AllFreeOnline〜才能は凡人な最強プレイヤーが、VRMMOで偽善者を自称します
偽善者と陣営イベント番外篇 その10
こうして、ラスボス(真)戦の裏で繰り広げられた番外篇は幕を下ろした。
俺だけが知った彼のことは、忘れない……そう、映像記録として保管したから!
魂はちゃんと転生させたが、生前の軌跡は残しておく方が良いと判断したのだ。
……何度でも言おう、俺がやっているのは望みを汲み取る善行ではなく偽善だからな!
廃都……いや、共都の王城に映像装置は転送済み。
すべてが終われば、偉い人たちが語り継いでくれるだろう。
「いつの間にか、全部が終わってたみたいだね……まあある意味、これが凡人というかモブの定めだよね」
《お疲れ様です、メルス様》
「疲れたのは、私よりも武具っ娘たちだと思うんだ。労うなら、まずはそっちから──グラもセイも、ありがとうね」
「うん、頑張ったよ!」
「はい……嬉しいです」
迷宮都市の上空に現れた俺の下へ、すぐさま駆けつけてくれたグラとセイ。
二人の頭を妖女ボディで撫でると、とても嬉しそうに頭を擦りつけてくる。
俺に直接助力してくれた武具っ娘たち、そして迷宮の騒動を食い止めてくれた二人。
武具っ娘たちには、いつもいつも助けられてばかりいるな。
「本当はね、ぼくもごしゅじんさまの所に行きたかったんだけど……セイがダメって言うから我慢したんだ!」
「ご主人様が僕たちに望んだのは、迷宮都市の防衛ですので……本当は僕もグラと同意見でしたが、ぐっと堪えました」
「うんうん、とーっても嬉しい! 本当は私も、二人に力を貸してほしかったよ。だけどそれと同じくらい、二人にこの場所に居る人たちを救ってほしかったんだ。だから、もうギューってハグしちゃうよ!」
「「~~~~!」」
傍から見れば……うん、少女たちが絡み合う素晴らしい光景だろう。
そう、中の人などいない……すべては見たままでしかないのだから!
妙にテンションが上がってしまったので、ハグを止めた後は敬礼をビシッと決めた。
「グラ隊員、セイ隊員。現時点を以って、迷宮都市防衛の任を解く! ご苦労だった、直ちに帰還せよ!」
「「了解!」」
ノリのいい武具っ娘なので、彼女たちもまたビシッと敬礼を決めてから転移で消える。
残されたのは俺だけ……こちらでやることも、もう何も無いか。
「じゃあ、そっちの私──還元するね」
俺は妖女アバターを解除した。
並列していた意識が一本に纏まるのと同時に、妖女側が得た経験値が一気にもう一方へと送られ──
◆ □ ◆ □ ◆
イベントエリア(西)廃都→共都
「──うん、受け取ったよ。生産と戦闘、両方の経験値を一気に獲得できるのは便利なスキルだよね」
当たり前のように、行っていた作業を継続して進める。
いやまあ、経験値は別になっていたが記憶は常に一つの意識で共有していたからな。
一度語ったが、たとえるなら二つの画面で同時にプレイしていただけのこと。
それぞれの状態を両方とも確認していたので、双方の記憶をちゃんと把握している。
ちなみに生産の方が何をしていたかと言うと……うん、本当に生産だけだった。
ただただ作る物を変えるだけで、ずっと変わらない時間が過ぎるだけ。
そりゃそうだ、一日しか経っていないのだからな。
急に移住民が来るわけも無いので、ただひたすら同じことやるだけだった。
「これがある意味、本当の意味のスローライフなのかな……うん、怖いな」
妖女側であれば、一日以下でもとんでもないほど濃密な経験をしていたはずなのにな。
……やっぱり俺には、どうやら何もない時間とは苦痛になるらしい。
「みんな、頑張ってくれてありがとね」
『?』
「ああうん、ずっと言ってたもんね。気にしなくていいよ」
すでにノゾムとして、こちら側でその都度精霊たちにお礼を言っていた。
なので今さら言っても、急にどうしたというような反応である。
「──うん、これで終わりにしよう! そしたらみんなは、またあそこでぐっすり寝ていていいからね」
『♪』
「よーし、最後もみんなで頑張ろう!」
『♪』
現在製作しているのは、六属性の精霊たちの協力が必須な回復アイテム。
花精人が教えてくれたレシピの中でも、一番難度の高い代物。
だが、上級錬金や上級調合スキルの補正も働いて割と上手くいっていた。
そんなアイテムも百個ほど製作済み……これ以上は、俺でなくともいいだろう。
実際、祈念者であることは伝えており、時間になったら居なくなることはこの区画の代表も把握している……なのですでに、別れの言葉なども済ませておいた。
「みんな、じゃあお願い!」
『!』
予め作っておいた花精人の秘薬(ストック確保済み)を入れて、調合していく。
時たま色が変化したら、その色に合わせて精霊たちに魔力を籠めてもらう。
最終的に色は虹色になるが、その状態で使うことはできない。
最後に錬金術を用いて、特定の成分を抽出することで──アイテムは完成する。
「ふぅー、これで終わりだよ」
『!!』
「──“精霊揺籃”。みんな、本当にありがとうね」
『!!』
出来上がった品は、これまた作ったモノを保存するために用意しておいた『魔法鞄』の中に入れて所有権を破棄。
同等の権限を持っているであろう代表が、俺の代わりにその中身を出してくれる。
……湿っぽい別れも嫌なので、こういう感じでいいと言っておいたのだ。
精霊たちが魔法で創った揺り籠の中に入ったのを確認し、[精霊の書]を展開。
そのまま彼らを送還し、残されたのは再び俺だけ。
誰が見ていて面白いのか、ただひたすら生産を行うだけだったノゾムとしてのイベントは……こうして幕を下ろすのだった。
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