AllFreeOnline〜才能は凡人な最強プレイヤーが、VRMMOで偽善者を自称します

山田 武

偽善者と陣営イベント終篇 その14



 デバフ使いの強制付与、その理屈も攻略法も準備できた。
 なので、相手の自滅技を踏まえれば、すでに討伐可能だが……勘はまだだと告げる。

 とりあえず、限界突破スキルを解除してその他不要になったものも解除しておく。
 いつまでも使っていると、相応に身力を消耗してしまうからな。


「──“■”……」

「うーん、効かないなー。おっと、さすがに時間を掛け過ぎたかな?」


 俺とデバフ使いの周りに、参加者たちが集まりつつあった。
 デバフ使いの助力で、魔物を倒せていた連中だろう。

 その原因を見て、俺が妨害をしている……ぐらいの認識のはず。
 だがそれでも、デバフ使いを助けるに足る理由だろう。


「邪魔だね──ナース、お願い」

『おー! ──“空牢ジェイル”ー!』

「…………ぇ」


 これまであえて使わないでいた切り札。
 ナースに頼み、デバフ使いと俺を囲う。
 外部からの干渉はもう関係ない、問題解決まで虚無の檻が解かれることはないのだ。


「これで良しっと。さて、僕の予想が正しければ攻撃の直前でデバフを解除すれば、どうせ安全なんだけど……もう一つ、デバフをどうにかする方法があるよね?」

「!」

「うん、その通り。僕のデバフをいちいち解除するより、そっちのデバフを解いちゃった方が楽だよね」

「…………」


 二振りの妖刀[貔截ヒタチ]と[貅霓キュウゲツ]。
 持ち主に勝利と幸運をもたらす二振り妖刀の力を用いれば、デバフ使いから感じる違和感もどうにかできるかもしれない。


「──“天禄単角”、“避邪双角”」


 先に用いた『瑞獣』の名を冠したスキル、そして今回用いた『角』を冠したスキル。
 双方を同時に使うと、悪辣なほどに利便性が高まってしまう。


「──“■■”、“■■”、“■■”……」

「うん? ちょっと強くなったかな? でもね、これも少し遅かったかもしれないね」


 勝利を得る[貔截]。
 こちらは幸運を消費して勝利を得る能力を持つが、単角は発動中その場の誰よりも幸運になることができる。

 つまりどういうことか……維持コストさえ支払えば、無制限に“帝宝瑞獣”を発動し続けることができるというわけだ。

 デバフの付与を試しているようだが、今の俺にはそれも通らない。
 システム的な説明をするなら、貫通効果を運の消費で無効化しているという感じだ。

 しかし、その運は“天禄単角”の効果で一定値を確保できる。
 ……参加者たちもたくさんいるので、運のいい奴が俺に味方をしてくれているのだ。


「まあでも、今回使うのはこっち……いろいろ試したいんだ、付き合ってよ」

「!」

「“天禄単角”と“帝宝瑞獣”は、勝つためのコンボ。そして、“避邪双角”と“百解瑞獣”にも同じようにコンボがあるんだ」


 幸運をもたらす妖刀[貅霓]。
 こちらは邪悪を払うことで幸運を得る能力なのだが、双角は霊体の効果を撥ね退けることができる。

 発動中、霊体の効果を撥ね退けるようになる“避邪双角”。
 そして、邪悪を払うことで幸運に補正が入る“百解瑞獣”。

 これらを組み合わせると、強制的に撥ね退けた邪悪で運を増やすコンボが可能だ。
 そして、[貔截]と組み合わせると──身力さえ尽きなければ俺は最強となる。


「──たとえば、破邪とかね」

「!」

「……うーん、これは当たりかな? まあ、勝手に試させてもらうよ──“縮地”」

「──“■■■”、“■■■”……」


 高速で移動する俺に対し、これまで以上に呪い染みた力を秘めた球体を飛ばしてくる。
 今までと違い、おそらく受ければ致死状態になってしまうだろう。

 だが、破邪と聞いての反応と裏腹な激しい迎撃からあることを俺は感じた。
 だからこそ──『偽善』をすべきだ、そうスイッチを切り替える。


「限界突破でだいぶ消耗しちゃってるし、使える手は少ないね。精霊のみんなとナシェクにはこれ以上頼めないから、可能なのはスキルとレンタルした邪悪魔法ぐらいかな?」


 試しに使った死亡確定魔法。
 レンタル期間は過ぎておらず、まだ魔法を使うことはできる。

 その代わりに刀剣以外の武術スキルは使えないので、武器の交換はほぼ不可能。
 そのうえで、俺にできることを考え──高速化した思考が答えを導き出す。


「擬似魔法剣──“祝絶禍界アンチブレス”」

「!!」

「うん、今までで一番いい反応……ねぇ、貴方は誰?」


 本来、この魔法は周辺での加護の効果を封じるというもの。
 普通、そういったものを強く感じていない者がその意味に気づくことはない。

 しかしソレ・・は、そういった存在であるがゆえに気づいた。
 俺が使った魔法、それが自分ソレにとって害のあるものだと。


「──“■■■■”、“■■■■”……」

「無駄だよ、僕には届かない」


 今は“帝宝瑞獣”が発動中だ。
 勝利条件も明確になった以上、そこに至るまでの過程で俺を害すことはできない。

 逆に、俺の握り締めた[貅霓]はソレを殺し得る刃となったわけで……。
 大量に飛んでくる呪いの塊をその身に浴びて、しかし無傷のまま懐に潜り込む。


「じゃあね──『業魔一刀ゴウマイットウ』」

『────ッ!!』
「…………かはっ」


 破邪の力を武技モドキ経由で注ぎ込んで、“避邪双角”の効果を強化。
 斬撃がデバフ使いに通ると──体から黒いナニカが飛んでいった。


「やっぱり当たりだ。うん、普通なら逃がすところだけど──せっかくのサンプルを逃がすわけにはいかないよ」

『──!?』

「喰らえ──“魂喰の牙ソウルイート”」


 必死の抵抗も空しく、抗う間もなくソレは俺の『胃袋』に収まる。
 イベント産……ではないだろうし、細かい事情は──訊いて確かめるか。



コメント

コメントを書く

「SF」の人気作品

書籍化作品