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山田 武

偽善者と東の南釧 その20



 俺が有象無象の鎖国派を倒し、逃げ出した強者の捕縛をミントへ依頼した。
 ある程度の強さがある者ほど、ミントという存在を勘違いするんだよな。


『パパー、ただいまー!』

「おおっ、さすがミントだ! うんうん、きちんと生け捕りにできているな」

『えへへー、頑張ったよ!』


 小柄というには小さすぎるその体で、引き摺ってきた逃亡者。
 能力値という概念があるからこそ、そんな目を疑うような事象が現実になっていた。

 こうして、この拠点に潜んでいたすべての鎖国派(+α)の鎮圧が完了する。
 ミントが行っている間に拘束も済ませてあるので、あとは開国派に知らせるだけだ。


「その前に、資料を集めておかないとな。何かいいものがあればいいんだけど」


 銃を最初に向けられた部屋へ戻り、ミントといっしょに何か無いかを探す。
 見つかったのは紙で纏められた開国派の資料、そして──


「……連絡用の魔道具か。うーん、どこに繋がっているのか分からないし、とりあえず放置だな」

『パパ、似ている物があるよ?』

「ん? ああ、これは例のヤツの持ち物か。ミントが圧倒的な差を見せつけてなければ、これで何かを連絡させられていたかもな」


 ミントのやったことは『眼』で確認していたので、何をしたのかは分かる。
 彼がついぞ使わなかった連絡用の魔道具、それは死亡を受信相手に送る物だ。

 死んだことが伝われば、当然向こうで何かあったのだと分かるだろう。
 警戒、引き上げなど対処をされるに違いない……要するに逃げられるわけだ。

 加えて自害用の毒、まあその気になれば後からでも解毒はできただろう。
 それでも一度は死んだと判定され、魔道具は起動していたはずだ。


「登録を解除してっと……連絡先の特定をしておかないとな」


 もちろん、これが直接親玉に繋がることは無いだろうけども。
 というか、鎖国派の統括者は誰か分かっているので今更な気がする。

 それでも、鎖国を維持しようとする者たちがどれほど居るのか特定可能だ。
 何でもやっておいて損はない、ということで開国派へのお土産に追加しておこう。


「自分でやる必要は無いもんな」

『パパ?』

「今回の旅はそろそろ終わりってことだ。どうだ、楽しかったか?」

『うん!』


 少々血腥い点が多く見受けられたが、それでもミントは笑顔で答えてくれた。
 彼女の望む父親の活躍、ちゃんとできていただろうか?


『でも、もうパパといっしょに居られる時間は終わりかぁ……残念』

「ミント……まっ、またちゃんと時間を作るよ。遠慮しないで、俺と遊びたいときは言ってくれればいいさ」


 眷属たち、そして学友たちと仲良くしていることが多いので、あんまりそういう機会は無いのだけれど……求めてくれるならば、俺はそれに応えるだけのこと。

 最悪なのは、ミントに『パパ嫌い』と言われるような事態。
 なんとしても、それだけは絶対に避けなければならないからな。


  ◆   □   ◆   □   ◆


 最後の一仕事、それは開国派へとプレゼントを届ける作業。
 やり方は簡単、施設から出て少し騒ぎを起こせばいい。


「──『炸裂弾ブラストバレット』」


 拳銃から一発の弾丸を空に打ち上げる。
 ただし弾丸には精気力が籠められており、一定時間経つと勝手に爆発する武技を模していた。

 つまりは花火を打ち上げて、思いっきり目立つことをしたわけだ。
 突然の爆発に驚き、多くの開国派の連中が姿を現す。


「な、何者だ貴様!」

「竜馬から話を聞いちょらんか? おまんらの裏切り者、代わりに対処してやったんじゃけんのぅ」

「こ、これは……!」


 並べられた鎖国派の連中を見て、驚いた様子を見せる人々。
 まあ、今までは同じ開国派として動いていたようだしな。

 今の彼らにとって、俺は突然強行に走り同志を攻撃した危険人物。
 だからこそ、彼らは警戒を緩めず武器から決して手を放していない。


「……竜馬さんからそのような連絡は入っていないぞ」

「あちゃー、まだ連絡できとらんか。まあ、それならそれで別に構わん。こっちもおまんらと戦いたいわけじゃない、このまま見逃してくれればそれで良か」

「そうはいかん。理由の真偽はともあれ、貴様は騒ぎを起こし同志に危害を加えた……事実確認がされるまで、拘束させてもらう」

「いやはや、それは結構ぜよ。実はこう見えても多忙でな、殺しも傷めつけもせぬからそのまま見逃してくれ」


 分かりやすく宙に浮かび上がると、彼らは弓や銃、そして『術』などを構える。
 そのうち撃ってくるだろう、だがそれでも変わらずに浮上し──攻撃が行われた。


「──『塊魔』」

「なっ……いったい何をした!」

「さぁのう。それよりも、おまんらは縛られた連中をなんとかすることじゃな。必要なことは紙に載っておる。そっちの方は、しっかりと連絡が来るまで捕まえておくんじゃぞ」

「ま、待て──!」


 待てと言われて待つような者は居ない。
 俺はそのまま宙へ──ミントに引っ張られながら飛んで行った。


『どう、パパ……苦しくない?』

「いや、ミントは優しいな。心配しなくても苦しくないぞ」


 ミントは俺の襟の辺りを掴んで、持ち上げてくれている。
 ある意味、猫の首根っこを掴むような運び方だった。


「けど、どうしてこの運び方なんだ?」

『うーん……もう最後だからパパに教えちゃうけど、お姉ちゃんたちがね』

「──皆まで言わなくていいや。うん、あとでお姉ちゃんたちにはお説教をしておく」


 見ているのは間違いないと思っていたが、そんなことを指示していとは。
 ……あとでからかわれるネタを、用意させてしまったか。



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