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山田 武

偽善者と供血狩り その11



 今まで実現不可能だった、祈念者を基にしたアンデッドが帝城に現れた。
 それらはリーの開発したオリジナル魔法によって成された、偉業と言えよう。

 ……正直、これを井島に持ち込むだけで鎖国問題は解決すると思った。
 東都のオダさんなんて、ニコニコと笑みを浮かべて祈念者を殺しまくるだろうよ。


「それじゃあ、みんな指示通りにねー」

『…………』


 祈念者の肉体に宿らせた死霊たちは、俺の言うがままに動き出す。
 俺の目的地以外で、彼らは派手に陽動をしてくれるに違いない。

 アンデッドたちをすべて他所へ向かわせ、俺は独りで目的地──避難所へ。
 祈念者はそこには居ない……うん、本当に重要な区画は教えないのだろう。

 その周辺で、また重要な人物だけを特別な部屋に連れ込んでいるらしい。
 ……現在、メィがその部屋の付近で待機してくれているようだ。


「だーかーらー──早く行かないとね」

「不届き者が、よくここへ──」

「あーうん、それ以上は言わなくてもいいよ別に。目的の物を持っていないみたいだし」

「目的の物? ここまでの大罪を犯すだけの物を、求めてきたというのか」


 辿り着いた扉の前、待ち受けていた騎士に向けて話をする。
 どうやら血を持っていないようなので、彼自身はごくありふれた普人である。

 ……だというのに、レベルを250まで上げているのはさすがと言えよう。
 蘇生にも自由民はリスクが付き物、文字通り命懸けの努力でもしてきたに違いない。


「……まあいい。我が名は──」

「だからそういうのはいいって。えっと……たしか『シジンのショー』なんだよね? お歌が上手い人たちなのかな?」

「……『四刃の将』だ! ふんっ、それぐらいは知っているようだな。私は『四刃の将』が一刃、『豪刃』の──」

「はいはい、分かりましたよー。クソザゴーおじさんなんだね、私ちゃんと覚えた!」


 ちょっと強引な繋ぎ方ではあるが、まあ別に良いだろう。
 しかし、『四刃の将』か……帝城の最上階に行ったとき、待ち構えていたっけ。

 そのときは『聖刃』だった気がする。
 実際の所、聖なる部分なんてまったく見ないまま終わったのだが……【強欲】の縛り中だったから、すぐに片付いたんだよ。


「なんだその言い様は!」

「お、落ち着いてください将刃様! 相手は少女、実力に警戒はしても振る舞いまで気にされては!」

「ぐっ……そ、そうだな。ふぅ……娘よ、ここから先へは通さん。また、これまでの行いから逃がすこともできん。大人しく武器を捨てて、投降するのだ」

「ざーんねん、そうはいかないんだよ。クソザゴーおじさんには分からないと思うけど、私にもやることがあるんだからね♪」


 かなり憤っている様子だが、周りの騎士たちがどうにか宥めている。
 今はそこまで考えてもらいたくなかったからな、あえて煽らせていただいた。

 十字架を握り締め、まずは色を黒へ。
 そして祈りを捧げ、聖なる力を魔法として解き放つ。


「──“聖弾ホーリーバレッド極大マキシム多重マルチプル”」

「総員、魔法防御!」

『──“阻魔防盾マジックガード”!』


 聖属性の攻撃にも、しっかりと対応するよう仕込まれているようで。
 ……それはそれで、仄かに後ろめたさを覚えることを考えているのだろうけども。

 だが俺の使った“聖弾”はただのソレではなく、修道服の補正を受けたうえで、神代魔法によって強化が成された代物。

 ゆえにその威力は、聖属性という純粋な攻撃には向かない属性にもかかわらず、精鋭の騎士たちが防御を行ってもなおそれを押し通るだけの火力を生み出していた。


「あはっ♪ その程度で倒せるわけないのにね、前にお金にやられた『セージン』のクソ雑魚おじさん、みんなにそのことを教えてあげなかったのかな?」

「セージン……まさか、『聖刃』か!?」

「きゃははっ! 私の知人がお世話になったから、そう教えてあげてね。ふふふっ、おじさんも同じみたいな感じだけどね」

「くっ……聖属性でそれほどまでの力を生み出すことができるとは。貴様、いったいどこの神を信仰しているのだ!」


 聖属性の性能は、信仰する神とその度合いで決まる。
 彼的には、俺が攻撃向けの神様にどっぷり嵌まっている……みたいな考えなのだろう。


「言うわけないよね、この状況で。もしクソザゴーおじさんに教えたら、あとで何かするよね? うんうん、私分かっちゃった! だからダーメ、教えてあーげない♪」

「くっ……無念」


 十字架を持ち替え、先から光の刃を生み出す剣としての形態へ。
 聖なる刃を突き立てると、『豪刃』は成すすべなく倒れた。

 まあ、最初から殺す気は無いので安心してもらいたい。
 そもそも聖なる属性のままなのだから、お察しといったところか。


「さてと、たしか最初の部屋にはメィを預けた楽団の人たちとかが居るんだっけ? なら外から──“聖寧リポーズ”」


 阻む者が居なくなったので、扉越しから聖魔法を掛けて内部に影響を及ぼす。
 聖なる光が空間中で光り輝き、内部の者たちを眠りへと誘うことだろう。


「メィ、中はどうなった?」

『……全員寝た』

「了解、それじゃあ入るよ。落ち合ったら、少し作戦会議をしようか」

『分かった』


 中の情報を知っているメィに確認を取った後、俺は扉の中へ進んでいく。
 ……これが最後の準備期間になるだろうから、念入りに支度しないとな。



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