AllFreeOnline〜才能は凡人な最強プレイヤーが、VRMMOで偽善者を自称します
偽善者と奉仕活動 前篇
──目覚めると、目の前には美少女が。
なんて創作物の定番みたいな流れが、ここ最近続いている。
それもこれもすべては、俺が咎人になった影響だ。
「……知らない天井だ」
「知らない天井でも、知っている美少女じゃないの?」
「そうだな、俺はこの初めて見る天井を美少女アイリスの天井と名付けよう」
「…………急に何言ってるの? いきなりで引くよ」
ボケをあっさりと踏み躙られながら、俺の今日は始まった。
ペロリと口の周りを舐める仕草をした後、アイリスは跨っていた俺の体から下りる。
「ほら、もう朝だよ。みんな、メルスが来るのを待ってるんだから」
「……もう三日目なんだが、まだやるの? 絶対二、三人は飽き始めてるだろ」
「さて、それはどうでしょう? それよりほら、早く──んっ!」
「……分かりましたよ」
両手を伸ばす彼女に頭を近づけ、首に抱き着かせた。
俺はベッドから起き上がり、持ち上げたアイリスと共に部屋を出る。
「ふっふーん、朝からお姫様抱っこからの送迎サービス。これはもう、好感度が爆上がりのイベントだよね。スチルあるかな?」
「……まあ、男キャラの顔が極力見えないようにして、アイリスの可愛い顔だけなら需要もあるんじゃないか? 俺だったら、俺の顔が出ている時点でスキップする」
「もう、自分を卑下しすぎだよ。あっ、もしかして──またロリロリお説教タイムが欲しいの?」
「…………すんません、マジ勘弁してつかーさい。あれだけは、あれだけはマジで心にクるんです」
純粋な少女たちが、俺をお説教して励ますなんともファンタジーな時間。
すでに二回受けているのだが、復活に相当な時間が掛かるほどダメージを受けるのだ。
なんとしても今日は回避したい。
とりあえずアイリスを買収するため、あの手この手で交渉をする所存だ。
◆ □ ◆ □ ◆
「──ごちそうさまでした」
『ごちそうさまでした!』
食事を終え、眷属たちは各々すべきことややりたいことを行うべく食堂を出ていく。
普段なら皿洗いに混ざっている俺だが、贖罪中はその参加が禁じられている。
代わりに、期間中は必ず眷属の誰かと共に居ることを義務付けられていた。
アイリスが朝から部屋に居たのは、起こしに来てくれたからだ。
……別に、モーニングサービス(R18)などは無いからな。
「……メルス」
「今日の最初はギーか。よし、じゃあ何をしようか?」
「…………どうしよう」
順番は俺の裁判後、くじ引きで決めていたのだが……何をしようかまだ決めていなかったようだ。
まあ初日、二日目といろんなことをやってきたわけだし、もしかしたら当初の予定とネタ被りがあったのかもしれない。
こういうときは、男の側から提案するのが甲斐性なのだろうか?
うんうんと悩むギーを救うべく、俺もどうしようかとうんうんと悩み始める。
「…………。そうだ、アレをやろう」
「あれ?」
「まあ、細かい話は後回しだ。とりあえず、出かけるぞ」
「ラジャー」
伸ばされた手を絡ませ、共に進んでいく。
見た目は幼女(実年齢は赤子)だし、歩幅に注意しながら目的の部屋へ向かう。
「ここだ。交代の時間まで、ここでゆっくりしていこう」
「……映写室?」
「そうだ。祈念者の自主製作で、映画がそれなりに作られたらしくてな。ナックル経由で仕入れたんだが、ついでだし見てみよう」
何でも、映画監督をしている祈念者が、こちらの方が時間を掛けずに撮影できると始めたらしい。
演者も、演技スキルとか[ログ]でカンペが見れるといったこともあり、比較的スムーズに何本かの映画が作られた。
とはいえ、命のやり取りも多いこちら側で撮影を行うにはリスクも大きい。
そのため、護衛や派手なアクション担当として『ユニーク』が依頼を受けたんだとか。
その伝手で得た映像宝珠という魔道具を、俺も複製して拝借した。
中身を解析して、巨大な投影装置で観れるようにしたのが──この映写室である。
「バトル物とコメディ物、あとSF物とラブロマンスが──」
「ラブロマンスで」
「お、おう……分かった。準備するから、座席で少し待つぞ。ポップコーンとかも並べてある、欲しい物があったら言ってくれ」
部屋の扉を開けると、そこにはもう映画館が広がっていた。
ギーも初めて見る光景に、心なしか目が輝いている。
サンプルとして展示してある食べ物や飲み物から、好きな物を選んでもらってからさらに移動。
百席はノリで作ってしまった部屋の中で、真ん中辺りの席を選んで座る。
あとは予め向かわせていた人形に指示をして、映像装置の投影を行わせるだけだ。
◆ □ ◆ □ ◆
「……まあ、良かったのか?」
「…………」
映画というか映像はアニメかバラエティー派な俺なので、気の利いた感想などは特に思い浮かばない。
ただ、映画の内容がなんともありふれた古典的なものだったという認識が残っている。
まあ、まだ試作段階だったので、折り合いなどが付いていなかったのだろう。
「ギーはどう思った?」
「演技は良かった。けど、アクションがチグハグ。全然慣れてない」
「まあ、アクション俳優じゃなかったんだろうな、演者が。一定のレベルにレベリングまで上げたとしても、体が馴染んでなかったのかもしれない。そういう所も含めて、今後に期待だな」
「うん、次もいっしょに観る」
果たして、ちゃんと次が撮られるのかどうか……こちらでなら可能な限り投資できるんだけど、現実じゃただの学生だしな。
そういうところはナックルに任せて、俺は眷属たちへの奉仕活動に従事しよう。
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