AllFreeOnline〜才能は凡人な最強プレイヤーが、VRMMOで偽善者を自称します

山田 武

偽善者と橙色の謀略 その04



 そんなこんなで、謁見の間で行うことを強要された御前試合(仮)。
 俺と四天王『ゴウフ』は、『魔王』が構築した結界の中に隔離された。


『安心しろ。結界は内部から破壊されず、空間の拡張も行う。思いっきり暴れるが良い』

『…………』


 そう語りかけられたシュリュなのだが、あくまでもそれは抑制されたもの。
 俺の従者プレイを進めてくれる、粋な計らいなのだが……うん、溜まってますな。


「おい、速く準備しろよ──『開花』!」

「は、はい! ──『開花』!」


 俺も俺で、『ゴウフ』に急かされながら戦闘準備を行う。
 なるほどたしかに、なんだかんだ言いつつもやらせてはくれるんだよな。

 この世界特有のシステムである『装華』を起動し、その身に纏う。
 名前は『造花[守式]』、人造の『装華』である。

 それらが着装されている最中、ゴーが念話である話をしてきた。


《同朋は実力だけで配下を決めるか? 四天王と呼ばれるのだから、それ以外の要素を求めてもなんらおかしくないだろう》

「……ああ、そういうことか」


 創作物では四天王が問題児、なんてネタもよくあるが……俺ならそんな面倒な奴、好き好んで雇用しないだろう。

 つまり、『ゴウフ』は──


「上手い落ちどころって……どうなる?」

《ふっ、我に任せるがよい。これまで同朋の創作物から学びに学んだ叡智、活かす時がついに来た!》

「う、うん……任せるよ」


 高速思考内で行われたやり取りも、いずれは終わらなければならない。
 切り替えるように視界を前に向けると、すでに『装華』を行った『ゴウフ』の姿が。

 ……あっ、斧だし『ゴウ斧』なんだな。


「ずいぶんとまあ、地味な格好じゃねぇかおい。身の程もそれぐらい、弁えてりゃあこんな目に遭わなかったのにな!」

「……はい」

「おう? 何か言いたそうじゃねぇか」

「……ぜ、全力でやらせていただきます」

「…………ほぅ」


 俺の意図が伝わったのか、ニヤリ……というかニマニマといった表情になる。
 普通逆じゃない? とも思うが、そこは気にされないまま話は続いていく。


「ならばこちらも、全力で潰すぞ」

「俺もシュリュ様の従者として、恥じないんだって証明したいですから」

「そりゃあいい……俺も、あの日の・・・・『魔王』様に恥じねぇようにやってるからよ」

《ふっ、読めたな、この展開》


 何かに気づいたらしいゴー。
 俺も何となくだが、理解できた……前の世界といい、一つはハズレがあるのかな?


「──では、始めるがよい!」


 外から聞こえてきた『魔王』の声を受け、俺と『ゴウ斧』は動き出す。
 相手が使うのは巨大な、伐採にも使われないような戦用の両刃の代物。

 解析したところ、『ゴウ』は『毅』……意思が強いとかそういう字だった。
 他にはどっしりとかそんな意味があるし、ある意味斧使いにはピッタリだ。

 そんな『毅斧』を思いっきり振り回し、地面に打ち付ける。
 するとその衝撃が波動となり、その勢いのまま襲ってきた。


「──“魔壁マヘキ”、“飛浮ヒフ”!」

「はっ、やるじゃねぇか!」


 壁を斜めに展開した後、自分を軽くして跳躍する。
 壁を蹴り上げてさらに飛距離を確保、斧の衝撃を飛び越え──そのまま攻撃へ向かう。


「──“魔矢マヤ”、“魔球マキュウ”、“鳥ノ翼バードウィング”!」

「飛びやがったな──ふんっ!」


 上空から放った魔力の矢、そして球はあっさりと斧に弾かれた。
 そもそも、今の俺はどちらかと言えば支援担当……強い魔術は使えないんだよな。

 纏っている[守式]も、防御に性能が傾倒しているため攻撃補助はさして無い。
 つまり、この戦いに勝つことは絶対にありえないのだが……どうしようか。


「速めに確認するかな──“念絡ネンラク”」
《──繋がりました》

「はっ、上等だ!」
《……なるほど、従事とはこのようなこともできるのだな。どうやら、こちらの真意は理解してもらえたようで》


 先ほどまでの言動とは打って変わり、念話で繋いだ彼の声は冷静だった。
 ゴーの読み通り、彼には意図があってあそこまでわざとらしい発言をしていたのか。

 実際には適当なやり取りをしながら、戦闘は継続している。
 外部では、シュリュと『魔王』が話し合っていて……嫌な予感しかしない。


《言葉でしか今は伝えられないが、まずは謝罪を。ああでもしなければ、君たちはすぐに彼の『魔王』の餌食となっていた》

《いったい、あの『魔王』は……この国はどうなっているんですか?》

《……一言では言い表せないが、先に伝えておかなければならないことは──『魔王』は呪いそのものだということだ》

《呪い?》


 ハズレなのは分かっていたが、呪いと表するほどのものなのか。
 前の世界──赤色の世界のハズレは、死人がいつまでも居座っていた『赤王』だが。


《かつての『魔王』様は、あのような振る舞いはしていなかった。実力主義を排斥し、弱者が過ごしやすい国を望み、『魔王』になることを目指し……ああなった》

《いったい、何があったんですか?》

《何も。力を示し、『魔王』となる資格を得た結果がああなのだ。つまり、『魔王』という力そのものが、彼にああなることを強要したのだ》


 あー、うん、そういうパターンか。
 ある意味また同じだな……死者ってヤツはどこの世界でも、生者の足を引っ張るのがお好きなようで。



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