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山田 武

偽善者とアイテム改良 後篇



 生産室で行う、療養中でも簡単な作業。
 武具に塗料を塗るだけなのだが……その塗料がチートだと言われてしまった。

 なお、便利な性質ではあるが、その分だけデメリットもある。
 最初から装備スキルが多い魔具などには、使っても十全な効果を発揮できないのだ。

 キャパシティの問題と同じで、便利な分だけ多く使ってしまう。
 最初から強力な装備であれば、それだけすでに枠を圧迫しているわけだ。

 武具自体の格も本来は問題になるのだが、それは塗料の方で調整をしてあるので問題ない……だからこそ、非常に完成後の価値が高くなっているわけだが。


「あんまり強くないからな、これ。対人用の武器ぐらいには使えるだろうけど、元が銅や鉄だからそこまで火力が出ないんだ。魔力や気で補ったところで、強力な魔物が相手とかだと無理だろうな」

「たしかに……でも、兄さんやみんなが使えばそれだけで充分だよね」

「そりゃあまあ、時間は掛かるだろうが大抵の魔物はどうとでもなるだろうな。絶対に壊れないわけじゃないが、火力を嵩増しする程度の魔力になら耐えられるだろうし」

「? 不壊なのに、壊れるの?」


 おっと、ニィナが気づいてしまった。
 そう、不壊という性質は絶対にアイテムが壊れない……ということではない。

 形ある物、いつかは壊れるのは自然の理。
 神器や聖魔武具ならばその理外にあるけれども、さすがに塗料を塗っただけでチートの仲間入りはできないのだ。


「不壊ってのは、あくまで普通に使っていればという話だ。相手が神器を使ったり、限界突破して武器破壊スキルを連発する。他にも魔物が装備腐食の攻撃を何度も打ち込んでくる……そんなことがあればそりゃ壊れるさ」

「た、たしかに……じゃあ、不壊っていうよりも損壊耐性とかそういう感じだよね?」

「そっちは少しずつ耐久値が減っていく。けど、不壊は特別な攻撃に当たらない限り絶対に数値が減らない。だからそこだけは明文化されているんだ」


 そんなこんなで、塗料を用意したすべての武具に塗っていく。
 途中、ニィナも暇だったようで塗る作業に参加してくれた。

 そのお陰でもあり、少しだけ作業が早く終わることに。
 ……なのでもう一つ、やってみようと思っていたことを実行してみた。


「えっと、今度は……装華かな?」

「おう、[守式]と[攻式]。造花シリーズの二種類だ。今回は、その改良をしてみようと思うんだ」

「……それ、簡単じゃないよね?」


 本来、人々の想念を土壌に育つ『装華』。
 そのシステムを拝借し、自身の『装華』とは別で着装可能な品を開発していた。

 ただし、本来の『装華』にはある成長性がまったく無いため、強化するためには技術者による改良が必要不可欠……ということで、俺自ら手を施すわけだ。


「いやいや、そうでもないぞ。今回は、装備じゃなくて魔術を仕込んでいくだけだから簡単だぞ。たとえば……ほら、打ち込む方がメインだからな」


 魔術は魔法のように魔力をうんたらイメージをこうたら、といったものではない。
 必要なのはエネルギーとなる純粋な魔力、そして発動過程となるプログラムのみ。

 今回は生産室に置かれた機材に『装華』を繋ぎ、開発した魔術を入力していく。
 すでに実験は済んでいるので、組み込んでいくだけの簡単なお仕事だ。


「やっぱり、容量に限界があるから取り捨て選択をしないといけないんだよな。ソフトの方をどれだけ改善しても、ハードの方を世界に合わせているから無限にはできないし」

「えっと……どういうこと?」

「ポケモソでいう、覚えられる技が四つしかないのと同じってことだ。世界に合わせるってのは、つまり使う技を四つに縛ること。技自体が複合っぽくなっても、全部の技を自在に使えるようにはならないだろう?」

「なるほど……たとえはともかくとして、言いたいことはよく分かったよ。でも、兄さんたちが造った魔術デバイス、アレはどういう仕組みなの? たしか、かなりの魔術が保存できるんだよね?」


 縛りプレイ時もよくお世話になっている、魔術を行使可能な携帯装置。
 たしかにアレを使い、無数の魔術を使っているので当然の疑問だ。

 夢現祭りで売り捌いたり、国民たちに溜めたポイントと引き換えで配ってもいる。
 扱いが雑、というわけでもないが……希少じゃないと思われているのだろう。


「魔術デバイスは、『装華』に比べて処理に時間が掛かるんだ。その分、容量の方に重点が置かれていて大量に魔術を保存できる。要は汎用型と特化型、シーエーディーみたいな物だな」

「……結構危ういよ、それ」


 カタカタと魔術のプログラミングを行いながら、ニィナの問いに答える。
 ……ある意味『装華』とか、武装一体型な気がしなくもないです。

 そんな風にしばらく作業を続けると、やがて入力する魔術も無くなる。
 キーボードをターンッと弾き、装置と繋いでいた『装華』を片付けた。


「これでおしまいっと。さてニィナ、そろそろ夕飯の仕込の時間だ、急ぐぞ!」

「急ぐぞ、じゃないよ……今の兄さんは作る側じゃなくて、食べるだけの側だよ」

「え゛っ!?」

「そんなに驚くことかな……もう、それよりみんな心配しているんだから、これからのことを考えた方がいいんじゃないの?」


 ニィナの言う通り、夕飯は……そりゃあもう苛烈な物でした。
 さすがに俺でも、口は一つしかないんだから……あーんって大変なんだなぁ。



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