AllFreeOnline〜才能は凡人な最強プレイヤーが、VRMMOで偽善者を自称します
偽善者と迷宮内氾濫 その01
夢から現実に干渉できる、【怠惰】の能力である“夢限置感”。
その効果によって、夢で魔法を準備して現実に反映させられるようになった。
ロカに放った光と闇の槍──その数二百。
今の俺は【怠惰】を起動中により、回復速度が通常時よりも多くなっているため平然と次の準備をしてられる。
「どうした、少しずつ被弾してるぞ? 魔法はまだまだ用意できる、そう遠慮しなくてもいいんだぞ」
「はっ、わざとに決まってんだろ!」
対して、ロカは消耗した分回復速度を上げる“湧き立つ衝動”で補給を行っていた。
今までに使った分が多いので回復速度も凄まじいが、それ以上に消耗が激しい。
多重速度強化や自然回復速度向上は停止したものの、今なお握り締める偽りの神槍である[グングニル]。
ロカから起動維持のために流れ込んでいる身力の量、それが回復速度を上回っていた。
当たれば俺を一気に追い込める代物、だからこそ俺も警戒して触れさせない。
一瞬だけ起動なんて芸当もできないため、ロカはひたすら力を削って使っている。
そして、そこに降り注ぐ魔法の連射──状況は今度こそ、俺有利なモノになっていた。
「まだ足掻くか……ほれ、ならこれだ」
「くっ……!」
光と闇の槍は、俺の適性ではなく眷属の一人フィレルのモノを基準に創られている。
陽光の龍と先祖返りの真祖吸血鬼の子供である彼女は、双方に高い適性を持つ。
結果、低燃費かつ自由自在に動かすことができる二種類の槍ができた。
それを夢の中から引っ張り出し、全方位から射出──ロカはそれを全身で浴びる。
「ぐぉおおお!」
猛々しく吠え、槍を振り回す。
足掻きに応えるように[グングニル]が光り輝くと、周囲の槍が触れてもいないのに消滅してしまう。
その絡繰りは槍に刻まれたルーン文字。
無数に刻まれた文字を組み合わせ、魔法消失のルーン魔術でも構築したのだろう……ただし、ロカの負担は大きい。
「ハァ、ハァ……くそ!」
「【憤怒】を使い過ぎると呑まれるぞ。それに、[グングニル]だって模造品とはいえ神器、それも主神クラスの使うヤツなんだ。あまり長くは使えないぞ」
「分かってる!! ……ごほっ、まだ終わってねぇ!」
「そうか……“普遍在りし凡人領域”が無ければ、結果は違っていたかもな」
能力値を1で固定する。
他の魔導と違い、素の俺が編み出したもっともシンプルで凶悪な魔導……弱者が弱者のまま強者に手を伸ばす埒外の世界改変。
ロカのレベルは250を超越したもの、相応にあった能力値も今ではたった1。
俺は元よりレベルが低く、能力値も大して高くない……だというのにまだ戦えている。
そんな状況を創ったのが俺の魔導。
それさえなければ、瞬殺されてロカが勝利していたかもしれない。
「関係ねぇ……それでも俺が勝つ!」
「そっか……なんか俺が悪役みたいになっている気がしないでも無いが。まあ、それなら俺も応えよう──“怠惰忘進”」
借り物でも【怠惰】スキルは使える。
ただし、それは本来【怠惰】を極めることができなければ使うことのできないモノ。
「! それは……!」
「お前にだけ見せよう、ロカ。これが、今回お前がやったことに対する正当な報酬だ」
「……悪い、感謝する」
俺の姿、使う武器に変わりはない。
だが、それでもロカは感謝を告げる。
発動するのはほんの一瞬、だからこそ俺はこれ以上語らす──宣言する。
「終わりだ──“罪禍之■”」
──そして、■■■■■■■■■■■■。
◆ □ ◆ □ ◆
第四世界 迷宮都市
ロカとの戦いが終わり、一休み。
もともと反乱はともかく、氾濫には一定のスパンがあるので今回の模擬氾濫にもそういう休むための時間を用意していた。
「──お疲れ様です、主様」
「まあ、いろいろあったな。魔臣……今度から知性を持たせた魔物を呼ぶときの呼称な、がここまでいろいろ考えていたとは」
「何か制裁を与えますか?」
「いや、俺が直接会ったことでそれは済んだからな。一部のヤツ、特に攻撃目的だった連中とはきちんと武力で制圧したし」
さまざまな目的で反乱を起こした者たち。
中でも、ラヴとロカは俺との戦闘を求めての反乱だった。
彼らは共に、俺との戦闘に満足している。
元は彼らへの対応が減っていた俺が悪いわけだし、多少の要求を呑ませることで彼らの罪は帳消しということにした。
「レン、状況の方はどうだ?」
「第一フェイズには上手く対応しておりますね。ただし、このまま第二フェイズを迎えれば重傷者が出るでしょう。ポーションや優れた治癒士が治せるレベルではりますが、主様の望む結果は難しいかと」
「……被害ゼロは無理だとしても、ある程度余裕を持った耐え切りは望めないわけだな。こういった場合、創作物だと装備を強化して補うか、育成をして底上げをするかだな。とりあえず、考慮に入れておいてくれ」
「はい、畏まりました」
迷宮の魔物たちと戦わせて、探索者たちの強さを計っている今回の企画。
しかしながら、もしもの際に任せきれるほどの実力はまだ無いようで。
──とりあえず、第二フェイズの方は俺も混ざることにしようか。
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