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山田 武

偽善者と橙色の謀略 その14



 魔王を剣にしてのテストは、それなりに良好だった。
 割と自由性が高く、ある意味解釈がしやすい能力なのだ。

 空気を閉じ込めれば射程が延び、地面を閉じ込めれば瞬間的に落とし穴が作れる。
 他にも剣身へ当てれば、どんな攻撃も擬似的に無効化可能だった。

 そんな便利な[橙牢]だからこそ、魔王を目指した者もいるのかな……なんて思ったからこそ、気になったことが一つ。


「なあ、魔王。気になることがあるんだが」

『なんだ? 言っておくが、貴様専用の武器になるつもりは無いぞ』

「もう複製は済んでるから要らん。で、これまでの魔王って……『魔王[橙牢]』を使えるようになったとき、それまでに使っていた自分自身の『装華』ってどうなるんだ?」

『……いろいろと苦言を申し立てたいが、先に答えよう。結論から言えば使える。元より継承される前提だった『魔王』だからこそ、新たな継承者の能力を『魔王』の『装華』として加えていく仕様のようだ』


 つまりアレだ、次代に行けば行くほど強くなるはずだったのが『魔王』だと。
 なお、さらに聞くと全能力を引き継ぐわけではなく、特徴的な部分だけらしい。


『封じていたこれまでの魔王を、一時的に使役状態で開放していたのも、そうした能力に恵まれた魔王の影響だ』

「……凄い悪役とか支配者みたいな感じのする能力だな」

『実際にそのようなものだ。当代の魔王が異例であっただけで、魔王を目指す者など大抵が支配欲に溺れていた者だからな。悪いとは欠片も思わんが、当代だけはなかなかに面白い魔王だと思ったものだ』

「はいはい、そりゃあよぉござんしたね。しかしまあ、なるほど……部分的な継承なら無駄なリソースを使わんで済む、かぁ。容量の方をどうにかするんじゃなくて、そっちをどうにかするのもアリだな


 俺には最高峰のリソース量を有する素材、神鉄鉱オリハルコンがあったからな。
 お陰で節約という言葉を忘れて、望むままに付けたい性能をアイテムに付与していた。

 しかし、それらができないモノもあるのだから、ちゃんと考え直した方が良い。
 すでに複製済みの『魔王[橙牢]』から、参考になるデータが取れればいいけど。


  ◆   □   ◆   □   ◆


 剣に関しては宝珠を外し、代わりに危険なときに自動装着されるシステムを組み込んだ後、魔王へシュリュ経由で届けてもらう。

 なんかこう、本当に必要になったら力を発揮するというのが定番だと思ったし。
 そういうピンチを共に乗り越えれば、ある程度関係も和解できるという打算もある。

 受肉云々に関しては……まあ、当代の魔王と和解が済んでからだな。
 後腐れなくなってから、俺もその関係構築に対するプレゼントを……ってことで。


「こうなると、もうやることが無いな……そろそろ終わりでいいかな」

《うむ、同朋が活躍することも特段無かったからな!》

「……あの、ゴーさん。もしかして、怒ってますか?」

《いいや別に! われは別に! 出番がまったく無かったことなど! これっっっっぽちも気にしていないが!?》


 あー……うん、ゴーの出番は無かった。
 なんせ攻撃の無効化やら断罪やら、特定のシチュエーションやらイキりプレイでもしない限り、使う要素が無かったからである。

 今回は従者を演じていた以上、そういった事案になることは少ない。
 むしろ、支援系の武具っ娘でもないと出番は無いだろう。


「……じゃあ、最後にやってみるか?」

《…………》

「ゴーが不満げなのは俺も嫌だしさ。大義名分も欲しいし……シュリュと一度、地上の遺跡に戻ってみるとかそんな感じで」

《…………うむ》


 それからすぐに再度連絡を済ませる。
 幸い、ちょうど剣を届けてくれていたところだったので、流れでゴーに語ったことをそのまま説明して許可を貰ってきてくれた。

 護衛が付きそうだったが、そこは実力云々でごり押し。
 どうにか二人(+一武具っ娘)での地上行きが騒動無しで通った。


《ふっふっふ、この覚醒した我の新たなる力に恐れおののくが良い》

「キャー、チョーコワーイ」

《ふははははは! そうだろうそうだろう、刮目して見るのだな!》


 ゴーの楽しそうな声に俺もほっこり。
 しかし、問題が一つ……断罪系の特殊攻撃以外、ゴーこと『虚絶の円套』には攻撃技が存在しないのだ。

 他の武具っ娘がそれぞれ特定の分野で特化しているように、ゴーは裁定特化型。
 上位者として、下の存在に正しき裁定を下す……俺にできないことを求めた存在。

 その能力に必要とされるリソースは非常に多く、だからこそそれに特化している。
 もちろん、普通にゴー自身が受肉体で攻撃するのは可能なんだけどな。


「──其方、ここに居たのか」

「シュリュ様……何かありましたか?」

「理解が速くて助かる。どうやら、すぐにでも行く必要ができたようだな」


 そんなこんなでシュリュを待っていると、突然彼女がやってくる──ただし、背後に多くの兵士たちを連れて。

 いったいどうしたのか、不思議に思っていると念話での意思の伝達が行われてきた。


《すまぬな、念話をする暇もなかった》

《おいおい、そりゃあかなりの一大事だな。いや、俺への連絡よりも他の眷属たちに伝えたかったんだろう? それはいいから、何があったか教えてくれ》


 隠し事をされるのは好まないが、理由があるならそこまで固執しない。
 シュリュなりに、問題解決に眷属の力が必要だと思うなら……それは受け入れる。

 だからこそ、いったい何があったのかと余計に気になる。
 地上の話だとは思うんだが……さて、どういった案件なんだか。



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