AllFreeOnline〜才能は凡人な最強プレイヤーが、VRMMOで偽善者を自称します

山田 武

偽善者と陣営イベント終篇 その03



 すでにミシェルが魔王たちを倒し、大量に願いの産物──遺産を集めてくれていた。
 見た目は武器みたいな物から、目や手などの完全に剥ぎ取ったモノまでたくさんある。

 それらを細心の注意を払いながら、鑑定眼で視ていく。
 ……ここで失敗すると、精神汚染とかを仕掛けてくるからな。

 なお、それらの情報は隣で情報を纏めているリュシルが整理してくれる。
 なので俺は、ただ表示された情報を読んでいくだけでいい。


「目は支配の魔眼、元は硬直の魔眼だったものが強化されている。手は黄金の左手、触れた相手の黄金化を解除できる。ついでに言うと、黄金化には右手が必要らしい」

「……はい。そちらも探すよう、『助手』に伝えておきます」

「剣は人族の方だな、それも初期だから想いが聖気に変換される。盾は悪意付き、受けた攻撃を物理無視で返還する。ただし、使えば使うほど相手に対する憎しみが増す」

「……はい。そちらの盾はデュラハンに使わせることにしましょう」


 やはり初期の産物は性能がやや微妙な代わりに、デメリットが存在しない物が多い。 
 あったとしてもそれは、使うための真っ当な代償だ。

 悪意付きの代物の方は、高性能だが悪意に関する代償が必ずついている。
 こちらは使いづらさもあって、デュラハンたちに使わせることになった。

 いちおう全部のアイテムは複製し、いつでも創造できるようにしてはいる。
 それができる眷属も居るし、必要になれば悪意付きだろうが使う気だ。

 まあでも、そんな覚悟を決めずとも眷属たちが使いやすいようにしてくれるだろう。
 実際に加工するのは生産担当の俺かもしれないが、眷属のためならえんやこら……だ。


「──で、最後にその玉座だが。結構食わせた後みたいだな。座っている間の防御障壁、攻撃の反発と外界からの干渉を軽減……要は毒とかを撒いても効きづらい。あと、一方的にやる攻撃に補正が入る」


 一番最後に調べたのは、ミシェルが座っている玉座。
 一番禍々しかったのもあって、効果も他の品々より優れていた。

 まあ、ミシェルの侵攻を食い止めるほどの性能は無かったようだが、他の願いの産物の所持者に勝てる程度には、丈夫だったように思われる。

 外界からの干渉を軽減というのは、上手く考えられていた。
 ……おそらく、悪意がそういうことを思いつくからこその防御システムなんだろうな。


「そちらのデメリットは何でしょうか?」

「瘴気……というかほぼ邪気が玉座一帯を覆う。普通の奴なら、その時点で正常な思考はできなくなるな」

「?」


 だがしかし、座っているのはミシェル。
 聖気と邪気を同時に操ることができるからか、どちらにも高い適性と耐性があるのだ。

 そんなわけで、呪視眼に映る膨大な量の邪気の中でも、ミシェルは平然としている。
 ……まあ、していなかったら、速攻で壊されていただろうけども。


「──ただいま戻りました」

「あっ、マシュー……じゃなくて『助手』。それで、どうでした?」

「ご報告にあった右手ですが、確認はできませんでした。おそらく、島の攻略に持ち出されているものかと」

「分かりました。そちらに関しては、連絡だけして任せることにしましょう」


 玉座の間に戻ったリュシルの『助手』、マシューの背にはあからさまに袋が。
 ……背負わずとも、魔道具に仕舞っておけばいいだろうに。

 俺の疑問は顔に出ていたのか、マシューはすぐに俺の疑念に答えてくれた。


創造者クリエイターのお考えになっている通り、本来であれば『魔法袋マジックバック』に仕舞っておきたかったのですが……どうやら、遺骸の一部がまだ生きているようで、収納できなかったのです」

「ひっ!」

「なんともまあ、禍々しい……えっと、とりあえず──“消失ロスト”」


 マシューの出したそれは──触手。
 もう、どういった性能かは視ずとも分かったのだが、いちおうバックアップのために視て……やっぱりと感想を抱いて消し去る。

 触手の持ち主自身は、そこまでアレでは無かったかもしれないが……そういった用途にも使えてしまうものだった。

 無尽蔵に再生するし、どんな種族でも利用することができるし(意味深)。
 まったくもう、けしからん! うん、これは大切に使いますありがとうございます!


「こほんっ、じゃあとりあえずここで集められる物はもう集められたみたいだな。それでもたぶん、少しは残っているだろうが……どうしたい?」

「私は残る。向こうは……人も多いし」
「なら、私も残るわ。魔王様が心配するだろうし、要らないけどお目付け役ってところかしら?」

「一度、島の方に戻ってみようかと。人族の領域で回収された品も、調べてみたいです」
「では、開発者の御傍に侍りましょう」

「了解した。ついでだし、帰るついでに二人は俺が送っていこう。えっと……『勇魔』も『メイド』も、あんまり無茶はするなよ」

「うん、分かった」
「ええ、承知しました」


 了承も得られたので、リュシルとマシューと共に転移眼で島へ移動。
 その後、アンを手伝っていたナシェクを拾い、再び活動を再開するのだった。



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