AllFreeOnline〜才能は凡人な最強プレイヤーが、VRMMOで偽善者を自称します
偽善者と対立予告 中篇
始まりの街 クランハウス ユニーク
『──ゆうしゃとまおう。こんかいのイベントにおいて、プレイヤーのかたがたにはこのどちらかにしょぞくしてもらい、それぞれのやくわりをえんじてもらいます』
『ゆうしゃのやくわりはかいほう。ことわりにおいて、かれらはひとぞくのきぼうとなりえるそんざいです。それをえんじてもらい、ひとぞくたちをすくっていくのです』
『まおうのやくわりはひご。ひとぞくからいみきらわれるまものやまぞくをすくい、すくうことであんねいをもたらします。けっしてじゃあくではない、おうとしてのふるまいはひとつではないのですから』
『──いじょうがこんかいのイベントのおおまかながいようとなります。どうですか、これでおにいさまのおやくにたつことができましたか?』
目的はオー嬢さんから聞いていた、イベントに関する情報の収集。
それを求めて向かったのは、運営神の使徒的存在、GMたちの活動空間だった。
普段のモノよりも、なんだか企みがありそうな内容だ。
運営ではなく、運営神が大きく関わっているのでは? と思っての行動である。
そんな俺を迎え入れてくれたのが、濡羽色の髪を持つ小さな少女。
GM06ことリウ、六人のGM姉妹の末っ子的存在だ。
なお、他のGM姉妹たち同様彼女も忙しいようで、これを教えてくれた後にすぐ謝罪をしてどこかへ向かっていった……姉たちのサポートを頑張ってもらいたい。
「──とまあ、そんなわけでこっちに来たわけだ。さぁ、情報をくれ」
「…………初耳だな、それ」
「マジかぁ」
先行的に陣営を選べるのであれば、優秀な奴らが先に選べるのが当然。
だからこそ、そんな連中の溜まり場であるここに来たのだが……知らないようで。
毎度お馴染み、クラン『ユニーク』の代表者ことナックルでも把握していない情報。
つまり、『選ばれし者』やそれに準ずる者たちでないと、選べてはいないわけだ。
「次のイベントがそういう内容なのは理解できた。勇者と魔王、まあ響き的には勇者の方がいい気もするが……魔王の方の宣伝文句が気になるな」
「王としての振る舞い、とかか? 人でも悪政の王とか普通にいるんだし、魔王だって当たり外れがあってもおかしくないよな」
「魔王を演じる奴が、どういう風に振る舞うかも問題になりそうなんだよなぁ……最悪、強制的に消される、とかさ」
「あー、ありそうだなぁ。自由民、別に弱いわけじゃないもんな」
創作物におけるNPCとプレイヤーの間には、かなりの差が設けられている。
がしかし、AFOのシステムとしてはそれぞれに有利不得意が設定されているのだ。
死に戻りでやり直しが必ず効く祈念者は、さまざまなことに制限が掛かっている。
そういった制限が少ない自由民は、代わりに適性という異なる制限が厳しい。
今は運営神しか活動状態じゃないから違うが、昔は神が自由民に役割を与えていたこともあったので、過去の存在であればかなり強かったりする。
かつてのイベント、攻城戦イベントでも過去の魔王が出てきた……そうして、運営神が取り込んだ過去の存在を、イベント内に引っ張り出してくるかもしれない。
運営神が意図して集めた存在、それらが弱いわけが無いだろう。
さすがにニィナで懲りただろうから、俺を殺すレベルは無い……と思いたいが。
「それに、だ。どうして、勇者と魔王の二つなんだ?」
「…………定番だからじゃないか?」
「たしかにそれもあるだろう。だが、実際にできることはその二つに限られるわけじゃないはずだ。生産職が魔王になれるか? 商人が勇者っぽいか? そういうことじゃない、本当の意図があるんだろう」
言われてたしかに、と納得する。
ただ勇者らしい、魔王らしいと求めているのであれば、『選ばれし者』を代表者にして他の祈念者は仲間役にでもすればいい。
だがそうではなく、プレイヤー全員が仮にとはいえそれらの役割を演じる予定だ。
まあ、祈念者の数もかなり多いので、代表者が一人じゃ無理だからかもしれないが。
「あくまでも陣営なんだろうな。勇者と魔王のどちらかの陣営で、一定の地位に成り上がる。そうすると、次の目的に進めることができる……とまあ、あくまでも分かっている情報だとこれが限界だな」
「さすがナックルだ。うん、俺のお頭だけだと分からないことだったよ」
「お前さんの眷属さんなら、余裕で閃くようなことだろ」
「あー、だろうけどな。今回はまだ相談していなくてさ。自分の力……とは言わずとも、こういうことには祈念者として、ちゃんと情報を集めてみようってな」
……えっ、ただの祈念者が直接GMに質問しに行くなって?
いやいや、[GMコール]もあるんだし、ギリギリセーフってことで。
イベント自体に眷属が参加するかどうか、それはまだ不明だ。
勇者と魔王、どちらの方がいいか……彼女たちは決められるか?
なんてことを思っていると、ナックルがさらに予想外の発言を。
「──そして、陣営は本当に二つか?」
「……詳しく」
「単純な話だ。何でもありなこのゲームで、勇者と魔王の二つだけ……ってのは、少し気になってな。話している内に思ったが、陣営としての二つの中でも、さらにやれることがあるんじゃないか?」
「ヤバいな、情報量が多すぎる。眷属に委ねたい……」
元も子も無いので、それは止めるけど。
しかし、攻城戦よりさらに前、リア充撲滅イベントで俺がやらかしたみたいに、別に仲間の陣営と敵対してもいいんだよな。
もしかしたら、前よりも面白いシステムとして何かが組み込まれているかもしれない。
GMが忙しいのも……なんて、考えてみるとなかなか面白いだろう。
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