AllFreeOnline〜才能は凡人な最強プレイヤーが、VRMMOで偽善者を自称します

山田 武

偽善者と新人イベント その02



 第三世界 迷宮都市


 新人たちをメインとしたイベントの予告。
 それに伴い、指導者を務めている者たちを集めた場所で企画されたある計画。

 新人同士を競い合わせるという切磋琢磨的なアレなのだが、その景品としてトップランカーでも垂涎の代物が登場。

 結果として、内容を知らない新人たちよりも指導員たちが燃える展開に。
 ……なお、俺はその上位版を大量にストックしているので興味は無いけど。


「──まー、とにかく。三人には、そんな欲塗れのイベントで活躍してもらいます」

『…………』

「いやまあ、乗り気になれないのは分かるけども。けど、いつも通りモノで釣るっていうのは安直な気もしてさ。真面目な話、どう接していいのか分からん気もして……ぶっちゃけ、仕事として依頼した方がいい気もする」


 翌日、俺はイベント云々に関する情報を三人の教え子たちへ説明することに。
 ただ、毎度毎度同じようにやらせるのもどうかということで……いろいろ暴露してた。


「……先生。一つ、よろしいですの? 私たち、まだ目的の職業には──」

「はははっ、さすがにこの短期間でそこまでされると先輩方が困るだろう。あっ、ちなみに俺は初めて一日で就いたけど」

「「…………」」

「せ、先生? そ、その、お二人をあまり挑発されない方が……」


 もともと反抗気味だった花子(仮)だったが、今ではござる(仮)も割とそういう面を出すようになっている。

 素を出してもらえた方が、俺としても話が通しやすいので助かっていた。
 ……その点、お嬢(仮)はピュッアピュアに心が澄んでいるんだよな。


「俺は初期勢で、何かと優遇されていたのは事実だ。ユニークの連中だって、アンケートに答えただけで固有職が貰えた奴が居るぐらいだからな。たしか、データ的にも固有職は早めに始めたヤツの方が多いんだったな」


 そんなことをナックルが言っていた。
 やり込んでいる時間が長い分、就職に必要な条件を満たしていることが多いからだ。

 基本的に、最上位職の条件は何らかの合計値だったりが対象になる場合が多い。
 ならばその条件を知らずとも、プレイし続けていた方が当てやすいのだ。

 俺は大抵の最上位職の情報を有している身だが、ほとんどの祈念者はそれを知らない。
 知っている者は口を噤むし、利になると取引の材料に使うことだってできる。

 自分が就くことができずとも、それを求める者に高く売りつけることができるからな。
 そういった意味でも、俺は他の祈念者より先を行っていると言えよう……無職だけど。


「話は逸れたが、レアな職業に就きづらいのは当然のことだ。むしろ、これはチャンスだと言ってもいい。得難い経験は、必ず三人の糧になる。というか、俺がそうする」

『…………』

「あっ、言葉の綾があったな。いやー、間違えた間違えた。俺がそうするじゃなくて、俺たちがそうするだったな、ははははっ!」

『…………』


 うん、視線が厳しい!
 指導者たちは、各自いろいろとやることが義務付けられており、俺にもいちおう任されていることがある。

 ……あのナックルが、まさかあんなことをしてまで交渉してくるなんてな。
 あの動き、あの姿勢のキレを見て、思わず受けてしまったよ。


  ◆   □   ◆   □   ◆

 自由世界 始まりの街


 今回のイベントはわざわざイベント空間で行われず、自由世界全体が舞台だ。
 期間中、行動に応じて出現するスタンプをどれだけ集められるかを求めるらしい。

 スタンプは[クエスト]のクリアやある程度強い魔物の討伐、生産や迷宮の宝箱などさまざまな場所で得られる。

 基本的に、普段の行いを頑張ればある程度は貰える仕様なのだろう。
 少女たちはどうやら、高い実力を活かして戦闘で稼ぐらしい。


「で、俺は要らないしむしろ何をするか分からんからって追い出された。まったく、酷い話だよな」

「……その子たちは正しいだろ」

「まあ、居たら全力でサポートぐらいはしただろうけど。蘇生薬とか余るぐらいに持て余しているし、低級の回復ポーションレベルで投げつけてたかも」

「だろうな。お前って、なんかそういう抜けているとこあんだよな」


 俺の愚痴に乗る男。
 背中に二振りの剣を差した、全身黒尽くめのイタいヤツ……イキっているわけじゃないのだ、ただ憧れが強過ぎただけなんだよ。

 彼はいちおう、俺の作ったクランに所属しているメンバーの一人だ。
 ただし、ティンスやアルカなどの眷属組ではなく……もう一つの集団が属する方の。


「で、俺が呼ばれた理由は? まあ、どうせ橋渡しなんだろうけども」

「正解。とりあえず、狩り尽くせってのが上からお達しだ。向こうにも新人が居るかもしれないけど、そういう方向を目指すのならこれもまた経験だろうってさ」

「……本当にえげつないな。まあ、俺のロール的にもPKはアウトだしいいんだけども。なのに、どうしてこんな立ち位置なのやら」

「ふっ、悔やむならば彼の精霊魔王に手を出した己が業を恨むのだな……なんてな。それじゃあ、連絡の方よろしく。さーて、忙しくなるぞー…………お前らが」


 正当な報酬は用意しているのだから、ぜひとも頑張ってもらいたい。
 次はそうだな……闇属性と樹属性を混ぜて作った、黒い木刀なんてどうだろうか。



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