AllFreeOnline〜才能は凡人な最強プレイヤーが、VRMMOで偽善者を自称します

山田 武

偽善者とキャリアチェック その18



 お互いの技術を奪い合う、花子(仮)とござる(仮)。
 それに気づかないほど集中して、人形の操作を行っているお嬢(仮)。

 それぞれ頑張っているのだが……うん、俺の今の推し(意味深)はお嬢(仮)だ!
 右目と左目で異なる神眼を輝かせながら、次は何をしようかと考え中。


「うんうん、二人ともお嬢ちゃんが話しかければちゃんと対応しているみたいだね。相手に違和感を持たせたくないし、何よりこの時間はお嬢ちゃんの人形操作が主目的。やらないとこれの時間が終わっちゃうからね」


 古武術と我流体術、それそれを解析し切るために必要な時間は長い。
 後でじっくり見直すことはできても、実際に視れるのはこの瞬間だけ。

 だがそれも、すべてはお嬢(仮)の練習のついで……そう、あくまで付属されたもの。
 その機会を逃さぬよう、相手が行っているお嬢(仮)への決して聞き逃さない。


「お嬢ちゃん自身も体術関連の熟練度が上がるし、スキルもいずれ伸びるかな? 自前のスキルがあれば、その影響は人形にまで反映できる……ただの接続じゃできないから、この辺はお嬢ちゃんの頑張り次第だけど」


 お嬢(仮)はいいとこの生まれなので、護身術程度であれば少し齧っていた。
 それでも二人の武術は超高難易度で、そう簡単に身に付くものではない。

 だが視る限り、要所はしっかりと抑えられているように思えた。
 ……多くの習い事などをやっていると、そういう物事を見抜く目が磨かれるのかもな。

 二人もそれに気づいてはいるようだが、やはり目下の敵は技術を持つもう一人。
 侮っているわけではないようだが……優先順位、というヤツだな。


「うーん、そろそろいいみたいだね──おーい、三人ともー! 本日の課題に、そろそろ移るからねー!」


 切り替えていた神眼を閉じ、通常状態に戻してから三人に呼び掛けた。
 ……視たかったものは視えた、あとはもうお嬢(仮)の努力次第で何とかなる。

 なので締めとなる課題を用意。
 レンとも相談して、迷宮内に魔物を配置する──魔法陣から魔物が現れ、三人の少女たちはすぐに警戒態勢に入る。


「うん、それじゃあ課題を説明します──この魔物、『人形ドール』を相手に一定時間耐えてみてください。ただし、時間は条件を満たしてしまうと増えてしまいます……そんな条件を探しながら、頑張ってやってみてね」


 ごくありふれた、位階も1な魔物。
 お嬢(仮)の生み出した人形と違い、体内に有した魔核によってある程度自律的な行動も可能にしている。

 ──がそこに、どこからともなく一本の糸が差し込まれた。
 あっ、言っておくけど俺じゃないぞ……三人とも、まず最初に俺を疑いやがったな。

 それは迷宮経由でレンが差し込んだ物。
 特別な糸はただの雑魚魔物だったはずの人形を、耐久の限界を超えて強化する……そういう点も含めて、レンの協力が必須だった。

 ……まっ、その糸はあからさまに見える部分と不可視の部分が存在していて、後者の糸は俺へ繋がっているのだけれど。


「じゃあ、始めよっか。どれだけ強化しても素体が人形だから、そんなに強くないから安心してね」

『…………』

「そんな顔しなくても大丈夫なのに……今まで私が、嘘吐いたことあったっけ?」


 彼女たちに嘘を言った記憶は無い。
 ……少しだけ、理不尽なことを言ったりはした気もするが、まあ俺の記憶違いだろう。


「あとは──この砂時計だね。条件を満たしたら、色が付いた砂が戻るからそれを目安に頑張ってみてね」


 ぎこちない挙動で人形が起き上がる。
 先手必勝とばかりに飛び道具や魔法が放たれる……が、人形がその場から掻き消えた。


「ど、どこに!?」

「! そこっ!」


 ござる(仮)がクナイを投げたのは、自分たちの後方。
 そこには何も無かった……つい先ほどまではの話だが。

 佇む人形に警戒の色を強める三人。
 人形は注目を浴びながら、少しだけ体を縮めて──勢いよく駆ける。


「……くっ」

『────』


 向かった先に居たのは花子(仮)。
 双拳銃剣も間に合わず、今は体術のみで人形の攻撃を捌いている。

 どれぐらいの攻撃性能を秘めているのか、まだ判明していないからだろう。
 極力触れることなく避け、超近距離で弾を撃つなどして牽制も交えていた。

 そして、それでも対応できなくなり、とうとう触れたそのとき──


「ピピーッ、色が変わったよー」

『ッ……!?』

「最初だから、少しだけ情報を開示するよ。条件1:1秒以上の接触は厳禁、これによりペナルティが加算されまーす」


 落ちていた砂の一部が色付き、再び上部へと戻っていく。
 その砂は一番上に微量ながら乗った……これが意味することを、彼女たちは知らない。


「とまあ、こんな風に砂が戻っていくから注意するように。なお、ペナルティの内容で戻る砂の量も違うから気を付けてね──あっ、これも必要そうだから言っておくけど、誰か一人でも死んだら最大級のペナルティだよ」


 かなりの情報を開示したので、頭のイイ彼女たちであればオチぐらいは予測できたはずだ……さぁ、君たちの絆とやらを見せてもらおうじゃないか。



「AllFreeOnline〜才能は凡人な最強プレイヤーが、VRMMOで偽善者を自称します」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「SF」の人気作品

コメント

コメントを書く