AllFreeOnline〜才能は凡人な最強プレイヤーが、VRMMOで偽善者を自称します
偽善者と砂漠の旅 その03
自分の才能の無さを、限界突破と幸運のスキルでどうにかしようとした俺……そして、陽炎の発生を捉えることができた。
精霊たちに助力を願い、現場へと急行。
辿り着いた先は、外壁に覆われた巨大な都市だった……今まで認識できていなかったのが、不思議に思えるほどだ。
陽炎都市、文字通り陽炎が発生している間しか中に入ることができない特殊な場所。
それゆえに、キャラバンも入ることができずその場で待っていたようだ。
「……アレを目印にすれば良かったのかな」
たしかにこの大砂海の中央区画では多くのキャラバンの塊を、至る所で見ていた。
どうやらある程度目星をつけ、そこで待機していれば良かったらしい。
ある意味着実な方法。
いくらでも待つことができるのであれば、こうして待機と撤退を繰り返していけばいずれ入れることだろう。
「それじゃあ、僕たちも並ぼうか。だから、お願いするよ」
『!』
精霊たちに頼み、まずは砂漠の上に着地。
そのうえで、光と闇の魔法によって俺を認識しづらくしてもらった。
縛り時の姿であれば、畏怖嫌厭の邪縛は機能しない……が、それとは別の理由である。
ここは非合法なことが何でも横行している場所なので、警戒しているに過ぎない。
「うん、そんな感じそんな感じ。じゃあ、入場しよう!」
『!』
わざわざ個人用の門があるわけでもないので、キャラバンの行列に混ざって入場。
衛兵がある程度チェックはしているが……うん、そこは袖の下に通しておきました。
これが通用するのもまた、この都市の良いところではある。
その代わり、人権が無いに等しいのだ……金を常備しておかなければならない。
「──よし、通っていいぞ」
「ありがとうございます」
お金を受け取った衛兵は、それ以上何も言わず俺を通した。
この行動が咎められることも無く、あっさりと都市を拝むことができる。
「ふーん、ここが陽炎都市か……あっ、転移門を登録しておかないと」
どこからかこの街に運ばれてきた転移門。
本来ならば機能しないはずのそれも、大砂海の特殊な地脈を通じて機能するようになっている──かなり割高になっているけども。
ここから出るにも戻って来るにも、多大な額が必要となる。
そのため商人たちは、ごく一部を除き外部からの正式な入場を行うのだ。
「Z商店は、どこにあるんだろう…………全然場所が分からないなぁ」
陽炎都市は迷宮内に[マップ]で表示されず、かつこの都市の情報はすべて有料だ。
ついでに街の構造もコロコロ変わってしまうので、既存の情報は使い物にならない。
つまり、目的の場所に行くためにも、この都市では金が必要になるのだ。
もちろん、無課金でもできる……がそれ以上に時間という貴重な物を浪費してしまう。
「けど、僕にはみんなが居るから大丈夫──ソムス、“探地”」
『!』
「魔法を強化して……うん、とりあえず地形情報は全部把握できたかな?」
記憶した情報は[マップ]へと反映。
店名などは不明だが、それでも店として建てられた施設かどうかなどは分かる……ある程度絞ることができた。
「こっちが住宅が多い方で、あっちが商業街みたいな場所かな? だから……こっちの住宅街の方にZ商店はあるに違いない!」
『?』
「ああ、言ってなかったね。あの店、そういう偏屈な感じというか……うん、面白ければ売り上げなんて気にしないって感じでね。とにかく、僕の勘はこっちにあるって言っているんだ。だから、こっちに行ってみよう」
『!』
理由にならない理由を付けて、一先ず住宅街の方へ向かう。
なお、居住区も金さえあればどうにかなるらしい……最悪、先住者を追い出す形で。
そういった意味でも、金が無ければ何も得ることができない場所なのである。
まあ、そんな場所なので、揉め事も大量にある……わけではない。
大半は祈念者が対応している。
救われる側は救われ、救う側もまたある意味救われる……歪ではあるが、それでも今その瞬間の危機からは逃れられるのだ。
『!!』
「……うん、そうだね。みんな、魔力を渡すから自由に動いていいよ。君たちがダメだと思うなら、思うようにやっていい。それもまた、君たちの成長に繋がるんだから」
『!!』
「ディー、僕たちは行こう……あまり、長居はしたくないんだ」
──揉め事はそう多くは無い。
揉める揉めない以前に、強制的に終了しているからだ。
精霊たちは負の要素に敏感だ、だからこそ気づいてしまった。
その対応を彼らに委ねた俺は、人間としてダメな分類なのだろう。
だが、下級、中級、そして上級と成長していけばそういった問題に関わることになる。
……だからと言って微精霊の時点で、やらせるのは酷だとは思う。
それでも、彼らの意思に任せ──せめてもの救いを与えてやってほしかった。
「この都市は、どうしようも無いんだね」
「──ええ、私共も支援はさせてもらっているのですが……残念ながら、ここの闇はそう容易くは晴らせません」
「人が業を深める限り、一生晴らせない闇かもしれないね……どうにかできるかな?」
「さぁ。ですが、お客様のご要望とあれば尽力しましょう──ようこそ、『Z商会 陽炎都市支部』へ」
そして、俺とディーは目的地へと案内される……いつもながら、気配をまったく感じ取れなかったよ。
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