AllFreeOnline〜才能は凡人な最強プレイヤーが、VRMMOで偽善者を自称します
偽善者と陣営イベント中篇 その02
B級迷宮 光輝なる天園
俺も地道に迷宮を攻略して、気づけばC級までランクを上げられていた。
なので入れるのはB級まで、当然そこに単独で挑んでいる。
選んだ場所はラスボス(仮)用の浮島同様に、宙に浮いている特殊なフィールド。
落ちたる強制的に入り口に帰される、というフィールド設定がされているらしい。
「[精霊の頁]──『エアル』」
『!』
「うん、それじゃあ行こうか」
『!!』
風属性のエアルを召喚して、堕ちた時に支えてもらえるように指示を送っておく。
向こうからも、了承の思念を受け取ったところで──別の頁を捲る。
「──『フラム』、『ラボル』、『アクス』と『アイア』、『ソムス』。みんなもね」
『『『『!!』』』』
さまざまな迷宮を巡り、各属性の精霊たちと契約を果たしていた。
そして、彼らを同時に召喚して大半の問題に対応する──それが今のスタイルだ。
維持費やら、そもそも同時召喚が難しいなどの問題は、『夢現の書』が解決している。
俺と眷属の知恵が(1:9の割合で)注がれた、最高の魔本みたいな物だからな。
「さて、ここには光の精霊がいっぱい居るって聞いたからね。新しい仲間が見つけられればいいんだけど……」
『!』
「先に魔物に遭遇しちゃったか。よーし、それじゃあ力を貸してね」
『!!』
風による索敵をエアルが覚えてくれて、敵への先制攻撃も掛けやすくなっている。
Bランクともなれば、迷宮も相応に難易度が高いのだが……なんとかなるだろう。
「アレ、かな……『神聖輝士』。聖属性もあるみたいだね」
『『!』』
「うん、じゃあ二人にお願いしようかな」
『『!!』』
覗き見たのは、光のエネルギー自体が騎士の姿を模している存在。
それを精霊に近しい存在あのだが、ここでは魔物と同じ扱いなのだろうか。
幸いにも精霊たちはやる気満々なので、その自主性を尊重して頼んでみる。
そうなると、俺は魔力の供給役でしか無いのだが……ある意味、それを望んでいるし。
魔力を送る先は水と氷の精霊。
どうやら特殊な双子のような存在で、互いにその性質を分け合えるらしい。
水と氷、液体と固体。
それらを自在に切り替えられる二人には、これまでも何度も助けられている。
『!』『!』
彼らは“水蒸気沫”という魔法に似た現象で、周囲に泡状の水蒸気をばら撒き始める。
すぐに反応し、警戒する騎士なのだが、損魔法自体に攻撃性能は無い。
──がすぐにそれらが凍てつき、動きを奪い始めたところで状況は変化する。
騎士に纏わりつく薄氷、その表面はとても滑らかな鏡のような性質を帯びていた。
その内部に光は閉じ込められ、身動きが取れなくなる──拘束したも同然だ。
「ありがとう、二人とも。じゃあ、トドメは僕が。魔本開読──“闇槍”」
魔本を開くと、内部の術式が魔力を吸って起動──闇色の槍が現れ、騎士を刺し貫く。
無抵抗のままに弱点の闇属性の攻撃を受けた結果、残されたのは魔石だけ。
「やったよ! ここでもちゃんと、戦うことができるんだ!」
『『!!』』『『『『!』』』』
「そうだったね。アクスとアイアだけじゃなくて、みんなに出番が無いとね」
ドロップアイテムを回収して、再び迷宮の中を歩き回る。
ボスを見つけたり、契約してくれそうな光精霊を探さないといけないからな。
◆ □ ◆ □ ◆
向けた『夢現の書』に対して、光精霊はドキドキワクワクといった思念を送ってくる。
その期待に応えるべく、俺は新たな契約聖霊に名を与えた。
「──よし、君の名前は『ヘリス』だ!」
『♪』
そうして、どうにか光の精霊と契約を交わすことに成功する。
だが、それを行う場所は……まさかの階層主のフロアだった。
どこだどこだと探して、大量に光の精霊が居る場所を見つけたと思いきや、そこがもうボス部屋だったと知ったときは、なんというか脱力感に支配されかけたものだ。
そこで戦うにしても、精霊たちに嫌われない戦いでなければならない。
むしろ、アピールの場でもあると自分を奮起させて、どうにかボスを倒した。
この際、契約した精霊たちの力を全面的に借りる、かつ残虐じゃないやり方を選んだ。
楽しそう、混ざりたいという雰囲気を醸し出し──契約にこぎつけた。
「残すは闇精霊だけかな? うん、無属性はナースがいろいろ言いそうだし……そこだけは、自分でなんとかしよう」
精霊たちは俺の魔力を使いながら経験を積み、いずれは成長していくことだろう。
それを契約した数で等分するため、複数体の精霊契約は不人気となってしまっていた。
しかし、俺には『夢現の書』があり、召喚していてもしていなくとも、育てられる。
……そういう便利な空間を、予め準備しておいたのだ。
なので目指せ大器晩成型、最後に強くなっていればそれで良し。
さすがにナースと同等は無理にしても、大精霊と呼ばれるぐらいまでには育てたい。
「うーん、今日はこの辺にしておこうかな。みんな、宿に帰ろうか!」
『『『『『『『!!』』』』』』』
精霊たちを引き連れて、俺はこの迷宮を後にする。
途中から、ランク上げの条件も変わっている……またB級迷宮を攻略しないと。
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