AllFreeOnline〜才能は凡人な最強プレイヤーが、VRMMOで偽善者を自称します
偽善者と新人イベント その05
暗殺者『陽炎』との試合……いや、死合を済ませた。
なお、分かっていると思うが、今回の縛りは遺製具の使用だ。
正規の遺製具である[ディヴァース]、そして人造の遺製具[ロウシャジャル]。
俺は人造ユニーク種を生み出す過程で、かなりの量の特典を獲得していた。
非アジャスト仕様なので全部を使いこなすのは難しいが、一つひとつを状況に合わせて用いるというのであれば、バリエーションに富んだ対応が可能だろう。
そうして一勝負を終えた後、再び話し合いの席に戻る。
依頼をしていたのは『陽炎』だけでなく、もう一人──【暗殺王】にも頼んでいた。
「それじゃあ、頼んでいた調査の結果を聞こうか」
《はい。まず、PKたちのだいだいてきなけいかくはそんざいしました。しんじんたち、そしてそれをしどうするひとたち。かれらをいちもうだじんにするぷらんのようです》
「まあ、何かやるとは思ったよ。差し当たって、先に俺が処分できたのは選抜隊か。具体的な内容は分かっているのか?」
《まものをひっぱってくる、というところまでは。MPKを、それもじつりょくしゃをもたおせるれべるのこたいをよういできるみたいです》
俺が【暗殺王】に依頼していたこと、それはPK連中の企みを暴くこと。
無ければ無いで良かったのだが、予想通り何かを企てていたようだ。
「今回のイベント、その中でも一番ポイントが稼げるのはやっぱり魔物討伐だ。逃げるよりは、迎え撃つ方がイイって考える奴ばかりだろうな。実際、俺もそう思うし」
「そういや、お前もやってるんだっけ?」
「お嬢様と忍者と天才を少々な。全員、訳アリだって押し付けられたんだが……それがまた何ともチートな連中でな。努力家、古武術の使い手、異能持ち…………なっ?」
「なっ? とか言われても。というか、異能なんてあるのかよ」
あくまでも、鑑定眼で視た結果である。
異能といっても性能に差が存在し、本人的にも特技だと思っていたことが実は異能だったということもあるぐらいだ。
天才──花子(仮)の異能は、おそらくその中でも特別。
目的を達成するための指針を知ることができる、それはまさにチートだろう。
本来であれば、現実というクソゲーに攻略情報など存在しない。
だが彼女にそれは当て嵌まらず、望みさえすれば行動次第でどんなことでも叶う。
…………と思い込んでいたので、俺はこれまで彼女の【傲慢】を叩き潰している。
現実ならばともかく、ここはAFO──どこにでもある理不尽を体現してやった。
その影響もあってか、ほんの少しではあるが丸くなった彼女。
だからこそ、ござる(仮)やお嬢(仮)とも時折協力して活動をしていた。
「いつか二人にも、暗殺の依頼が来るかもしれないな……その時は、全力でやってくれ」
【……よろしいのですか……?】
「いい経験になる。祈念者は死んでなんぼだろう? 迎撃できるなら良し、ダメでも反省から何かを見出してくれるだろう」
《……そこまでじしんがあるとは。いらいがこないことをいのっています》
彼女は【暗殺王】であり、その上位版である【暗殺神】を目指している。
だが、それはどちらかと言えば固有スキルの『侵蝕』によって植え付けられた願望。
今はそれも解除されたが、元より悪人専門のPKを請け負っていた身。
依頼自体はそのまま受けており、吟味の末にほぼ100%暗殺を成功させている。
それを言うと『陽炎』もまた、依頼は確実に成功させることで有名だ。
誰も正体を知らない暗殺者、何だか創作物の主人公みたいな実力者だからな。
「…………、ハァ」
「おい、どうして俺を見て溜め息を吐いたんだ!?」
「いやなに、何でも無いさ…………お前だけ普通だなぁって」
「普通!? こ、この見た目でそれをいうヤツはいねぇよ!」
まあ、イキっている感は出ているけども。
相殺と反射の魔剣使いである彼は、たしかに強いのだが……二人と比べるとな。
二人が上の中なのに対し、リヴェルだけは上の下ぐらいだろうか。
新弟子たちが中の上、アルカやユウが上の上といった感じだ。
「まあほら、双剣を変えればあるいはって感じもするけど……氷の剣とか、凄い木剣とかに心当たりは?」
「いや、欲しいけども……無理だろ、見たことないぞ大元の素材を」
「木剣の方ならどうにかなりそうなんだけども。まあ、これは関係ないか」
「…………お前、マジで凄いよな」
さすがに原作忠実再現は無理だし、魔剣はそのままに強化した方が得策だろう。
彼もそれを理解しているからこそ、今までの報酬も剣以外の再現グッズのみだった。
「えー、とりあえず三人の次の方針だが……PK連中に混ざって計画の把握。普通にターゲットを殺してもいいから上手く制御してみてくれ。あっ、自由民に手を出そうとしたら容赦なく潰してくれていいから」
「…………まあ、それならいいけど。そっちの二人も……同じみたいだし」
無言で頷く暗殺者たち、そしてそれを代弁する厨二病。
彼らに裏方を任せ、俺はまた表の舞台へとこっそり姿を現すのだった。
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