっこめた。

 「では、今後についてですが……少々、こちらでお待ちいただけますか?加賀、こっちへ来い」

 そのまま、スタン青年から距離を取った。

 「おい、なんだ?あのスクエニの勇者みたいな若者は?」
 「そう仰られても、私はDQ派ではなくFF派なんですよね」
 「なんだと!貴様!日本人なら全員、鳥山先生が好きに決まっているだろ!」
 「お言葉ながら、先ほど『この異世界は、憧れていたゲームの世界とは別物だ。異世界であり、同時に現実の世界だと肝に銘じておけ』とご自身が仰っていたのをお忘れでしょうか?」
 「うるせぇ!今後、深夜の瀬戸大橋に、死者を乗せる列車が目撃されるようになったら、貴様を現場の最前線に配置してやるから覚悟しておけ!」
 「魔列車が相手なら、覚悟はできてます。魔導アーマーの実戦配備が待ち遠しいほどであります!」

 リョウマと加賀との会話は暫く続き、
 「いかんいかん、俺とて所詮は一介のゲーマーに過ぎぬと言う事なのか!」
 とリョウマが正気に戻るのは数分後であった。

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