AllFreeOnline〜才能は凡人な最強プレイヤーが、VRMMOで偽善者を自称します

山田 武

偽善者と橙色の謀略 その20



 後日談、というほどでも無いがアレからのことを語ろう。
 シュリュが花たちを滅ぼした後、魔族たちは無事に核から解放されている。

 いちおう魔術や『装華』による検査は行われるが、俺が視た限りは大丈夫だった。
 俺が知覚できない問題があるかもしれないので、しっかりと調べてもらいたい。

 シュリュは遺跡(笑)で語っていた通り、魔族たちを鍛え上げている。
 ……他の華都も、眷属たちに鍛えてもらわないとバランスが崩れるかもな。

 そんな忙しいシュリュに対して、俺は相も変わらず自由なまま。
 今日も今日とてゴーのマントを羽織り、魔術で身を隠しながら街を散策している。


「さて……どうだ、ゴー。満足できたか?」

《うむ。同朋のために揮う力は、格段に心躍るものであった!》

「もっと簡単に言うと?」

《われ、超楽しかった!》


 いつもの厨二的台詞を止め、とても嬉しそうに答えてくれたゴー。
 俺もゴーの力を、無効化以外で借りるのはとても稀だったので新鮮な体験だった。

 こう、王としての振る舞うのであれば必要不可欠なんだけども……。
 やっぱり前線に出て、自分で戦う方が俺には向いているんだよな。

 そもそもとして、そういったことができないからこそ生み出したのが武具っ娘たちだ。
 当時は人化する予定は無かったが、それでもバックアップしてもらう予定ではあった。

 できないことだらけの俺なので、やってもらうのであればそのジャンルは多岐に渡る。
 もちろん、自分でやれるように努力はするつもりだ…………ああ、そのつもりだ。


「ゴーも満足してくれたなら、魔族の華都でやるべきことは終了だな。そうなると、後のことはシュリュにお任せになっちゃうが……人任せ過ぎるか?」

《それもあるが……同朋は、始まりと終わりばかりに手を出して、その間を他者に委ねているな。それではなんというか、われ的にはその──ダメ男に見えてしまうぞ》

「ぐはっ……! わ、分かっていたけど。あとのことを眷属に任せてる俺、実はしなくてもクズじゃね? とかいつも思考のどこかで気づいちゃってるけど……改めて言われるとクリティカルダメージが入るなぁ」

《ど、同朋!?》


 地に這いつくばる俺に、ゴーが悲鳴染みた声を(念話で)上げる。
 美味しい所だけ貰っているのだから、ヒモとかクズとか言われても仕方ないレベルだ。

 うん、実際問題クズなんだよな。
 こればかりはどれだけ純粋な眷属たちが庇おうと、分かっている眷属たちに突きつけられそうなので否定はしないさ。

 なんというか、毎度のことだが俺の反省は何かしらの出来事を終えるたびに行われる。
 その都度反省しているのに、全然後悔していないのは……まあ、自業自得なのか。

 力の抜けた膝に活を入れ、腕を動かそうとグッと意識する。
 傍から見れば不審者極まりない動きで、どうにか立ち上がりことに成功した。


《同朋!!》

「わ、悪いな、ゴー。どっからどう見ても俺はダメ人間ですって、再確認しただけだ」

《……全然大丈夫じゃないだろう。われ、もしや同朋に言ってはいけない禁断の言葉を紡いでしまったのか?》

「滅びの呪文でも、守護霊召喚の呪文でも無いから平気だ。むしろ、それより先に言ってくれた満足だって言葉の方が、俺の心には響いたからさ。もう大丈夫、超平気だ!」


 ゴーの前で弱い自分を見せ続けるのもアレなので、空元気──を{感情}の力で強引に本当に元気溌剌な状態にする。

 内心、ごちゃごちゃな想いもあったが、それらも含めてすぐにリセットされた。
 ……とりあえず後回し、帰った後で吐き出すとしよう。


《そ、そうか……うむ、安心したぞ我が同朋よ! ふっ、我をここまで追い込むとは……なかなかにやるではないか》

「それはこちらの台詞だ。なればこそ、俺は汝を認めている……なんてな」

《おおっ! なんというか、凄くそれっぽいぞ同朋! もっと、もっと語り合おうではないか同朋よ!》

「ふっ、俺たちの冒険はまだまだこれから、といったところか……いいだろう、汝の望むままに!」


 うん、ちょっと副作用的にノリがおかしくなってはいるが。
 とにかく、今日も俺は元気にやっているので問題ありません、まる。


  ◆   □   ◆   □   ◆

 ???

 深く、深く、大地の底。
 地面を食らい、マグマを喰らい、星をもクらい根付いたソレは気づく。

 繋がりが断たれた、伸ばしていた物が根こそぎ消し滅ぼされたと。
 いっさいの抵抗なく、こちらに情報を残すこともできずに一瞬で。

 また、同時に知った。
 すぐにその原因を探るため、星へのアクセス権を利用……しようとするが、なぜかそれもできない。

 理由は単純、アクセスのために用いていた道具かみいなくなっていた。
 丁寧に細工を施し、アクセスするまで気づくことができないように欺瞞までして。


 ────。


 故にソレは新たな行動を始める。
 膨大な時間の中で、忌々しい華都が集う周期は把握していた。

 掌握した星の理は、干渉できる権限の保持者は一人ではない。
 かつてそうしたように、今回もまた同じことを繰り返すだけのこと。


 ──認証開始……………………成功。
 ──エラーが発生しま………………。
 ──起動を確認、実行を開始します。

 ──『聖■龍』の運用を実行します。


 今はまだ、そのときではない。
 だが、そう遠くない日にソレは動く。
 華都が集う日、何が起きるのか……それは神すらも知らぬ未来だ。



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